学園パート
千早花梨・・・17歳。高校三年生。趣味は寝ること。霧島裕二を幼馴染に持つマイペースな女の子
霧島裕二・・・18歳。同じく高3。花梨の幼馴染。表情の変化に乏しいクール系男子。若干中二病。
主任・・・三年生の学年主任をやっている教師。本名の佐藤ではなくなぜか主任と呼ばれる。本人の担当教科は『物理』
加瀬七緒・・・なぜか裕二に付きまとっている少し背の低い男子。ほかのふたりと同じ高3。
三崎咲・・・めんどくさがり、サボリ魔、鳥頭の三拍子揃ったダメ教師。裕二と花梨の担任。
「Zzz……」
「――――おい」
「……んぁー?」
「やぁーっと起きたか。調子はどうだ? 花梨」
「あー……睡眠邪魔されて最悪だよ」
時計を見ると時刻は12時40分ぐらいを指していた。昼休みは25分から1時15分なのでまだ全然時間は経っていない。教室には弁当組がちらほら固まって残っているだけで他大勢は教室にはいなかった。
「いや寝てんなよ。昼飯どうすんだ昼飯」
「私の分は上げるよ。裕二結構大食いでしょ」
「人の分まで食えるかっつの。ほらさっさと食堂行くぞ」
「へーへー……」
☆☆☆☆☆☆☆
食堂に来るともうすでにほとんどの席は人で埋まっていた。こういう人ごみを見ると、前に裕二が『なんで人はこんなにいっぱいいるんだろうな……もう少しぐらい少なくてもいいのに……』って言ってたことを思い出す。中二過ぎて正直引いたから『気持ち悪い』ってとりあえず言っておいた。
そんなことを思い出していると人ごみの中からこっちの方に手を振っている白衣を着た男の人たちが見えた。
「こっちだよ。千早、霧島!」
「おー主任ーないす~」
「いやいや、先に席を取っておいてくれって霧島に頼まれたのさ。君は霧島に感謝しておいたほうがいいよ」
「んーいつもありがとねゆうじぃー」
「気にすんな。好きでやってることだ。……だけどなんでお前までいる七緒」
「べっつに気にすんなよ裕二ぃ~♪」
「消え失せろ」
「取り付く島もない!?」
なんでか裕二はこの人を嫌ってる(嫌いなわけじゃない)けど、悪い人じゃないし私には関係ないからとりあえず私は特に何も言わずにベンチに腰掛けた。
「じゃあ俺は飯頼んでくるわ」
「私はいつものね~」
「あいよ『俺もいつもの~!』一人でいけ野良猫」
二人のいつもの会話に挟まれながら主任はというと一人で黙々とカレーを食べていた。
「ところで、君たち二人はテスト勉強はちゃんとやっているかい?」
「「テスト?」」
「……いつも上の空の千早ならともかく加瀬まで知らないとなるとまた咲担任のミスだな……まったく。彼女は一体何をしているんだ」
いま真正面から普通にディスられた気がする。
「て、テストっていつからっすか主任……?」
「三日後だ。もっとも、今からやったところで一夜漬けと同じ、何も変わらないだろうね」
「それでも……『なにもやらないよりはマシ』ですよね主任?」
「……花梨がなんかかっこいいいこと言ってる」
「あぁ。千早の言うとおりだ。けれど、やってることはただの悪あがきだけどね」
主任はそう言いながら食べ終わったカレーを返却口に戻しに行った。去り際に『僕は君たちの足掻き方に興味がある。その“可能性”にね』と呟いたのを聞いた。よくいる難聴系主人公とは違って耳はいいのだ。
頭は悪いけど。
「ならばご期待に応えてみせましょう。あがけるとこまであがいてみせます」