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第8話 「二楽亭へようこそ!」第一章 鎌倉攻防戦 その13

私たちがねえさまたちのもとへ駆けつけたとき、

巫女服は見るも無残に引き裂かれた葛葉ねえさまと静葉ねえさまが

鑑真、ううん、ユダの足元に倒れていた。

ねえさまたちの力を合わせてもユダにはかなわないの…?

側に立っているユダは、

今まで相手にしてきた司祭級とはまるで違うどす黒いオーラをまとっている。

フードから覗かせたやせぎすのその顔は目を瞑り、髭を蓄えていて、

何より僧侶のはずなのに長い黒髪に違和感がある。

「ねえさまっ!」

「結絵ちゃん、音音ちゃん、来ちゃダメ…」

駆け寄ろうとする私に、

身を起こし、苦しい息の中でささやくようにしゃべる葛葉ねえさまをあざ笑うように、

「私は、幽冥世に行きたいだけなのです。

邪魔をしてはなりません」

と薄笑いを浮かべたユダ言い、特異点の入り口に向っていく。

挿絵(By みてみん)

「ふざけないで!

向こうで現世を支配するだけのあやかしを操って、

妖力をためこもうとしてるだけじゃない! そうでしょユダ!」

「私はユダではありません。救世主です。

すべての生きとし生けるものは私に従うのです。

それが天の摂理--」

恍惚とした表情でしゃべり続けるユダが

口元に嫌な笑みを浮かべた。

次の瞬間、かっと目を開くと、フラッシュをたいたような光で何も見えなくなる。

とっさに刀の鞘を使って自分の前をガードすると、

そこにつぶてが飛んできて、鞘にはじかれて腕をかすめる。

「痛っ!!」

「うっ」

音音と三狼がうめく。

ふたりも攻撃されてるっ!

少し目が慣れて、つぎつぎに飛んでくるつぶてを打ち払う。

光の洪水がおさまり、足もとを見ると、

さっきピラトが打ち込まれてたシュケル銀貨が落ちていた。

そしてその先には音音と三狼が倒れて――。

「!!!!!」

息を呑む私に、ユダが呟く。

天罰覿面てきめんですよ。さあ、もう邪魔するのはおやめなさい」

「………何が天罰!? 

じゃあ私につぶてが当たらないのはどうして?

自分に都合のいいことだけ集めて奇跡とか言って人をだまして…。

私、あなたになんか絶対に負けられないっ!」

「しかたありませんね…。

では、長く苦しんで死になさい。

ロージィ・クリシフィクション(薔薇色の磔刑)!」

その叫びと同時に、私の背後にあった野薔薇の枝が伸びてきて、

私の腕に巻きついてくる。

何度振り払っても伸びてくる枝に腕を絡め取られて、

まるで十字架に貼り付けられるように木の幹にいましめられてしまう。

音音と三狼も同じように自由を奪われている。

「っ痛!」

棘が腕に刺さり、見る間に白い薔薇の花が咲く。

刺さったとげから血液を吸い、白い花にだんだんと赤みがさしてくる。

「離して!」

叫びながら体を動かすと、棘がくい込んで更に花が赤くなる。

「そこでゆっくりと世界が変わっていくのを見ながら天に召されるがよい。

おまえのようなモノの魂でも天の王国は受け入れるだろう」

そう言って特異点へ向かうユダの前に、

ねえさまたちが立ち上がり、行く手をさえぎった。

ふたりの体もまばゆい金色に輝いている。

ユダの眩しくて痛い光とは違う優しくて暖かい光―。

「ほう、九尾に戻るつもりか?

ふたりの気を融合して九尾の狐に戻ることは可能だろうが、

おまえたちには出来まい」

九尾に戻る? どういうこと?

ふたりでいっしょに戦うんじゃないの?


14につづく

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