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インター目ット

作者: とほかみエミタメ

 インターネットが世に誕生して一世紀……みたいな感じで、世界中でお祭り騒ぎをしていたのも早数年前であり、「あぁ、そんな事もやっていたなぁ」と、最早懐かしい響きです。


 今や私達の生活に欠かせない物となったインターネット。人類の利用率は99.8%となっており、高齢者がネットを使わない何てのは大昔の話で、昨今インターネットに触れていない人間はほぼほぼ皆無なのです。


 例を出すと切りが無いのですが、家、自動車、電車、飛行機、テレビ、冷蔵庫、洗濯機、電力量計、水道メーター、自動販売機、血圧計、医療診断機器、GPS、工場の生産ラインにあるロボットや工作機械、畑の作物、家畜、気象観測機、エトセトラエトセトラ……これらのモノ全てがインターネットで繋がり、情報システムによって、私達の為に様々なサービスを提供してくれる時代となりました。


 そう、今日びインターネットに繋がっていないモノなぞ、この地球上には存在しない程にインターネットは浸透し、更に私達の生活を向上させました。


 大抵の事柄は全てインターネットで賄える様になり、併せて多種多様な趣味・娯楽も全てインターネットで楽しめる様になりましたから、本当に便利な世の中になったものですね。 


 さてさて、総務省のインターネットの利用状況データに、この様なモノが御座います。私達がインターネットを利用する際の端末別のランキングです。


 順位としては、一位:スマートフォン(スマホ)、二位:パソコン、三位:タブレット型端末、四位:テレビ、五位:家庭用ゲーム機、六位:眼球となっております。


 90年代初頭、携帯電話の登場によって、インターネットの使用には増々の小型化が望まれ始めたのです。


 そこから技術は発展し続け、それは電話機からメガネへ→更にはコンタクトレンズへと続き→最終的には眼球に直接マイクロチップを埋め込む事で、インターネットへと接続する事に成功しました。通称で「アイズ(Eyes)ネット」と呼ばれています。


 とは言え、流石に眼球にインターネット機能を仕込む事には、誰しも抵抗があったみたいで、他のネット端末に比べ、普及率は今一伸び悩んでいるのが現状なのです。


 因みに、かく言うこの私は、まだまだ少数派である、その「アイズネット」をいち早く取り入れてフルに活用しています。


 いやはや、それにしても改めてインターネットは素晴らしいと思うのです。


 何よりも、やはり世界中とリンクするという点が、個人的には一番凄い事なのだと感じています。


 しかしながら、光があれば必ず影があるように、物事は必ず二つの側面があります。


 利便さやエンターテインメント面は、インターネットの陽の部分であり、当然陰の部分もある訳です。


 その点に於いて、どうしても世界情勢の暗部から目を背けるわけには参りません。


 そう、ニュース等を見ていても、地球規模に目を向けてみれば、もっと途轍も無い重大な問題が起き続けているのです。


 例えば、長引く経済不況です。それに加えて近年の異常気象や未曽有の大災害が各地で勃発しており、毎年のように出現する新型ウイルスの蔓延でパンデミックも日常茶飯事に。


 それにより人々は更に憎しみ合い、相変わらず各地での紛争は絶え間く起きています。


 そうして、派生する移民問題や人種・民族差別問題、環境汚染、食糧難、エトセトラエトセトラ……。


 そして、その波は我が国も例外ではなく、ここ日本も明らかに大規模な地震や局地的な大雨被害が増えているのです。本当に大厄災や未知のウイルスの前には、所詮人間なぞは、無力である事を実感させられますよ……。


