第十一話 星還の架橋
「私たちの――地球を!!!!
これ以上、汚すなーーーーっ!!!!!」
その叫びは、
死んだ世界に降り積もっていた静寂を、突き破った。
その時だった。
静まり返った世界に、微かな気配が満ち始めた。
地上のあちこちから、かすかな光が生まれ、ゆっくりと宙へと昇っていく。
無数の小さくて白く丸い光。
街の屋根から。森の奥から。海の底から。
地球のあらゆる場所から――
何万、いや、何億もの光が夜空へと浮かびあがる。
それは、まるで星屑が逆流していくようだった。
「……なんだ、この光は……」
少年が驚いたように呟いた。
隙をついて、ミナは少年の腕を振りほどく。
無数の光の玉たちは、まるで意思を持つかのようにミナのまわりを舞い、やさしく彼女を包み込む。
「……これが……魄玉……?」
ミナの足元に集まった魄玉たちが、ひとつ、またひとつと繋がり合い、足場を作る。
別の光たちは宙に舞い、大きな弧を描いて輝きながら、
やがて巨大な光の弓となり、矢を形づくっていく。
(みんな……地球のみんな……お願い。力を貸して!)
ミナはその神々しい弓矢に手を伸ばした。
指先が光に触れた瞬間、全身にあたたかな力が流れ込んでくる。
その力を握りしめながら、ミナは叫ぶ。
「魄玉――星還の架橋!!!!」
矢が弧を描き、少年の胸を突き刺す。
空が震え、まばゆいほどの光が地球全体に放たれた。
――――――
全身の力を使い果たしたミナは、息を切らしていた。
魄玉に包まれながら、ゆっくりと地上へ降りていく。
安堵からか、ミナの頬には涙がつたっていた。
その涙を、ひとつの魄玉がそっとぬぐう。
(……お母さんだ)
その温かさに、ミナはすぐに気づいた。
このぬくもり――間違いなく、母のものだった。
母の魄玉を中心に、他の魄玉たちも、ふわりと集まりはじめる。
やがて、それらはひとつにまとまり、大きな光の玉となった。
その玉は、きゅっと小さく凝縮され、
ミナの手のひらに、すっぽりと収まる。
「……みんな……ありがとう……」
ミナは、やさしく微笑みながら、そう呟いた。
手の中にあるふるさとの温もりを感じながら――