ここはデビル最下層
「デインズ様、何かおもしろいことないんですか。10文字以下で速攻プリーズ」
はちみつ色の髪をサイドテールにしてもてあそぶ。逆さクロスのピンが前髪を彩り、上質な黒の上下服とレースの素材を足したブラウスが彼女を引き立てる。厚底靴で背の高さをアピールするなど、悪魔と言うには微妙に位置する少女がいた。
「君は弱いくせにそういうとこ積極的だよね。う~ん、『性交でもする?』よし、八文字になった。ベッドへ行こうか」
「いやです」
拒否して腕を突き離しても、それ以上の力で抱きよせられる。耳の中や耳たぶを舐められて悶えれば体の奥底が燃え上がり、上質な魔力を求めて口づけをねだりそうになった。淫乱な魔性を抑えようと男性の漆黒の服を握りしめれば、しわができて上着がくたくたとなっている。
「弱いとか言わないでください。これでも結構、弱い心の持ち主なんですから……それと性交は勘弁してください。あんな規格外は受け付けません~。性交で能力も上がるのは魅力的ですが、デインズ様が相手だと私が間違いなく死にます。腹上死したらどうしてくれるんです。どんだけ私は間抜けなんですか」
「くっく……ルナーシャが腹上死……あ、ありえそうだ」
「ありえるのかよっ! あ、口が悪くてすみません」
「いいよ、でも、私なら絶対死なせないかな」
何度でも蘇らせるからと言われて、怖気が走る。
この変態上司ならやりかねん。ルナーシャはペッペッと、腕を振り払う仕草をした。
「どうだか。デインズ様はいつか、こう言うかもしれませんよ? 『魔力を入れ過ぎた』とかなんとか~! 小人を踏み潰す巨人族みたいなね。あー、デインズ様やばい。私もっとやばい」
悪魔にしては弱いルナーシャ。お情けで傍に置いてもらってるようなものだと自身も思っている。周囲の悪意ある存在達からも囁かれているではないか、ルナーシャとの逢瀬をただの遊びだと。同じ寵姫からも牽制されて、傷を付けられたりもした。何日も続くと数えるのも億劫になるくらいに。
生まれたばかりで最弱の悪魔は、影に取りつき、姿を隠したり相手の動きを制限したりとこれまた脆弱。この最弱な悪魔がデインズに興味を持たれるとは思ってもいなかった。自分を一番始めに見とめた時の、うっとおしい塵でも見るような目つきをした孤高の存在かと疑ってしまう。
そのときのルナーシャはただ、目の前に佇む強き至高の存在に憧れた。本能で分かる。この人だけは敵にしてはならない、歯向かってはならないと。
腕に囲われたあのとき、無遠慮に血を貪った。枯渇した体は求めずにはいられなかったのだ。知らずに男性の腕に牙を立てて血を綴っていく。上質な血を取り込み乾いた喉を潤せば、心も体も満たされる。正直、じじいだろうがモンスターだろうが、上質な血なら誰でも良かったのだ。その行為が後にどのように影響するのか定かではなかったが、デインズに関わったことを、今では少し後悔している。
腕の中にあるルナーシャを見てデインズは何を思ったのか、細い体を組み敷いて精を注ぎ込んできた。闇夜の月が存在する時を数えるならば七回。七日七晩、蹂躙されてようやく体の強度は保たれたが、ルナーシャの精神は病んでいた。
「一応は褒められてるんだよね? 拒否されたことは残念だけど……ま、ヤろうと思えばいつでもできるし良いか」
唇を何度も啄ばまれる。ルナーシャはそろそろ離れないと、淫魔よりも卓越した最上級悪魔にヤリ殺されると悟った。いつぞやのあれを思い出す。腰は立たない、喉が掠れて上手く喋れない。気付いたときは勝手に寵姫にさせられていた。
「デインズ様、下品ですよ。まぁ、寵姫が山のようにいる時点で性欲有り余ってるのは分かるんですけどね~」
膝の上で座っている少女はデインズの百人目の寵姫として迎え入れられた。人数が多くて本人も覚えていないらしい。ルナーシャはデインズの首筋に牙を付き立てながら、話を聞き流していた。
