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第6話「-暗闘-青木ヶ原樹海」第1章 第2章

第1章


官公庁の立ち並ぶ東京・霞ヶ関。

国会にほど近い合同庁舎の一角に天文方はある。

内閣府直属のこの組織は、

”星見”により末来を予想する機関だ。

東京の明るい空では星が見えるわけもないので、

ハワイの昴望遠鏡や、

衛星軌道上に打ち上げた朱雀望遠鏡の

ライブ映像解析を行っている。

「何? 富士山に噴火の兆しが…?」

「はい…今年はただでさえ五黄殺ごおうさつ

天変地異や異変が起こりやすいのに、

この星回りは異常ですよ」

「地震予想連絡会には?」

「問い合わせましたが、

いまのところ変化はないそうです」

「我々だけで判断するわけにはいかない。

首相に天文奏の準備を――」

ふたりの会話を妨げるように、地鳴りのような音が響き

次の瞬間ふたりのいる建物は

忽然と消え去ってしまった。


第2章


「天文方が消失…?」

音音の持ってきた報告に少しびっくりした私。

もともと江戸時代に出来た武家方の組織ということで、

京の陰陽寮も弾正府も、天文方を戦力として

頼りにしてるわけじゃなかった。

ただ、それでも神霊現象に理解が薄い今の中央政府=

武家サイドとの折衝には結構便利だっただけに

弾正府としてはちょっとした痛手になるんだよね。

「やっぱり、極東教会の連中の仕業かな?」

「天文方の入った庁舎ごと根こそぎ無くなったそうです」

「…随分派手にやったね。

じゃあ、今度、政府との折衝はどことすればいいの?」

「静葉ねえさまが安倍本家から聞いた話だと、

文化庁の外局に天文暦道局を新設するようですわ」

「上手く機能してくれるといいんだけどね」

先日、第二契約者たちの襲来で

かなりの戦力をそがれた弾正府としては、

理解できないというだけで、

同じ日本人から足をひっぱられる事態だけは避けたい。

第二契約者=極東オーソドクス教会は

大規模な作戦を展開したばかりで

しばらくは動きがないものと話していただけに

これは大きな誤算かも…。

新たに何か仕掛けてくる前兆かもしれないと思うと、

極東教会に対する警戒のレベルを上げないとまずいだろうなぁ。

「でも天文方なんて、

対極東教会的にはなんの戦力にもならないとこ

つぶすなんて何考えてるんだろ…?」

「そんなことよりも結繪ちゃん!

来月の遠足、富士登山に決定したのですわ!」

自分で言うのもどうかと思うけど、

この私が珍しく真剣に考えてるというのに、

音音が能天気に違う話題をふってくる。

だいたい決定したって言うけど、

去年までの行き先がずーと箱根だったと聞いてたので

音音が富士山に行きたくて

学校の理事会に手を回している可能性が大きい。

「富士山の山頂には、

駿河国一ノ宮富士山本宮浅間大社ふじさんほんぐうせんげんたいしゃ

奥宮があるのですわ。

富士山頂って測候所とかを除いて、富士宮神社の私有地だってご存知でした?

わたくし、てっきり国有地だとばかり…。

それから、御神体は富士山ですけれど、

主祭神は、浅間大神様と

木花之佐久夜毘売命コノハナノサクヤビメ様で--」

やっぱり…。

音音、ああ見えて神社好きなんだよね…。

御朱印帳とかいうスタンプ帳みたいなので

判子押してもらってるし…。

挿絵(By みてみん)

「音音、楽しみなんだね…」

「ええ。もちろん! 日本人なら一度ぐらいは

きちんと自分の足で富士山を登りたいですからー。

結繪ちゃんは楽しみではないのですか?」

できればヘリコプターで行きたいとか思ってるのが本音だけど、

音音が楽しみにしているだけに、

「た、楽しみだよ…」

と答える。今きっと私の笑顔は

少し引きつってるはず…。


第3章につづく

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