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第4話「付喪神といっしょに」 その3

するとどこから現れたのか、

まだ6歳ぐらいの巫女さん姿の女の子が目の前に居た。

「え!?」

(いつの間に??)

まるで気配がなかったので吃驚したものの、

その女の子の頭にはネコミミより長いけもの耳がぴくんとあって、

彼女の背後には狐のようなふさふさした尻尾が

ゆっくりと左右に揺れていた。

ツインテールに赤いリボンが良く似合ってる、

と思った途端、女の子が私の胸に飛び込んできて

顔をすりすりしてくる。

かわいいモノが大好きな私は、

一瞬大事なことを忘れかけたけど、

(今はあの子と熊野さんを追いかけなきゃ…)

と思い出したとき、腰の辺りに硬いものが当たった。

「あいた」

そこを見てみると、

女の子の手にはさっきのフィギュアが握られていて

それが当たっていたのだ。

「あ、そのお人形どうしたの?」

「瑞葉、小太郎から貰った」

(みずはちゃんって言うんだ。

でも熊野さんどうしてこのお人形を…)

「みずはちゃん、それね、

なんだかイケナイお人形さんなんだって…。

危ないからおねえちゃんにくれるかなぁ?」

「この子、悪い子じゃないよ。

持ってた人のもとに帰りたいだけ」

「え!?」

どういうこと? 一瞬考えこむ私の背後から、

「付喪神はちゃんと処分しなくちゃね」

と言う声がして、いつの間にか熊野さんが立っていた。

「瑞葉さま、あれは『貰った』というより

強奪という方が正確だと思いますね、ボクは」

言いさま、すばやく瑞葉ちゃんに近づくと、

その手からフィギュアを取り上げてしまう。

「その子、悪くない! 返して!」

「そう、付喪神は別段悪いものじゃない。

こいつを捨てた人間に問題があります。

だけど捨てられた付喪神は持ち主の元にかえりたくて、

結果害をなすからね、処分するしかないんですよ」

「返して!」

抗議して取り返そうとする瑞葉ちゃんを完全に無視して、

「ダメですよ」

と言いながら両手で人形の胴体をへし折ろうとする熊野さん。

(こんなの違う…)

そう思った私は、熊野さんに体当たりして人形を奪い返した。

そのフィギュアに触れたとき、

元の持ち主との過去が走馬灯のように私の中に

急激に流れ込んできた。

仲良しだったご主人様が突然亡くなり、

いっしょに火葬してもらうはずだったのに、

<こういったものは燃え辛いので…>

と言われ棺おけから出されたフィギュア。

仏壇に飾られ、ナミダを流したら気味悪がられ、

その後はいわく付きの人形として転々としてきた。

ご主人様と一緒に逝きたかっただけなのに…。

「この子は別に悪いことなんかしてないです!

お願いですから、処分するなんて止めてください!」

「でも、これ持ち込んできたの、

あんたのとこだぜ。責任とれんの?」

「そ、それは…」

涙がぽろぽろと零れ落ちていく…。

霊的な力はまるでない私。

この子が何か悪いことをしたとしたら、

私には止める術はない--。


その4につづく

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