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二楽亭へようこそ! 外伝「ふたりの母」その9

おいしいものに目のない

食いしん坊な守り神・静葉ねえさまと葛葉ねえさまに

道楽グループのお店だとバレないように、

氷極ひょうごく>と名を改め、

氷に乗せた牡蠣やお造り、冷製など、

氷をテーマにした高級懐石料理としてオープンした。

音音の友人で南海竜王の娘・敖環姫ごうかんひめに頼んで派遣して貰った板前と

川魚を知り尽くした河童ガードの中から選ばれた板前の二枚看板で、

海川両方の幸を楽しめ、

さらにデザートに絶品かき氷が付くということで

あっという間に鎌倉セレブたち御用達の店になった。

すると向いの<美氷>も、

氷をテーマにした懐石料理店としてリニューアルした上、

海坊主とカワウソという海川二枚看板まで模倣し、

しかも微妙に値段設定が安い

<贅・美氷>という店をオープンさせてきた。

それを見て、

音音の護衛件秘書になっているオオゼキが、

「完全にライバル視されてますよっ!

それだけならまだしも、

完全にウチのパクリじゃないですかっ!」

雪親子の件を調べているキザクラに変わって、

と息巻くと、

音音は、

「まあ、ほとっきなさい。

ウチはいつも通りでいいのですわ。

裁判したって時間かかるだけで、

勝ってもウチのお店の看板に傷がつきますわ。

--お客様の舌を信じましょう」

と答えただけで、特別に何をする気もないようだった。

「こっちもなにか手を打たないと…」

焦れたオオゼキが、音音に意見しようとするところへ、

ドアのノックももどかしく、

キザクラが飛び込んできた。

「姐さん、わかりやしたぜ」

「この部屋に盗聴器はありませんから、

お話ししていただいて大丈夫ですわ」

「じゃあさっそく…向かいの店のオーナーは、

姐さんのにらんだ通り

雪子の元夫・雪夫の母親・雪ンバでした」

「………」

「労働環境は最悪ですね。

朝6時から深夜11時までの労働時間の間で食事を兼ねた休憩は合計30分。

完璧なブラック企業です。あっしがたらしこんだ情報源も…」

と言いかけたところを音音に、

「ご苦労さま。今日はゆっくり休んで頂戴」

と言われてキザクラは押し黙った。

多分事情に通じた雪女郎のひとりを籠絡ろうらくして、

洗いざらい話させたんだろうと思いながら、

少し考えた音音が、

河童ガードの主立った者を召集するようにオオザキに指示した。


さっそく集められた面々を前に音音が口を開く。

「明日から<贅・美氷>を兵糧攻めにしますわ。

キザクラ以下イケメン河童部隊は、

ターゲット従業員の引き抜き、渉外河童部隊は、

市場に手を回してターゲットに高級魚が手に入らないようにして。

そのために、道楽チェーン全体で高級魚を買い入れ、

原価ギリギリの高級魚フェアをすることを許します。

3日後、河童奥様連には

ランチタイムに家族ごと客として入店、

できるだけ細かい注文でオーダー、

間違いがあればクレームを入れてスタッフを混乱させて頂戴」

挿絵(By みてみん)

一気にまくし立てた音音は、

「え、えげつな…」

という河童たちの声を賞賛と受け取ったのか、

「では明日からよろしくですわ」

と言ってニンマリと笑った。


つづく

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