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後妻のお義母様とお義姉様が屋敷に来て、私は何故か幸せになりました。

作者: 浅村鈴

私は両親に嫌われていた。

父に母が一目惚れして、父には恋人が居たけど、二人の仲を引き裂き、父の実家の借金を返済する事で、無理やり結婚させた。

貧乏貴族の次男だった父は顔と声だけは良かった。

母は父と舞踏会で初めて会った時、この人と結婚すると決めたらしい。

相手の気持ちなど関係無しに。

欲しいものは手にしないと気に食わない人だったから。

結婚できなければ死ぬと愛する一人娘に言われ、祖父は父母を結婚させた。

無理やり結婚させられ、高飛車な妻を愛する事など出来るはずもなく、私が産まれた頃には別居していた。

別居しても、2人は別れなかった。

父はお金に困らない生活を捨てられなくて。

母はどれだけ冷たくされても、手に入れた愛する父を他の人に取られたくなくて、手放せなかった。


「お前が産まれなければ、あの人はずっとそばにいてくれたのに!」


何度責められただろう。

私だって愛されないなら、孤独に育つなら産まれたくなどなかった。

子供を作る行為をしたのは二人だろう?産んだのは母だろう?

出ていったのは父だろう?

どうして私を責めるの?

産まれた意味など、生きている意味などあるの?

寂しい。苦しい。お腹空いた。寒い。

父が帰ってこない寂しさゆえに、お酒に逃げた母は私が15歳の時亡くなった。

祖父母は私が3歳の時に事故で亡くなっている。

父は養子だったから、母亡き後、爵位は私が継ぐ事になった。

そんな時父が屋敷に帰ってきた。

新しい母と姉を連れて。

新しい母は昔母に別れさせられた恋人らしい。

本当は別れず、毎月母から貰っていた夫手当で囲っていたそうだ。

怖い。

またあの辛い日々が続くのだろうか?


父は私を見てもムスッとしている。

母の様に私を憎んでいるんだろうな…。

新しい母は私をじっと見つめている。

見つめ終わると父と執事長と侍女長を呼び応接間に消えていった。

残されたのは私と義姉。


「貴方今いくつ?私は16歳よ、シャロンと言うの」


お父様譲りの見事な金髪とお義母様譲りの碧の瞳の美少女が話しかけてきた。

私は母に似てしまって、平凡な黒髪で茶色の瞳。

生前の母はいつもあの人に似ていたら良かったのにと言っていた。



「あっ…、15歳です。アメリアでしゅ…!?」


噛んでしまった。恥ずかしい。


シャロンは真っ赤になった私の手を握り


「私、将来美容師になりたいの。

良かったらシャンプーさせてくれない?

練習させてくれたら嬉しいのだけど」


「は、はい。私で良ければ…」


「ありがとう!」


お義姉様の部屋の用意がまだらしく、私の部屋に行きシャロンお義姉様がシャンプーと頭皮マッサージしてくれている。


「痒いところない?

結構凝ってるわよ。

リラックスしてね」


マッサージが気持ちよくてうつらうつら眠気が襲っていた。


目が覚めるとブローが終わるところだった。


「ご、ごめんなさい!あまりにも気持ちよくて…」


「気持ち良かったなら嬉しいわ。

肌がカサついてるから下地だけ手入れさせてね。

私、女の子のお手入れも趣味なの。

それにね、妹が欲しかったの!

