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コトワリ(言割、事割、理、断り)それはコトダマのファンタジー  作者: 泉 佑磨
第一章 コトバ、それがすべての始まり
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プロローグ コトワリ

連続投稿第1弾です。話の区切りのいいところまで連続で投稿し続けます。


「知ってる? 言葉は時として見えない凶器になることに」

 女性特有の柔らかい声。

 長いまつ毛の束から開かれた大きな瞳孔が、あどけなさを残した二人の男子中学生を見据えている。


「何を言ってやがる?」

 二人の男子中学生は自分達より背丈の低い女を見下ろしながら、言った。

 パーマのかかったショートボブに、雪のような白い肌。二人の男子と一回りも年は離れているにも関わらず、それを感じさせないほどの童顔。

 その愛らしい顔立ちのせいか、年頃の男子二人はけん制しきれない。


「あなた達はその見えない凶器でこの子を大きく傷つけた」

 一方の女は自分の背後にいる少年に守りながら毅然とした態度で目の前の二人の男子中学生と対峙する。

 女の背後にいる少年。男子中学生と同い年。ボロボロのシャツに、泥まみれになった顔で呆然としていた。


「ごちゃごちゃうるせえな。俺らが何をしたって言うんだ!」

 二人の男子中学生のうち、目つきの悪い方が女に向かって、吠えた。

「見えないからこそ、どれほどの傷になるのかも分からない。見えないからこそ、どこまででも傷けられる。だから、私は包丁とか、銃とかより、言葉の方が怖い時があるの」


「あまり調子こいたこと、言っていると、ぶっ殺すぞ!」

 こんな華奢な女にひるむはずが無い。むしろ何かあれば、こちらから潰してやる。

 そう言わんばかりの自信に満ちあふれた声で、目つきの悪い男子が女に言い放った。


「殺す…… ねえ」

 女は噛みしめるように、言葉を繰り返した。その口元はどこか笑っているようにも見える。

「軽々しく、そういう言葉を使うものではないよ」

 女がそう口にした途端、少年達の背筋に寒気が走った。女の雰囲気が変わったのだ。

 それはまるで、幾度の戦場を超えてきた兵士のような、重苦しいオーラ。

 思わず、少年達は後ろに下がろうとするのだが、震えて、足が動かない。

「これは一体……」

 たじろぐ少年達を気にも留めず、女は目つきの悪い少年の耳元でポソポソと何かを呟いた。


 コトダマ、コトワリ、イシキセカイ、コトワザ。


 同時に、目つきの悪い少年の視界が暗転した。少年の脳裏に無数の景色が走馬燈のように一瞬のうちに過ぎていく。

 

 無数の景色の中で、なぜか少年は斧を持っていた。

 

 そして、目の前には袴姿の青年が刀を握っている。


 そんな青年に向けて少年は斧を振り下ろそうとしている。青年はものともせず少年に接近してきた。

 そこから景色が飛んだ。なぜか血まみれになっている自分の身体に驚いている少年。そこに、青年の手がこちらに向かっている。得体の知れない恐怖に少年は阿鼻叫喚。そこで、少年の意識が途切れた。


「おい、何があったんだ! おい!」

 突如として、目つきの悪い少年が卒倒したことに、リーダー格の少年は困惑した。


「てめえは何者だ!?」

 震える声を押し殺しながら、男子中学生は問いかけた。


 女は微笑み、はっきりと口を動かしてこう言うのだ。

 

「コトワリ。言を割り、事を割る者。分かりやすく言えば、言葉の力、コトダマによって、この世の事象を調整する者よ」


続きをすぐに連続投稿します。よろしくお願いします。

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