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第11話 迫りくる脅威

時間: 2038年6月26日、朝6時20分

場所: 荒廃した世界、セクター7周辺


バンガローの残骸が灰色の荒野に孤立し、暗灰色の霧が渦を巻いて崩れた壁を絶え間なく叩いていた。風は低く唸り、コンクリートの破片が砂に半ば埋もれていた。


メアリー・マクレーンは暖炉の残った石枠のそばに膝をつき、子供たちを毛布でしっかりと包み込んだ。


「落ち着いて、みんなここにいるよ」


声は震えていたが、その中に強さがあった。埃で曇った眼鏡の向こうで、目は警戒心に満ちていた。


「私がもっと早く気づいていれば...」


背中に冷や汗が滲んだ。視線は崩れた壁の隙間から吹き込む灰の嵐を捉えた。


ティムはメアリーの前に立ち、家族を背中で庇うようにして立っていた。


「一体何だこれ!?」


叫びは掠れて聞こえ、汗でじっとりと湿ったオリーブ色のシャツは灰と汗で重くなっていた。


「メアリー、俺が何とかする」


低く呟き、彼女の肩に手を置いた。手には強さと同時に、微かな震えがあった。


メアリーはティムを見上げた。


「ティム、子供たちを頼むわ」


囁いた。霧の向こうで瞬く赤い光に視線は再び鋭くなった。ネックレスに手を伸ばし、その冷たい感触から力を得ようとした。


アールは崩れかけた窓枠にしがみつき、外を見ていた。


「外、変だよ!これ、何!?」


カーキ色のトレーナーは灰で汚れ、茶色の瞳は荒野の彼方で瞬く赤い光を追っていた。


ヴァージニアは毛布に顔を半分埋めた。


「ママ、怖い」


震える声を漏らした。金髪は湿気で肩に張り付き、緑の瞳は涙で潤んでいた。周囲を鋭く観察し、赤い光のパターンを捉えていた。


ジュディは叫んだ。


「ウーちゃん、どこ!?」


灰に埋もれたぬいぐるみを小さな手で必死に探していた。


突然、バンガローの残ったドアが勢いよく蹴破られ、木片が床に飛び散った。灰緑色の制服を着た兵士が4人、レーザー銃を手に乱入してきた。


「グリーンカードを出せ!」


怒号が荒野に響き渡った。兵士たちの顔はゴーグルで隠されており、声は冷たく無機質だった。


メアリーは叫んだ。


「何!?」


子供たちを背中に隠すように立ち上がった。


「ティム、何なの!?」


声が震えた。


ティムは一歩踏み出した。


「ここは俺の借りたバンガローだ、出て行け!」


叫び、兵士の一人の胸を両手で突き飛ばした。兵士は腕で彼を払いのけ、ティムは暖炉のそばに倒れ込んだ。


「メアリー、子供たちを守れ!」


兵士の一人がティムにレーザー銃を向けた。


「グリーンカードだ!早くしろ!」


怒鳴った。銃口がティムの胸に向けられた。


ティムは膝をついたまま立ち上がった。


「何の話だ!?何のことだ!?俺たちは何もしていない!」


兵士は無線機を耳に近づけた。


「対象が抵抗。グリーンカード未提示」


機械的に報告した。


兵士のリーダーらしき者が一歩進み出た。


「隔離フィールドの残留者か?」


無線に報告した。


「生存者確認。グリーンカードなし」


倒れたティムを冷たく見下ろした。


「ナノマシンに感染されていない証明がなければ、セクター7には連れていけない。感染者は抹消するしかない」


メアリーは子供を抱きしめながら、状況を理解しようと必死だった。


「2025年...?隔離フィールドって...ナノマシンの実験の影響なの?」


混乱した様子で呟いた。


ティムは床に膝をついた。


「感染?グリーンカード?何だそれは!俺たちは昨日まで2025年にいたんだ!」


兵士がリーダーに無線で報告した。


「抹消許可を申請」


銃口をティムに向けた。赤い照準光線が彼の胸に合わせられた。


メアリーは叫んだ。


「やめて!」


子供たちを毛布で覆おうとした。


混乱が最高潮に達した瞬間、外から低い唸り声が響き、地面が微かに震え始めた。窓ガラスの残りが砕け散り、無数の破片が床に飛び散った。


怪物と化した狼が飛び込んできた。ナノマシンの暴走で変形した体は2メートルを超え、灰色の毛は金属のように硬く光っていた。赤い目が暗闇で不気味に輝き、口から滴る唾液が灰に落ちると焦げるような臭いが広がった。


兵士のリーダーが叫んだ。


「何だ!?」


レーザー銃を発射した。赤い光線が狼の肩を焼き、肉が焦げる臭いが漂った。傷口はすぐに赤い結晶で覆われた。


狼は瞬時に飛びかかり、鋭い爪がリーダーの腹部を抉った。制服が裂け、血が噴き出した。リーダーは絶叫し、ゴーグルが割れて血まみれの顔が露わになった。


混乱の中、革のジャケットを着た女性が飛び込んできた。


「早く乗りな!」


叫んだ。声は灰の嵐を切り裂くように鋭かった。


短い黒髪が風に揺れ、鋭い目が怪物たちを冷静に捉えていた。手には古いショットガンが握られていた。


「ナノマシンは衝撃に弱い」


低い声で呟き、素早くショットガンを狼に向けた。


散弾が狼の首に炸裂し、血と金属片が飛び散った。狼は咆哮し、後ずさったが、傷口からは赤い結晶が溢れ出していた。


「これが2025年からの訪問者か」


レイナはメアリーを一瞬見つめ、すぐに視線を戻した。


「動くな、まだだ」


狼は傷ついた首を振り、赤い目がレイナを捉えた。唸り声が低くなり、後脚に力が入った。レイナはそれを読み取り、ショットガンを構え直した。


「来るぞ」


狼が空中に躍り、鋭い牙が月光に輝いた。レイナは一歩も動かず、冷静に2発目を発射した。散弾が狼の胸部を貫き、後方に吹き飛ばした。


「一匹だけじゃない!」


ティムが叫び、壊れた窓から覗く二つ目の赤い目を指差した。


レイナは冷静にショットガンに新しい弾を装填した。


「二階に上がれ。階段だ、急げ!」


最初の狼が再び立ち上がった。傷口からは赤い結晶が急速に成長し、体の形を歪めていた。


「修復が早い…12系か」


レイナは呟き、後退しながら3発目を放った。弾丸が狼の右前脚を吹き飛ばし、怪物は一瞬バランスを崩した。


二匹目の狼が窓から飛び込み、兵士の一人に襲いかかった。悲鳴と血が部屋に満ちる中、レイナは階段を指して家族に急ぐよう促した。


「メアリー、子供たちを連れて!」


ティムが叫び、倒れていた兵士の一人からレーザー銃を奪った。銃を構えた。


「俺が時間を稼ぐ」


手は震えすぎていた。それでも、狼に向けて引き金を引いた。赤い光線が狼の脇腹を焼いた。


「だめだ!」


レイナが叫んだ。


「エネルギー武器は効かない—ナノマシンが吸収する!」


警告通り、傷口の赤い結晶が明るく輝いた。


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