初戦闘
黒パンを召喚してから、遠真は召喚リストを読んでいた。召喚リストは、食品や衣服といった生活必需品から、武器や防具、はてはスキルまで、実に様々だった。
「俺のステータスが高いか低いかは分からないけど、戦闘系のスキルが無いのがネックだな。残りWPは9990だし、何かないかな。」
遠真はスキルや武器のリストを眺めていく。そこで彼はふと思い出した。
「あれ、そういえば、最初のメッセージで、アイテムボックスにアイテムが入ってるみたいなこと言ってたな。」
遠真は「アイテムボックス」と唱える。すると、目の前に黒い靄が現れ、その横に中に何が入っているかが表示された。
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アイアンソード
鉄で作られた片手剣。駆け出しの探索者や騎士が使用する安価な剣。
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ラウンドシールド
半球の形に作られた安価な盾。駆け出しの探索者や騎士がよく使用する。
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チュニック
一般的なシャツ。
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コットンポーズ
綿で作られたズボン。
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金貨 ×20
この世界の共通通貨。1枚で10000ルクスの価値がある。
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となっていた。
「ん~、よくあるゲームの初期装備って感じだな。てか、このルクスって単位、どれくらいの価値の物なのかもわかんねぇ。でもま、とりあえず着替えておくか。」
遠真は、黒い靄に手を突っ込み、お金以外を取り出そうと念じた。すると、それぞれのアイテムが遠真の手に現れる。アイアンソードは重すぎて落としてしまったが。
「うわ!?剣重っ!!こんなん振れんのかよ?て、そうか。ポイント使ってステータスを強化すればいいのか。それともスキルを獲得するべきなのかな?」
遠真のスキル、代償召喚には、スキルを召喚することで、自分もしくは、触れている対象にスキルを付与することができる効果があった。これは先ほど、召喚可能リストを見ていて気付いたことだったが。
「とりあえず、剣を持ってるから剣術スキルとかは必須だよな。あとは...」
遠真は、召喚可能なスキルを確認していく。結果、修得したスキルは以下のようになった。
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剣術(1/20)
剣の扱いに補正がかかる。また、STを消費し、武技を使うことができる。武技は、熟練度を上げることで習得する。
熟練度1 一閃突
100P
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気配察知(1/30)
周囲の気配を感じ取れる。熟練度が上がると察知できる範囲が広がる。
熟練度1 半径20メートル
500P
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薬品生成(1/30)
素材とMPを消費して薬品を作成できる。熟練度が上がると、生成する薬品の品質が上がり、消費する素材が減少する。
200P
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火魔法(1/20)
火属性の魔法を使用できる初級スキル。熟練度が上がると魔法の呪文を習得する。
熟練度1 フレア
200P
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水魔法(1/20)
水属性の魔法を使用できる初級スキル。熟練度が上がると魔法の呪文を習得する。
熟練度1 アクア
200P
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風魔法(1/20)
風属性の魔法を使用できる初級スキル。熟練度が上がると魔法の呪文を習得する。
熟練度1 ウインド
200P
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土魔法(1/20)
土属性の魔法を使用できる初級スキル。熟練度が上がると魔法の呪文を習得する。
熟練度1 サンド
200P
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付与魔法(1/30)
自身の所有するスキル、武技、魔法を対象に付与できる。熟練度が上がると、付与できる対象が増え、消費するMPが減る。
1000P
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言語理解(人族)
人間、エルフ、ドワーフ、獣人、竜神、魔人、亜人種の使用する言語を理解し、会話、読み書きが可能になる。
100P
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精神負荷耐性(5/30)
自身の精神に対する耐性を上昇させる。熟練度が上がると、より精神負荷に耐えることができる。
1500P
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「とまぁ、こんなもんかな。最初から強すぎるのもあれだし、今後何必要になるかもわからないしな。」
遠真は、獲得したスキルを確認し、鑑定スキルを解除した。もともと来ていた学生服などをアイテムボックスに収納し、アイアンソード、ラウンドシールドを装備し、移動する準備を整えた。
「さて、とりあえず移動しないと。こういう時に定番は、川を探すことだよな。うまいこと見つかるといいが。」
遠真はそう言って、草原を歩き始めた。
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「しっかし、見渡す限りの草原、何にも見えやしない。」
目の前に広がる草原をずっと歩き続けているが、周囲には山や森といった目印になるものがなく、とりあえず太陽の方向に歩いているのだが。
「てか、太陽って動いてるよな。となると、少しずつ方向がずれてるのかな。といってもどうしようもないしな。目印ないし。」
かれこれ2時間、多少の休憩は挟んだものの、一人でずっと歩き続けている彼は、自然と独り言が増えていた。返してくれる声は聞こえないのだが。
「ん?」
さらに1時間歩き続け、日が傾いてきた頃。ようやく遠真は初めての人影が二つあるのを発見した。が、
「おいおい、こんなところで不用心だな、兄ちゃん。」
とても友好的に話せるような相手ではなかった。下卑な笑みを浮かべて近寄ってくるその者たちは、薄汚れた服にスキンヘッド、ナイフをちらつかせてこちらを脅しているようだった。
「ま、俺たちも鬼じゃねぇ。下着以外のもんを置いていけば命だけは見逃してやるよ。ハハハハ!」
男たちは、遠真を無害な相手と思い無防備に近づいてくる。
「なぁ、あんたらは俺を害するってことでいいのか?」
遠真は、極めて冷静に聞く。その態度が気に入らなかったのか、男たちは語気を荒げて、
「へっ、生意気な小僧だな。むかついたぜ、殺してやるよ。」
と、ナイフを振り上げて遠真に襲い掛かる。が、遠真は反射的にそれを避けると、剣を抜き反撃する。男は無防備な背中を切り付けられ、その命に幕を下ろした。
「へぇ、これが精神負荷耐性の力か。人を殺しても特に嫌悪感も罪悪感もない。あんたらが悪人だからってのもあるんだろうけど。さて、あんたはどうすんだ?」
遠間は、剣の切っ先をもう一人の男に向けると、男は恐れをなして逃げていった。
「剣術スキルもすげぇな。剣なんて扱ったことないのに、こんなに違和感なく使えるようになるとはね。」
遠真は剣を収め、殺した男の死体をあさる。男の持っていたナイフと所持していたお金をとると、その場を後にした。
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「しかし、やっとこさ出会ったのが盗賊とは。俺も運がねぇな。」
遠真は、盗賊から奪ったお金とナイフをアイテムボックスにしまうと、再び歩き出した。が、すぐに別の人影が現れた。
「そこの男!ここになんの用だ?」
現れたのは、軽鎧を装備した女性5人ほどだった。どの女性も、遠真を警戒しているのか、剣を構えて彼をにらんでいる。
「今度は女戦士か。ったく、用も何も、人里探してるだけだよ。今日寝る場所もねぇんだからさ。」
遠真は、いい加減疲れていたようで、ぶっきらぼうに答えた。