第3章 ② 「白いアネモネを探しに」
2日後
今日は4月9日、和佐高校の入学式。
私は美夢ちゃんと幼馴染の勇くんと一緒に学校へ行っていた。門の前の桜の木は満開を過ぎ、少しずつ散っていっている。いい日だなと感じながら門をくぐる。私たちはとりあえず昇降口でクラス表を見る。私たち3人は同じ1年3組のところに名前が書いてあった。
「良かったね!美夢ちゃんと優くんと同じクラスだよ!」
「そ、そうだね。」
「やったね!春花!」
「他に知っている人いるかな?」
「どうだろう?いるかな?」
「僕はいなかったなぁ〜、、、」
美夢ちゃんはワクワクして見ている横で勇くんは落ち込んでいた。2人の表情が食い違っていて不覚にも面白いと思ってしまった。再び私はクラス表を見る。見た感じ他の同じ中学の友達はちらほらいた。そんななか美夢ちゃんがボソッと呟く。
「双葉 樹、、、」
「どうしたの?美夢ちゃんの知り合い?」
その言葉を聞いて美夢ちゃんは目を見開いて驚く。そして動揺しながら言う。
「い、いや、違うよ、、、」
明らかにそうは思えなかった。
(美夢ちゃんの知り合いではないのかな?もしかして気になる人とかだったり?)
そんなことを思いながら靴を履き替える。すると美夢ちゃんが
「なんでニヤニヤしてるの?」
「なんでもないよー、、、」
「絶対変なこと考えたでしょ!」
「さぁーね」
「違うからね!全くそう言うのないんだから!」
「せっかくの青春が勿体無いね〜」
「だから違うって!」
美夢ちゃんは動揺しながらもそうではないらしいと言う。私は美夢ちゃんには早く春が来てほしいと思っているため少し残念に思ってしまう。後ろでは勇くんが少し察したのか複雑そうにしていた。そうこうしているうちに私たちは自分たちの教室に着く。すると中学の友人が数人集まってきた。その後「みんなと同じクラスだね」とか「春休み何してた」とか「彼氏できるかな」とか「かっこいい人いた?」とか新しい環境ということもあっていろんな話題で盛り上がる。まだ緊張もあるためか同じ中学の人ぐらいしか話す人がいないため、私たち数人が集まっていたからそこに集まってくるのだろう。そこに同じ中学の男子もやってきて、気が付けば私と美夢ちゃんの周りには輪ができていた。一方で勇くんの姿はこの輪の中にはない。勇くんはこういう雰囲気が苦手らしく、中学の時も友達数人だけで話していた。だが今はその友達がいない。だから私は新しい環境で話す人もいなかったら孤立して浮いてしまっているのではないかと心配になってしまう。勇くんとは小さい頃から家が近く、親同士が仲良かったからよく遊んでいた。勇くんはよく転ぶし、よくイジメられていてその度に私は助けていた。自分で言うのもどうかと思うが長い間過ごしていたから勇くんのことを弟のように感じて過ごしていた。だからお姉さんとしては周りから浮いてしまってまたイジメられてしまったりしないか心配になるわけですよ。そういうわけでどうか気になって勇くんの方を見る。すると勇くんは隣の席の男の子と話していた。その男の子のことはよく見えないが、勇くんは楽しそうにその人と話していて、私は安心した。何様だよとか親かとか言われそうだけど、、、そんなことをしていると先生らしき人から入学式が始まるから廊下に並ぶようにと言われて、言われた通りみんな並び出す。私は右側の列に並ぶ。少し後ろには美夢ちゃんがいるがやはり少し離れていた。周りに話す人もいないから緊張もするし、少し心細くなる。すると突然私に話しかける人がいた。
隣にいた男の子だ。
いきなり、「僕のこと覚えている?」と
私は彼のこと知らない。初めて会ったはずなのにそんなことを言われ驚きながら思わず「え、?」と言葉が漏れる。彼は続けて
「数日前に、助けてもらった、双葉樹です。」
と名乗ってお礼をしてくる。知らない人からお礼を言われ、私は戸惑いながらそんな彼の言葉を遮る。
「ご、ごめんなさい。たぶん人違いじゃないかな?わ、私、君と会ったことないし、助けた記憶ないよ?」
私の言葉を聞いて彼は絶句していた。明らかに気まずい空気が漂う。
(いやでも知らないよ。こっちも、もしかして、まさか、記憶障害?)
