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第2話「酒 虫」その4

ちょっとあの酒虫の映像を見た後では、

さすがに誰も食指が動かなくて、

その日はすごすごとお店を後にした。

ただ一人、音音だけはお腹が空いたからと言ってそのまま店に残った。

どんだけ健啖家けんたんかなんだ…。


今回の一件は、

地下室(地下迷宮というのは音音の演出…)が発見されて以来、

急に大酒飲みになったお店の主人を心配した家人が、

中華街にいる道教の導師に相談した結果、

弾正府に回ってきたらしい。

そして1週間後、ふたたびあのお店。


後日、麻婆豆腐リベンジのため、

前回と同じく5人で中華街に再びでかけた私たち。

もう14時を回るというのに、

くだんのお店の前には長蛇の列ができていた。

あの酒虫をオッサンから取って以来、なぜかお店は大人気店になり、

今では半年先まで予約が入っているという。

「この大繁盛は化野様のおかげです」

店先に現れた店主は、そう言って下にも置かないもてなしぶり。


2階の貴賓席に通されると、

次々にお料理とお酒が運ばれてくる。

お料理はすごくおいしくて、

例の麻婆豆腐のほか、

おいしい中華料理を

回るテーブルで思い切り堪能して大満足な私。

「こちらは当店で一番のお酒でございます」

そう言って出されたお酒に、

「こんなに美味しい老酒は初めてなのです~」

と葛葉ねえさまも静葉ねさまも舌鼓を打った。

「そうでございましょう?

あの日、化野様が教えてくださったとおり、

アレを名水につけておくと、

今まで味わったこともないような名酒がかもされて、

今やそれが評判に評判を呼んで、この通り大繁盛でございます」

「文献にあった通りなのですわ」

と音音は鼻高々。

「なに文献って?」

「え? 前にもお話した

聊斎志異の『酒虫』ですけど…」

それって、ちょっとイヤな予感が…。

そんな私の不安をよそに、

「マスター、アレ持っていらして」

と言って何かを持ってこさせる音音。

そしてカートに乗せられて出てきた大きなガラスビン、

その中にはアノ酒虫がうねうねと……。

「この酒虫、この方から

出てらっしゃったもの…」

と店主を指さして言うと、

ねえさまふたりはトイレに向かって駈けだした。

「?」

「お店ではキモかわいくて美味しいって評判なのに、

おふたりともどうなさったのかしら?」

と首をひねっている音音と店主に、

「もしかしてそのお酒、料理にも入ってる?」

っと半分腰を浮かせて聞くと、

「え? うん。もちろんですわ」

ときょとんとした表情で答える音音。

確かに味はいい。

でもあのビジュアルはどうしてもダメ~~!

涼しい顔をして食べ続けている三狼を横目に、

ねえさまたちの後を追いかけた私だった。


酒虫 おわり 第3話につづく

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