特別編 その1 インタビュー ウイズ隠神刑部(いぬがみ ぎょうぶ)
今回は、本編の途中ですが、
本編をちょっと離れて、
登場人物の紹介を少しづつしていく企画なのです。
第1回目は、隠神刑部さんなのです。
狸部は弾正府の法務関係を統括してます。
インタビュアーは結繪さんです♪
特別編 その1
インタビュー ウイズ隠神刑部
狸部司・隠神刑部。
鎌倉府立西御門学園の数学教師で、十三部衆唯一の大人でおまけに妖。
普段はその厳しい指導ぶりから、鬼の数学教師なんて呼ばれたりしてるけど、
葛葉ねえさまの言うことには、一も二もなく従っている。
狸と狐というと何となく仲が悪いのかと思っていたので意外な感じだった。
端から見ていると、刑部がかなりご奉仕しているように見えるけど、
いったい二人の間には何があったのかな…。
あ、刑部だ。丁度良いから聞いてみよっと。
おや、結繪さま、はぁ、私と葛葉さまのことについて知りたいと?
少し話が長くなりますが……。
今から300年ほど前、瀬戸内海に面した四国の伊予松山藩で、
お家騒動がありましてね。
そのとき私と父、つまり初代隠神刑部とその配下の狸軍団は、
ある約束ために、図らずも藩主松山隠岐守を弑して、
--ああ、弑っていうのは、主君を殺すことですね--、
藩を乗っ取らんとする一味に取り込まれていたんです。
結果は藩主側の勝利でした。
我々『稲生物怪録』という古文書に登場する
稲生武太夫という男に退治されてしまって…。
四国八百八の狸の頭領と言われた父も、
祠に封印されてしまったわけです。
まあ、そのあと封印がほころびたときにふたりで逃げ出したわけですが、
父とともに坊主に化けて全国を放浪するうちに、
この鎌倉の建長寺の前で行き倒れてしまったんですな。
父も私も当時流行していた狂犬病にかかったんだと思いますが、
ああ、今はもう抗体があるから大丈夫です、そのときは本当にもうダメかと思いましたよ。
まあ、そんな乞食坊主な私ら親子を助けてくれたのが、
建長寺の万拙という和尚でした。
万拙和尚は、消失した建長寺の山門再建に尽力していたので、
ここは恩返しにと、父と私も坊主に化けてあちこち勧進してまわりました。
え? 勧進ですか? 勧進というのはすすんで寄付してもらうことです。
まあ、その旅の途中で、狸が和尚に化けてるという疑いを掛けられてしまい、
けしかけられた猟犬に噛まれ、命からがら逃げ出した私たちでしたが、
千葉の浦安付近で出血多量でどうしようもなくなってしまって…。
当時、その近隣に棲んでいた葛葉様が、
たまたまそこを通りかかって助けてくださったんですよ。
それまでに勧進して集めた浄財はすべて万拙和尚に送ってもらい、
以来、建長寺の山門は『狸の山門』なんて呼ばれてますね。
先代も私も彼女が手当してくれなければ、生きていなかったでしょう。
だからこそ私は、彼女に忠誠を尽くそうと思ってるわけです。
葛葉様が、弾正府に招聘されたとき、
私も少しでもお役にたとうと、
付いてきたというわけですよ。
私にはおねえさん萌に見えるけどなぁ。
まあ、生暖かい目で見守ることにしよっと。