願いが叶って嬉しいの」


天使の微笑みだ。


「ありがとうございます…。

私もお姉様が出来て嬉しいです」


鏡の中の自分の姿は別人に思えた。

髪は艶々していて、頭皮マッサージで顔色も血行が良くなり、カサカサの肌もプルプルしていた


「お嬢様方、お食事の時間です」


侍女が呼びに来てくれた。


「直ぐ行きます」


「アメリアの服を選んであげるわね」


そう言ってクローゼットを開けると、アメリアの服はグレーの似たようなデザインの服が3着のみだった。

着ている服を含めて4着。

公爵家の正妻の娘にはあり得ない状況。

シャロンは黙ってクローゼットを閉めて、アメリアに振り向いた。


「食堂に行かなきゃいけないから、時間もないし、雰囲気だけ変えよう」



自身の髪を結っていた薄ピンクのリボンを外し、アメリアの首元に付けた。

グレーの服が少し華やかになった。


「素敵よ。

アメリア。

食堂に案内してくれる?」


「はい!」


久々に笑った気がした


「遅かったわね。

頂きましょう」


運ばれて来た料理は、いつも出ていたワンプレートではなく、スープから一皿ずつ食べたら出てくるコース料理だった。

初めて見る料理。


私のは少なめ。

でも普段食べてない私にはちょうど良い量で助かった。

残すなんて勿体無いし、怖くて出来ない。


「アメリア、好き嫌いしないで、ゆっくり噛んで食べなさいね」


「は、はい」


お義母様は私の食べるのを見ている。

やっぱり嫌われてるのかな?

正妻の娘なんて嫌だよね?


アメリアはどうして良いか分からなかった。


夕食は家族全員で摂るのがお義母様の希望だったから四人いつも揃っていたけど、お義母様はいつも私を見ていた。



♢♢♢♢♢


お父様達が屋敷に戻って来てから3か月が過ぎようとしていた。

気がつくと食事の量も徐々に増えていた。

私自身気が付かないくらいに少しずつ増やされていたから、同時に胃も大きくなったのか、食べ切れていた。

残すのは勿体無くて出来ないから…。


部屋の小物も服も増えていた。

カーテンも絨毯も、シャロンに誘われてついて行った買い物から帰ると、明るい色合いの綺麗な物に変わっていた。


お父様の指示かしら?




♢♢♢♢♢


その日、父は何故かイライラしていた。

私の顔を見て憎い母を思い出したのか、私を罵ってきた。


「なんでお前は可愛げがないんだ!

俺を見下すのはやめろ!!

母親にそっくりだな!!!

胸糞悪い!」


バシィッ!


父から思いっきり頬を殴られた。

その勢いで背中をソファにぶつけてしまって立ち上がれない。

泣きたくなかったが涙が溢れて来た。

泣きたくなくて、手を強く握った。


バン!!


父が私の腕を掴もうとした瞬間、応接間のドアが思いっきり開いた。

ドアを開けた人物は父に近づき、父の頬を殴っていた!


「貴方!娘を殴るなんて!

殴られたら痛いでしょう!?

アメリアは貴方に殴られて何倍も痛さと恐怖があるのよ!」


お義母様がお父様を殴り、怒ってくれている。

そして、倒れた私を立たせてくれたのはシャロンお義姉様だった。


「アメリア大丈夫?

お父様!最低ね!」


シャロンは父を睨みつけた。


「貴方はご自身が顔が良いだけの役立たずだって、わかっているでしょう?

それなのに娘に手をあげるなんて…。

私が貴方と一緒に居たのは、貴方が何も出来なくても、私を一途に愛してくれたから」



父は呆気にとられて呆然と立ちすくんでいた。


「でも私達が生きてこられたのは、貴方が貰っていた夫手当のお金ですよ!

つまりはアメリアのおかげでしょう?

私達が満足に食べていた時、この子はろくに食事を貰えていなかった…。

私達があったかい服を着ていた時、アメリアは寒さに震えていた。

その事を分かっているの?」


お義母様は怒りながら涙を流している。


「屋敷に来た日、アメリアは痩せ細って顔色は悪かったわ…。

だから執事長や侍女長に、アメリアがどういう環境で育ったのか、確認を取ったのよ」


流れる涙をドレスの袖口で拭い、


「私達の幸せはアメリアの不幸の上に存在していたのよ!

それを分かっていながら、アメリアを大事にしないなんて!

自分の娘を愛さないなんて!

貴方には愛想が尽きたわ!

離婚します!」


お義母様の言葉と剣幕にお父様は真っ青だった。


「ま、待ってくれ!?

俺が悪かった!!

