高2の修学旅行先は異世界でした
一般的になろうと認識されているタイプの物語に挑戦してみます。
ただ、ひねくれものなので、今後どう展開するかは本人にもわかりません。
更新速度も不定期になると思います。
それでも宜しければ、読んで頂けると幸いです。
トンネルを抜けると、そこは異世界だった。
いや、変な事を言っている自覚は充分にある。
名作文学を真似て、心を落ち着けようかと思ったものの、全く落ち着かない。
修学旅行で北海道へスキーに行く予定が、異世界ですよ。
窓の外、上空にはモンスター。遠方の森の先には何か高い塔がそびえている。
高校2年生でも、冬の北海道に雪が無く、空に恐竜のようなものが飛んでいない事は知っている。
平原にレールがあり、横転や急停車もせず電車が停止する。そして、通って来たはずのトンネルは見当たらない。これが異世界でなければ何処に異世界があるのやら。
「おい、透。なに落ち着いてるんだよ。ここ何処だよ」
悪友の声で、俺の逃避は妨げられる。
「落ち着けよ、悟志。異世界だろ。とりあえず、俺達の世界では無い」
騒いでいるのは俺達だけではなく、他の乗客も当然混乱し、騒いでいる。
「相沢君、田仲君、二人は比較的落ち着いていそうね」
担任の北田裕子先生が生徒に声掛けをしながら回っており、ようやく俺達の番が来たようだ。流石は大人。落ち着くのが早い。
「なんだこれは?どう言うことだ!?」
間違い。隣のクラス担任は絶賛パニック中。
流石は我がクラスの担任。普段から問題児の相手をしている分、立ち直りが早い。
「何とか大丈夫です。ラノベ原作アニメで慣れてるから」
俺、田仲透と悪友の相沢悟志は学校から問題児と認識されており、新任の北田裕子先生は学校から押し付けられた被害者。だが、問題児ではなく一人の人間として見てくれる先生には二人とも逆らえない。
「じゃあ、委員長の望さんと協力して、他の乗客を宥めてもらえる。錯乱が酷い人には、多少なら力業も許すから」
「OKボス」
「ボス言うな相沢。後で絞めるわよ」
「了解しました。誠心誠意努めます」
そして、戦闘力でも俺達を上回っている。更に逆らえない。実家が古武術の道場との事で、今では俺にとって師匠でもある。
「わかりました、師匠。委員長は何処に居ますか?」
「後ろの方の車両をお願い。基本的にはうちの教師と学生のはず。私は前の方の車両、他の乗客の相手をするから」
分担が決まったので、早速後部車両に向かう事にする。
「待てよ相棒、放って行くなよ」
「お前が遅いだけだろ。さっさと行くぞ」
「武術家師弟にいじめられる相沢少年の明日はどっちだ」
「寝言は寝て言え。明日があるかどうかわからない状況だぞ、今は。行動は迅速に。委員長も心配だしな」
悪友と駄弁りながら次の車両に移動する。
「委員長が心配?そのまま返すよ。寝言は寝てから。獲物を持たせたら、いや、持たなくても俺より強いのに、心配しろと?俺を心配してくれる運命の人は何処に居るのやら」
委員長は見当たらない。既にこの車両は制圧済みの様だ。何人か通路に転がっているのは、見なかった事にして、避けながら次の車両に向かう。
「ほら、心配ないだろ。既に獲物を持っている様だし」
見なかった事にした連中のうち数名に、棒状のもので殴られたと思われる跡を見つけたのだろう。
無視して、次の車両へと進む。ここで最後のはずだ。
扉を開けると、制圧中の音が聞こえた。
「叶ちゃん、お仕事の進み具合はどう?」
「あら、田仲君と相沢君、こんなところまでどうしたの?あ、相沢君、下の名前で呼ばないでと何回言えばわかってくれるのかしら?次に呼んだら折檻しますよ」
委員長の名前は望叶。自分の名前が好きでないようで、下の名前で呼ぶと受ける折檻はトラウマものらしい。
「師匠に委員長の手伝いをするように指示された。遅かったようだが」
「先生の指示ですか。ありがとうございます。ですが、これで最後です。直ぐ終わりますので、先生に次の指示を伺いに参りましょう」
会話しながらも、手を止めない。
そして相沢は折檻の予告を避けるため、委員長と呼ぶ練習を繰り返している。
「お待たせしました。先生のお手伝いに向かいましょう。相沢君はどうしたんですか?上を向いて何か呟いていますが」
「気にしないでやってくれ。持病のようなもんだ。引っ張ればついてくる」
「持病ですか。お大事に。では、前に向かいましょう」
委員長は女性としての魅力を充分以上に持っているが、天然なのが珠に傷。俺に男性としての魅力があるかは不明。相沢は顔も頭も良いが、色々な意味で残念な奴。
委員長を先頭に、俺と相沢は後ろから付いて行く。
結局、先生と合流出来たのは、先頭車両だった。
「三人とも、怪我はない?見た目は大丈夫そうだけど」
「師匠、約一名、頭と性格に問題はありますが、全員怪我はありません」
「え、頭と性格の悪さを自己宣告するの?お前マゾか?」
「あんた達は……まぁ良いわ。とりあえず、乗客は全員落ち着いたのね。そうなると、次は外の確認をしたい所だけど」
その時、電車の外から声が聞こえた。
読んで頂き、有難うございます。
先ずは、異世界に転移した学生側の主要キャラ紹介までです。
次回は、異世界のキャラが転移理由を説明する予定です。