と思っていると後ろから美夢ちゃんが割って話しかけて来た。わざと話を遮るように。ただそのおかげで私的には助かった。美夢ちゃんは列を離れて怒られちゃったけど、彼と話す隙がなくなったことで、余計な詮索をされずに済んだ。
にしても彼は一体なんだったのだろうか?その時の私はわからなかった。その後は入学式をし、今日は午前中だけと言うこともあってなんともなく無事に終えることができた。
この日の帰り道
私は美夢ちゃんと帰っていた。最初は普通に高校についての話題とかを話していた。だけど私は今日の彼のことが気になった。
なぜ、私を知っていたのか?
そして美夢ちゃんはなぜ助け船を出してくれたのか?
明らかに何があるはずなのはわかっていた。
あの時の美夢ちゃんの顔、明らかに焦っていたからだ。私は覚悟して美夢ちゃんに聞くことにした。
「あのさ、美夢ちゃん?」
「ん?どうしたの?」
「今日入学式始まる前に廊下で話しかけて来た男の子って、、、」
どっかであったことあるの?と聞こうとした。だが美夢ちゃんが私の言葉を遮る。
「あー、と、か、勘違いだったらしいよ!彼!」
美夢ちゃんは動揺して誤魔化している。私を思ってのことだろうけど、それでも気になる。
「嘘でしょ?美夢ちゃん?」
「う、嘘じゃないよ!」
「明らかに動揺してるよ?」
「う、ぐ、」
「それに今日クラス表を見るときに美夢ちゃん彼の名前ボソッと言ってたよね?」
「、、、」
「てっ、ことは彼のことを知っているんでしょ?」
「、、、」
「私のことを思って言わないでいるのは、嬉しい。けどね、私は自分のことに覚悟しているつもり。それに何より彼の言っていたことが気になるの!」
「言っていたこと?」
「うん。この前は助けてくれてありがとうって」
「そ、そうなんだ、、、」
美夢ちゃんはそう言ってしばらく黙ってしまった。言うべきか葛藤しているのかはたまた誤魔化す口実を探っているのか。そして決心したように私を見て話し始める。
「実はね。彼と3日前に会っていたんだ。あの堤防敷の桜並木でね」
やはり、読み通り彼と会っていた。私は固唾を飲んで美夢ちゃんの続ける言葉を聞く。
「だけどね。私、後からその場に着いて春花と彼との話はよくわからない。ただ、春花は彼と楽しそうにしていたよ。そして、彼と別れてから彼のことを知りたいと言ってた、、、」
私はその彼のことを知りたいと言う言葉に驚いた。私自身がそう感じていたのに忘れてしまったんだ、、、
私のそんなことを思っている顔を見たのか美夢ちゃんは終始悲しそうな顔をして黙っていた。
沈黙が続く、、、
お互い黙ったまま帰路を進む。美夢ちゃんを見るとまだ悲しい顔をしている。どうやら言わなきゃ良かったと思っているようだった。もうそろそろ、美夢ちゃんと別れる場所が来てしまう。このままだと美夢ちゃんに申し訳ない。
その前に、、、悲しい顔をどうにかしないと、、、そして美夢ちゃんには伝えないと、、、
「ありがとうね。教えてくれて。」
「え?」
美夢ちゃんはキョトンとしている。私は言葉を続ける。
「どう言うことだったのか知れたし、そして、私がこれからどうしたいか決まったから!」
「、、、な、なにするつもりなの?」
私はここでやっと決意することができた。これからの将来どうすれば私の人生を歩むことができるのか。美夢ちゃんと彼、双葉樹くんのおかげで見つけることができた。私は美夢ちゃんに告げる。
「花びらを集めに!」




