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稚拙な文章ではありますが、書き続ける所存です。
よろしくお願いします
間を開けました
少しは見やすくなったかと思います
時は来た。
今日のお昼ごろにVR機とゲームソフトが届く手はずになっている。あの少し黒いお話から三日後のことである。
時刻は午前十一時が過ぎようとしている。おそらくはもう私の病室に運び込まれてセッティングされているはずだ。それならばこの苦しいリハビリも苦にはならない。驚異の集中力と精神力でリハビリを終えると、病室の前で香子さんが待っていた。
「お疲れ様、ハルちゃん。もうセッティングしてあるわよ」
「香子さん、本当ですか! いやぁ~楽しみだ」
「はぁ、もうほどほどにするのよ。あなたなら一日中インしっぱなしなんてこともありそうだし」
「い、いやそれはどうかと。たぶん無いですよそんな事は……」
「どうだか、信用ならないわね」
そんなことを話しながら病室の扉を開け中を見るとそこには白く光る大きなカプセル型のVR機が。それは日本が開発し最先端を行く「オモイカネ」と呼ばれるVR機が鎮座していた。
「じゃあ、早速生体データを入力しましょうか」
香子さんに促されオモイカネに入り生体データを入力することになった。体中を赤いレーザーが駆け巡り一分もしないうちにカバーが開く。本来なら病院で健康診断をしなければならないのだがここは病院で、毎日のようにチェックされている。そのためにあっという間であった。
正式なサービス開始は午後六時からだ。なおキャラクターデザインは三時間前の午後三時から決めることができるらしい。それまでの三時間何をしようかと考えながらご飯を食べていると、香子さんが戻ってきた。
「ハルちゃん、ご飯中にごめんね。ちょっといいかしら」
「なんですか、なにかありましたか」
「いやねぇ、私の娘もブレイブソウルをやるのよ。もしよかったらすこしでもいいから気に掛けてもらえないかしら」
「えっと、美空ちゃんでしたっけ。それは全然構わないのですが、わかりますかねぇ。会ったこともないですし」
「それは大丈夫よ、スクリーンショットが携帯に送れるからね」
「そうなんですか、だったら心配ないですね。分かりました、とりあえず明日持ってきてください」
「ええ分かったわ、ありがとうね、じゃあお願い」
そういうと香子さんは急いで戻ってしまった。あの人はあの人でなかなかに忙しい人なのだ。きっと娘さんの美空ちゃんも寂しいだろうが、これからはブレソがある。寂しくないだろう。そして母親があんなに美人なのだ、美空ちゃんもさぞかし可愛かろうて。うん。ご飯がすすむ。
そんなこんなで午後三時。やはり待ち時間は情報収集に徹していたが目新しい情報はないだろうと思っていたのだが衝撃的な事実が公表されていた。加速装置はなんと一日で三日分を経験できるというのだ。現実世界では六時間がゲーム世界では一日二十四時間となっている。合計で十八時間しかないのは午前零時から午前六時までメンテナンスとなっているからだ。これはハマりすぎを防ぐためだ。
なぜこれが衝撃的かというと、世界初のなのだ。やはり日本の技術者たちは分かっている。これがないと始まらないだろう、VRMMOは。掲示板上も加速しまくっている。まあ、この加速装置のせいで発売時期が遅れに遅れたらしい。これがなければ三年は早く発売できていただろうとのこと。今はそんなことはどうでもいい。というよりも三年遅れていなければこうしてサービス開始と同時にプレイ出来なかっただろう。まさしく怪我の功名というやつだろう。世間様にバレたら大変だけどね。
「オモイカネ起動、ブレイブソウル」
オモイカネを起動し、ソフト名を言うことでメニュー画面をすっ飛ばし直接接続できる。暗転したと思ったら、肌に陽の光があたる感触がする。目を開けるとそこは見渡す限りに広がる大草原。心地よい風が頬を撫でる。
空は青く澄みまた、入道雲のような巨大な白い雲が。風に草や土の匂いを感じ、大地の感触を足の裏で堪能し。見るもの感じたことすべてが現実世界と何ら遜色のないこの世界にいること、これからもうひとつの人生を送ることができると考えるだけで、私はこの世界に入ることができない他の人よりも幸福な人間であると少しばかりの優越感を覚えてしまう。
しかしなんというかモンゴルの大草原にひとりだけというのは取り残されたような気分少しだけ心細い。
走り出したい欲求を抑え堪能していると不意に浮遊感が襲う。自分の体が上昇していく。眼下に広がる草原では何らかのモンスターによって狩りが行われている。ここにはどんな生き物がいるのだろうかと思いを馳せている。
だんだんと巨大な入道雲に近づいていき、ぐんぐんと高度を上げていく。高所恐怖症の人は心臓が止まるんじゃないかと考えていたところで眼前には白い壁。生身で雲に突入するという滅多に味わうことのできない経験をし、数十秒ほど進むと突然視界が開ける。
そこには空中に浮かぶ巨大な島があり、その上にギリシャにあるような巨大な真っ白い神殿が佇んでいる。神殿の中央部に降り立つと中には大きな姿見があり、その横には六十センチほどの火の玉が。ただの火の玉ではなくパッチリ開いた目と大きな口を持つか可愛らしい姿だ。
「ようこそ、ブレイブソウル~魔の巣窟~へ。私はナビゲーターのキビといいます。まずは貴女のお名前を教えてくださいな」
言い終わると薄紫のウィンドウが出現する、キャラ名ということかなどうしようかとしばし考えた後で本名を少しもじろうかと決めた。
「フウカ」
「フウカ様ですね、しばらくお待ちください。キャラクター名の重複がないか確認します……はい、大丈夫ですね。それではキャラクターデザインに移りましょう。正面の鏡で確認できます。注意点としましては性別の変更はできません。また過度な外見の変化は違和感の原因となります。あまりお勧めできません。ではごゆっくりお決めください」
キビちゃんの説明を聞きながらウィンドウを見ていくとそこには種族とスキルと加護の三つの項目しかない。とりあえず種族を決めるとしよう。
種族の項目を見ると「普人」、「精森人」、「小躯人」、「獣人」の四つある。「普人」は普通の人間、「精森人」はいわばエルフ、「小躯人」はホビットで、「獣人」はまあ獣っぽい人間だな。
その下には「ランダム」とある。
「このランダムって、この四つの中からですか」
そうであればあまり使う意味がないのだが、違うよね、アレですよね。
「ランダムは文字どうり種族をランダムで決めます。基本的にはその四つの中から決められますが本当に稀に違う種族が選ばれる可能性があります。ですがお気を付けください。一度ランダムを選んでしまうとキャラクターの再作成は不可能となります」
そうですか、そうなんですか。これはもうランダムを選ばざるおえないだろう。
「ランダムで」
「よろしいのですか。再作成はできませんし、希少種族の確率はほぼゼロですよ」
「愚問なり。私はロマンに生きているのだよ、キビ少年。さあ、早くしたまえ、冒険が私を待っているのだ」
「はっ、はい。それでは種族はランダムでよろしいですね」
若干引いたようなキビちゃんを横目に、うむといったように頷くと全身が光り輝く。まばゆい光が神殿内を照らしていく。やがてその光が収まり正面の鏡に視線を移すとそこには何ら変わらない自分の姿があった。これは普人族を引いてしまったのかと思いウィンドウを見る。
種族
蟲人
そこには「蟲人」と書いてあった。