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 その後、話し合いに参加していた幹部たちも、遠真の逗留に賛成してくれた。


「さて、遠真の逗留の話はここまでにして、ザラン一味のことと、遠真の知りたいことについて話すか。遠真、ザラン一味というのは、このエリアの隣のエリアを支配している一味でな。」


「ちょい待ち。まずは、そのエリアについて教えてもらいたい。」


 サラナが説明を始めるが、遠真が話をさえぎってしまう。


「ふむ、遠真はエリアのことを知らないのか。わかった、ではそれから説明するとしよう。」


 サラナは、エリアのことについて説明を始めた。その内容をまとめると、

・この世界は、地上面が均等な広さで区切られている。

・その境目は視覚的にはわからない。

・そのエリアに10日の間、1人もしくは、1グループでほかのグループがいない状態を維持すると、そのエリアの管理権利を得る。

・管理権限を得た者のステータスには、管理エリアの項目が追加される。

・エリアの種類により、1日に1度、資源や特典が与えられる。

・管理権限を得たものは、隣接するエリアがフリーであれば、一定の条件を満たせば権限を得ることができる。


「と、まぁ、こんな感じか。何か質問はあるか?」


 サラナが、一通りの説明をして言葉を切った。


「そうだな。管理者のいるエリアにほかのグループが入ったらどうなるんだ?」


「ああ、それなら、そのエリアの管理者に、他勢力が侵入しました。って報告が来るんだよ。お前を見つけた時も、その報告を聞いてきたんだ。ちなみに、その勢力の数はわからないが、方向はわかるようになっている。」


「なるほどな。だから、俺を見つけられたと。で、しばらくそのグループが滞在したらどうなるんだ?」


「ん、特になにもないぞ。その勢力がこのエリア内で私を倒すか殺すかすると、エリアの権利がそいつに移る。このエリアに関してなら、所属者全員となっているがな。」


「つまり、あんたが譲渡するといえば、その権利を得ることができるということだな。それは、あんたの意思にそぐわない状況でも有効なのか?」


「その状況っていうのは?」


 遠真の言葉に、サラナは首をかしげている。


「例えば、あんたの仲間を人質にして、権利を譲れと脅迫されたり、あんたを痛めつけて無理やり言わせたりしたら、その権利はどうなるんだ?」


 と、遠真は意地悪な顔をしながら訪ねる。


「...まったく、そんなひねくれた考えを思いつくとは。だが、その考えは辺りだ。もちろん、有効になり、権利はその者に移動する。前者はよくあることだが、後者はほとんどないな。その前に殺してしまえばいいだけだし。」


「なるほどな。ありがとう。次はザラン一味のことについて説明を頼む。」


「ようやく、元の話に戻ってこれたな。ザラン一味は、このエリアの隣のエリアを支配する一味でな。勢力的に、こちらとは数倍の差がある。また、エリアもうちと同じ広さを5個支配しているから、食料や資源も、こちらに比べて豊富なんだ。」


「へぇ、でも、それだけの差があるなら、どうして奴らはこっちを制圧できないんだ?それに、俺が今日倒した奴らも、言っちゃなんだが雑魚かったぞ?」


 遠真は、夕方のことを思い出す。いかにも小悪党というのがしっくりくる連中だった。


「ああ、確かにあいつらの一味は、こちらの勢力よりも大きいが、個々の実力なら大したことはないんだ。ザランと、あと数人の幹部以外は正直雑魚さ。それに、こちらより勢力が大きい分、ほかの勢力とのいさかいも多いらしく、案外こっちにちょっかいをかけてくることがないんだよ。」


 サラナが苦笑いしながら答える。


(そう考えると、俺がこのエリアの戦力を底上げする余裕はありそうだな。なんせ、こちとら、歩くだけでいくらでも物を出せるんだからな。)


 遠真は『代償召喚』の召喚リストを思い出す。WP換算なら、低ポイントでいくらでも有用なアイテムを交換できるので、多少の戦力差ならひっくり返すこともできるだろう。


「なぁ、あんたらはどうしたいんだ?このまま、このエリアを守りつつ、平穏に暮らしていければいいのか?それとも、陣地を広げ、もっと豊かな生活をしたいと思うのか?」


 遠真は、彼女らに問う。それによって、彼のすることが変わるからだ。だが、サラナから帰ってきた言葉は意外なものだった。


「いや、私たちの目標は、隣のザラン一味をつぶすことだ。」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「まず最初に説明しておくべきだったな。お前のスキルに驚いて忘れていた。」


 すまん、とサラナは一言詫びを入れると、説明を始めた。


「このエリアに住んでいる者たちは、全員が孤児、娼婦、元奴隷といった、社会的弱者なんだ。それらが、何らかの理由で孤独になり、寄り添ってできたのが、このエリアというわけだ。同じような境遇なわけか、案外気が合ってな。ここで暮らし始めたんだ。

 だが、それも長くは続かない。隣のエリアを支配しているザランという男は、もともとはどこかの騎士団の部隊長だったらしいんだがな。悪行を行ったことで僻地に飛ばされることとなったたらしい。ここまでならよかったのだがな。」


 サラナは、ここで言葉を切る。ほかの女性たちも顔を曇らせる。


「?いったい何があったんだ?」


 遠真は、けげんな顔をする。サラナは深呼吸を一つすると、再び話し始めた。


「奴は、そのあたりにいるチンピラたちをまとめ上げ、一つの勢力を作り出した。しかも、その勢力を使い、周囲のエリアに手を出し、食料、資材、そして人までも奪うようになっていったんだ。その侵攻により、周囲のエリアを奪い、今の勢力を築き上げた。しかし、それをよく思わないその周囲の勢力とのいさかいも起きるようになってからは、それほど大きく侵攻することはなくなったがな。」


「なるほどな。なら、このエリアの勢力が、隣の勢力をつぶしても全く問題はないんだな?」


 サラナの話を聞いて、遠真はそのように質問した。それを聞いたサラナは驚きの表情で、


「確かに問題はないが、そんなことができるのか?私たちは多少の武術の心得はあるが、勢力が違いすぎるだろう。それに、なんだかんだで、このエリアの勢力が増大したら、ほかの勢力も無視はしないだろう。」


「ザランの詳細がわからないから確かなことは言えないが、少なくとも、下っ端だけなら、どんなに数がいても、俺とあんたたちなら問題ない。なんせ、俺は歩くだけでどんなものでも召喚できるんだからな。俺はあんたたちに恩がある。右も左もわからない男の俺を、見捨てることなくここまで世話を焼いてもらったんだしな。それに、ほかの勢力が目をつけてきても、それを許さないほどの武力があればいいんだろ?なら、問題ない。俺が何とかできる。」


「確かに、私たちにとっても魅力的な話だが、本当にいいのか?正直、さっき出してくれたパンだけでも、今回の礼には多いと思うのに。お前にとって、ザランをつぶすことがどんな利益につながるんだ?」


 サラナは不思議なものを見るように言ってくる。遠真は少し考えてから、


「まぁ、いきなり襲い掛かってくるような奴の親玉より、見ず知らずの俺でも、しっかりと助けてくれるような人の味方になりたいと思うのは当然だろうしな。それが、きれいな女性たちならなおさらな。」


 と、サラナたちを見渡しながら答える。それに対して、サラナと幹部たちは、顔を赤くすることで返答したのだった。



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