 失業者の数も過去最高記録を更新し、犯罪率も増加して、治安は悪化の一途です。かつて、ここ日本が安全大国ランキングに常々入っていた栄光も過去の話なのです。


 かてて加えて、インターネット上では罵詈雑言と誹謗中傷が蔓延し、人々の心は疑心暗鬼でギスギスしています。


 結局一番恐ろしく、それでいて愚かなのが人間と言う生き物なのだろうと思えてくるのですよ。誠に嘆かわしい限りです。


 しかしながら、私は可能な限り、最後の最後まで人間と言うものを信じたいのです。人の可能性を信じていたいのです。


 私達人間は知性と理性が最も発達している動物です。それだけでなく、私達は言葉を持っています。会話が出来ます。じっくりと話し合いましょう。話せばきっと分かり合えますよ。


 そうすれば、人同士の争いは揉める前に回避も出来ますし、誰だってワールドワイドで仲良くなれる筈なのです。


 それだけでなく、人間は許し合い、助け合う事が出来る生き物ですよね。 


 そうです、ヒトとは……延いては人命とは、この上なく尊きものなのですよ。


 自然災害や自然発生したウイルスならいざ知らず、戦争や環境問題ならば、私達は人間ですもの。世界中の皆で一致団結すれば、必ずや解決へと向かうでしょう。


 ありとあらゆる人々が相和し、どうやったら憎しみ合わず、殺し合わないで済むかを、一人一人の命の重さや限りある資源の大切さを、全世界、いや、宇宙規模で考えてゆこうじゃありませんか。


 私みたいな者なぞ、取るに足らない存在ではありますが、かくの如き発言をSNSを通じて、数年前からずっと発信し続けているのです。


 だれ彼の区別なく、平和な世の中が一番ですよね。世界は一家、八紘一宇(はっこういちう)、人類は皆兄弟の精神で、ピース☆ピース☆ですよ♪


 ……えっと、所で、さっきからちょっとばかりインターネットの調子がおかしいのです。


 ちょいちょいノイズが入ったり、時々目の前が真っ暗になったりとこんな感じなのです。


 はい、原因は重々承知しておりますよ。


 ええ、直接眼球でインターネットの通信が出来るようになってから、メーカーが発表している使用期限は大体5年なのです。


 考えてみれば、前回に眼球交換をしてから、おおよそ5年が経ちますもので、そろそろ買い替えの時期なのですよ。長く「アイズネット」を使い続けていると、眼球に仕込んだチップがショートして、眼球もろとも焼き切れてしまうものですから。


 まあ、その時は多少チクッとする痛み程度なのですが、一番ネックなのはインターネットが使用出来なくなる事です。


 もっと言ってしまいますと、その間は完全に視力が失われてしまいますから、まるっきり何も見えなくなり、日常生活にも支障をきたします。


 ですから、そうなってしまう前に、予めかなり余裕を持って、眼球の取り換えを致しましょうね、と言う事になっております。


 んまあ、この箇所が「アイズネット」が一般に浸透しない、一番の理由であるのは一目瞭然ですね。


 ですが、私みたいな、新し物好きは、インターネット端末機の新機種が出ると、ついつい手を出したくなり、購入してしまう人種なのです。


 そうそう、一応数年前に、「人口眼球」なる代物を試してみた事はあったのですけれど、色々と不具合が生じますし、品質保証期間もたったの3か月なのですよね……。


 ですので、やっぱり天然物の眼球の方が圧倒的に高品質なのですよ。


 さてさて、それでは、「アイズネット」のコールセンターにコネクトいたしまして、眼球入れ換えの手続きをする事といたしましょう。


「……あ、もしもし、すみません、「アイズネット」の寿命が切れそうなので、新規の眼球を送って頂きたいのですけれど……って、何ですって? 近年「アイズネット」の利用ユーザーが増加してきており、完全予約制ですと? よって、健康な眼球提供者 (ドナー)の自然死待ちですので、ご容赦を? ……は? そんな顔も知らぬ赤の他人の生命事情なんぞ知った事かよ! チンタラやっていないで、さっさとぶち殺して目ん玉をもぎ取り、とっとと(おれ)に寄越せやゴラアァァッ!!!!!」

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