「ルナーシャ、あんまり遠出すると君は消滅するよ? この前は天使界で瀕死状態だったじゃないか」
「そうでした。もうちょっとで昇天するとこでした! おっと、デインズ様もうそろそろ離してくださいね。2番目の寵姫さまがこっちを凄い目で睨んでるんですから」
飄々とした動きでデインズから離れようとする。仮にもこの最下層の支配者だ。爪なんかでちょびっとの怪我などさせては、悪魔達から顰蹙を買ってしまうではないか。その意図を込めて体をよじると、腕からは解放された。
「天使界は楽しかったかい?」
黒いゴスロリ服を翻していると、デインズが頬に振れてきた。うっとりするような甘い声で囁かれて、ルナーシャの身体が甘く疼く。せっかく離れたのに、また距離が近くなった。
「うん、とっても。こことは違って白すぎて目が慣れるのにどれほど掛かったか……悪魔ってダメですね」
溜息を零され、頭を撫でられる。
美しい漆黒の瞳がルナーシャの顔を捉えていた。
「悪魔というより、ルナーシャが弱すぎるんだよ。私程度の悪魔クラスになると沼地に足を浸ける程度にしか感じないよ。我々悪魔達の修行の場には最適だが、ルナーシャには早すぎるかな」
「何ですかその最強設定。痛いんですか? はまって動けなくなるとでもいうのですか? デインズ様くらいですよ、天使界に行ってもボロボロにならないのは」
ルナーシャの性格上、天使界の住人達にはよくしてもらった。ティータイムに呼ばれたり、一緒に歌ったりもした。ただ、やはり悪魔だから次第に体がダルくなる。意識が朦朧としたときに、デインズが現れて颯爽とデビル最下層に連れ戻された。
説教を心半ばで聞き流していたら、体にねっとりと教え込まれた。お前の命と体は誰の物だと、組み敷かれながら愛を囁かれる。
「誰のもの……かぁ」
「私が名付けて血を与え、精をたっぷりと注ぎ込んだ。ルナーシャはもう、私のものだよ」
ルナーシャ自身の命に無頓着さが気に入らないらしい。
デインズは何かを呟くと、自身の手の中に首輪を出現させた。
「ちょ、な、デインズ様っ。その首輪って……!」
赤色の革で作られ、金色の刺繍が施されている。名匠で作られたかのような輝きように、ルナーシャは後ずさった。
「この首輪を着けさせてもらおうかな。ルナーシャ、おいで」
「無理です。拒否させてくださひ。それだけはぁっ」
半泣き状態でイヤイヤ顔を振ってみてもデインズは容赦なしだ。魔力が収束して黒い鎖で体に巻き付き引っ張られたあと、丁寧に首輪を着けられた。真ん中には金色の鈴と紫色の装飾品。奴隷には見えない、とても上質な細工で作られていた。
「この首輪には私の魔力も入っているので、あとで使い方を教えるよ」
「う、うぅ~」
デインズ本人に魔力を放ってやろうと思っても、当人の魔力な上に些細な量だ。扱いなど誰よりも分かってる。防衛の陣に阻まれて、デインズには傷一つ付けられないだろう。
自由な鳥は籠の中に自ら入り、愛でられる人生を決めた。そんなのも悪くないかと観念して、小さく啼くのである。今日のデビル層も平和でした。
なろうさんに小説を載せるのは久しぶりです。肩の力を抜いて執筆してます。いつもはムーンライトさんで連載してるので。。いや、短編はほんと気分転換に良いですね。。
☆☆
あーー!
一番大切な事を思い出しました。自分が一番読みたい物語を書かなくてはいけないですね。どうやって継ぎ足そう。考えるだけでも財産になった。ネットサーフィンして、一番大切なことが分かりました。
自分が毎日読めないと面白くないわ……これを守らなくてどうする。俄然やる気が湧いてきた。チートとはいわんでも、作者が毎日読みたくなるよな作品作りを頑張るぞ!
長編にするかどうするか、悩みどころです。停滞してる長編に手をかけるか…(゜_゜)… ダメだ、今、ムーンライトで連載してた……あーー、あっちを先に完結させなきゃ初心者からいつまでたっても抜け出せない。。が、頑張ってやるぅ