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電車ごと異世界転移  作者: 灰色
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次の目標

セブンさんに連れられ、場所を移動する。

その道中に、幾つかの説明を受ける。


師匠は旅に出る前夜、セブンさんを訪ねていた。

「少しの間、旅に出る」

そう言い、去ろうとしたそうだ。

セブンさんは慌てて制止し、理由を問い、時期尚早である、せめて一人ではなくこの街に居る者を連れていくように勧めたそうだ。だが師匠は断った。

現時点で判明している俺達の世界の「真の選民」を簡単に失う訳にはいかない。

そこで、決して他者には教えないと言う約束で、居場所を把握できる腕輪を渡したそうだ。

「腕輪には、移動した経路をこの地図に表示する機能がついています」

そう言いながら部屋に入ると、この島の全体地図と思われるものが机の上に置かれていた。

「各国の情勢、国境が変わった場合等に、自動的に更新される地図です。他にも幾つかの機能があり、その内の一つが腕輪の移動経路を確認するものですね」

何やら操作をすると、表示内容が切り替わる。

「北田先生は、今地図に表示されている線の通りに移動していました。お手本のように、徐々に魔物等が強くなる道を通り、自身の限界を把握しながら進んでいたようですね」

初めて見る島の全体地図に、寄った街や場所がわかるように線が表示されている。この国だけではなく、他の幾つかの国を通過したようだ。

「島のまん中には巨大な穴があり、この国では近付く事さえ禁止しています。なので、近付ける国に移動したと思われますね。そして、近付いた所で腕輪の反応が消えていますね」

確かに、線は穴の直近で切れているようだ。

「腕輪そのものはクロ様謹製で、簡単には壊れません。勝手に外さないように、私がある言葉を発するまで離れないようになっています」

「勝手に手放せないのに移動が止まった。この場所で何かあったと言う事ですか」

「はい。腕輪が破壊される程の何かがあったのか、この場所から移動出来なくなったのか」

前者ならまだましだ。後者が意味するのは、移動できない状態。捕まったのか、死んでしまった可能性を示す。

「師匠とは、他の者に教えないと約束されたそうですが、俺に伝えて良いのですか?」

「腕輪を着けていただいた際、気が変わったのか、一つ条件をつけられましたね。万が一自分に何かがあった場合、弟子がこの世界で生きていけるだけの能力を身に付けたかを私が判断し、可能ならこの件を伝える。不可能なら、誰にも言わず秘密にすると」

教えてくれたと言う事は、能力が認められたと言う事か。

「教えていただき、ありがとうございます。この世界の地図を入手し、経路を書き込んで調査に向かいたいと思いますが、許可いただけますか」

セブンさんにとり、俺の反応は想像の範囲内だろう。

「はい。既に地図は準備してあります。但し、探索に出る方全員、北田先生と同じように腕輪を着けていただきますね」

全員?そうか。俺だけで行くとは考えていないのだろう。

「後、ルーザーも同行させます。この世界の案内人は必要でしょう」

確かに、俺には交渉力やこの世界の知識や常識に乏しい。ひたすら心身を鍛えただけのガキだ。

「ルーザーさんは、この街に必要な方ではないですか?案内役は途中で調達する事も出来ると思いますが」

「北田先生ほどの方に何かあったのかもしれない。それに対応できる可能性があるこの街の人材は彼しかいません。1ヶ月程いただければ、他の人材を準備する事も可能ですが、待てませんよね」

確かに、明日の内に旅準備をし、明後日には出発する事になるだろう。

「では、お言葉に甘え、ルーザーさんと共に出発したいと思います」

そう返答すると、部屋の入り口付近から声がかけられる。

「置いていくなんて、酷いなぁ、相棒。我らが先生の危機を放っておける訳が無いだろ」

「そうですよ。それに約束しましたよね。旅立つ時は声をかけて下さると」

相沢と委員長が居た。

「セブンさんは気付いて居たようだが、お前が気付かないとはな。魔法で隠れて後をつけたとは言え、普段のお前なら気付いた筈だ。そんなに動揺しているお前は珍しいし、放っておける訳が無いだろ」

「わ、私は、怪しい尾行をしている相沢さんを見つけ、その対象が田仲君とセブンさんだったのでつい。べ、別に不純異性行為を疑ったりしていませんが」

確かに、尾行に気付かない程、俺は動揺していたのだろう。だが、セブンさんは気付いて居たとすると。

「セブンさん、俺以外に話すなと師匠には言われたんですよね?」

「ええ、ですから田仲さんにだけお伝えしましたよね。まさか盗み聞きされているとは気付きませんでしたね」

大人は汚い、とでも叫べば良いのだろうか?いや、俺のキャラじゃ無いな。落ち着く為に深呼吸をし、その後ため息をつく。

「相沢、委員長。師匠に何が起きたかわからない、どんな危険が待っているかもしれない旅だが、協力してもらえるか?」

「聞くまでも無いだろ。そんな面白そうな事に置いて行かれてたまるか」

「お供させて下さい。北田先生は私にとっても大切な人です。そ、それと、もう委員長では無いのですから、そろそろ名前で呼んでいただけますか」

そう言われるとそうか、もう委員長や学校など関係の無い異世界なのだ。そうすると、師匠を先生と呼ぶのもおかしい気もするが。

「相沢、望さん。有り難う。明日準備し、明後日の朝には出発したい。それで大丈夫か?」

そこで、セブンさんが口を挟む。

「準備の前に、皆様、明日の朝、もう一度集まって頂けますかね?ルーザーを含め、全員揃った所で、幾つかアイテムや武具をお貸ししますのでね。その上で足りない物は各自に調達していただく事になりますがね」

「色々と手助けいただき、有り難うございます」

「いいえ、皆様の安全を保証するのが私の仕事ですから。北田先生の生死や現状を把握したい気持ちは同じですからね」

「師匠は生きています。そう簡単に死ぬ人ではありません。では明朝、よろしくお願いします」

そして、一先ず解散となる。

皆が退室し、最後に俺が出る。扉が閉まる寸前「生きていてもらわないと、クロ様の計画に大幅な調整が必要になりますし」と、聞こえた。本人は呟いただけで、聞かれているとは思っていないだろう。セブンさんの部屋には、魔法の使用を把握する対策が施されていると聞いた事がある。だが、単に異常な聴覚を持っている人間には関係ない。師匠以外は知らない事だが、俺の唯一の特殊能力と言えるものは聴力である。

矢を避けた時、武器の向いている方向から斜線を予測したのは本当だ。だが、想定以上の数に狙われ、その全てを目で把握出来る訳はない。飛翔音を併用していたのだ。

セブンさんにはお世話になっているが、無条件に信用するのはまずい。そう思い、自分の心の中にだけしまっておくことにした。







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