許してくれ!!」


父は義母に首を垂れて謝った。


「謝る相手が違うんじゃないかしら?」


お義母様はお父様を睨みつけた。

その形相にお父様は私に頭を下げた。


「アメリア、すまん!

俺が悪かった!

アメリアは俺の娘だ、これからは大事にする!」


お父様は私の手を取り平謝りしていた。

その様子を見て。


「次は無いわよ…」


ドスの効いた声で一言。


「アメリアを大事にしなかったら、私もお父様とは縁を切りますから…」


お義姉様も忠告してくれた。


「…はい」


父は二人の気迫に、小さくなっていた。


屋敷に来た日お義母様は私を見て、余りの細さにネグレクトがあったのでは無いかと察し、執事長や侍女長に話を聞き、私に対しての態度を変える事、料理長には栄養価を考えた少量の消化の良いコース料理を出すように伝えた。

日が経つにつれ量も増やすようにと指示して。

おかげで少しずつ体に栄養が周り、お肉も付いてきた。

部屋に入ったシャロンからアメリアの部屋の暗さ、物の少なさ、服がグレーの似た服が4枚だけしかない事も報告を受けていた。

嫡子のアメリアの待遇が悪すぎる事に腹立ち、必要な物を増やし、気分転換になる様に、カーテンや絨毯、壁紙も明るく可愛い物に変えてくれた。

憎まれてもおかしく無いのに、それなのにお義母様は私の為に動いてくれた。

お父様にも怒ってくれた。

自分の為に、と思ったら、急に涙と声が出ていた。


「うわぁーん!うわあぁぁん!!」


小さな子供の様に大声で泣き出した。

涙も声も止まらなかった。

側にいたシャロンお義姉様が驚いている。お義母様も。お父様も。

小さな頃から泣けば鬱陶しがられるだけだったから、泣く事は少なくなっていた。

ましてや声を出して泣くなんて…。

辛いからでも苦しいからでも無い。

初めて自分を思ってくれる人の存在がある事が嬉しくて、声も涙も止まらなかった。

そんな私をシャロンお姉様もお義母様も抱きしめて、背中を撫でてくれた。

泣き止むまで側にいてくれた。


私に家族が出来た。

私を愛してくれる家族が。

あったかい家族。

お話に出てくる王子様なんかいなくても、私は幸せになった。

お義母様とお姉様のおかげで。

お義母様は今、私の婿養子になる人を吟味してくれている。

もちろん私の意思を尊重しながら。

お義姉様は学園を卒業したら美容サロンを経営する為に、勉強しながら、動いている。

学園は人脈作りの宝庫らしい。

お義姉様らしくて、私も応援してる。

お父様は、私に関心が無かった為、辛い思いをさせたのだと、お義母様が言い聞かせ、それから私をよく見る様になり、大事にしてくれる様になった。

私は将来偉大なる、思いやりのある、お義母様の様な母になりたいと思っている。

「私は幸せだ!!!」


沢山ある作品の中から、読んで頂いてありがとうございます!

とても嬉しいです!

お手数ですが、良かったら、星で評価頂けたら今後の活力、パワーになりますので、よろしくお願い致します。


私の作品はラストはハッピーエンドが多いです。

どんな主人公もやっぱり幸せになって欲しいので…。

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― 新着の感想 ―
環境に耐えるために感情を押し殺してたんだろうなあ 小さい子が感情溢れさせるところに涙が・・・ このお話とても好きで何回か読み返してるんですが、その度にホロリと来てます。
[一言] なんでたかが種馬の入り婿如きが好き勝手できるんだよ 正当な嫡子は主人公だろうが まぁ、けどこの手の話だとなぜかたかが入り婿如きが好き勝手出来るから無駄か 実際にやろうとしたら従来の家臣に入り…
2021/09/05 10:07 退会済み
管理
[一言] きっと平手打ちなのでしょうが、なぜかグーパンで父を殴るお義母様が目に浮かびました キャーかっこいー! 能無しイケメンのお父様が頬をおさえて目を見開いている姿に「うんうん」と読んでてニッコリ …
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