閉塞感
「修学旅行の禁止だって」
初等及び中等の修学旅行を毎年いかせていたが国の方針として禁止と言われてしまう、
「中止ですか」
そう言われて楽しみにしていることを今さらと思い、
「空軍管轄の学校なのだから軍事教練として、遠足いや行軍訓練とすれば」
狡猾だが事実は事実、教練として去年と変わらない日程で指示した。
「正月の大阪での石炭不足の火力発電所の停止」
「絹やネクタイや指輪禁止」
「ダンスも」
「歌劇団も」
2600年の祝いがあり赤飯や酒を下賜されたがそれが終わると「贅沢は敵だ」と言う標語と共に次々と禁止が言い渡され戦争への閉塞感がただよい、東京でも食堂での白米禁止や配給制の米の玄米率があがり厚木基地にこもろうかと思わせる状況に、
「小西、どう思う」
久しぶりに顔を出した小西に愚痴を言うと笑いながら、
「御廓少将、閣下と呼ばれるものが愚痴とはまあ空軍らしくてよろしいが」
従兵が入れてくれた紅茶を飲みながら、
「江戸時代にも倹約令等とありましたが意味はないかと、流通が滞り生産性も落ちましょう」
「予算は海軍が新造艦で国家予算のほとんどを使い果たすようだし」
予算についての書類が来たが空軍には雀の涙で目の前の小西が稼いでおりヨーロッパでのドイツ現地での急な補給をドイツの会社として受け、購入していたフランスの会社等を使い食い込んでいく、アメリカでは同じように買い叩いた会社や設備を製造を再開と売り切る準備、オランダの南アジアの会社からゴムなどを日本からは銅をドイツに売ったりと表には出ずに商才を発揮している。
「日本での商売は旨味がないと言うか需要が少ないですからな、一番は大量生産ができない手工業を未だにですからな」
具体的には小銃も一丁一丁違うしボルトとナットも違っており空軍の兵器工場では小西が初期の段階でその様にして少女達の負担を減らすようにしていた。
「陸軍も海軍もおえらさんが見ても規格と言うのがわからない、大量消費に結び付かないと言うことです」
「我々は自動小銃だが陸軍は未だに38歩兵銃、弾の生産が追い付かないからだしな」
例え生産できてもモータリーゼーションでなく馬が輸送の主役である陸軍にそれを戦線に送り届ける能力はなく、精神論で何とかと言うのが前の戦いより叫ばれており将官や佐官は柔軟性を失いつつあり陸軍航空隊も補給は少なく稼働率も低く、搭乗員は昼夜問わず戦い続けており戦闘以外の損耗も増えていた。
「今後戦争が始まれば石油やゴム等は長引けば不足するでしょう、そして今ドイツが行っている輸送船を狙った通商破壊は報告書の通り商会の子会社船籍が数隻沈められておりこれをアメリカが行えば日本も相応の被害が出ると考えます」
開戦時からドイツがヨーロッパとアメリカの航路上で潜水艦を使って無差別に攻撃をしてすでに数百の船の被害が出ていると、
「海軍にもその件は話したが潜水艦は艦隊決戦の先兵でそのような卑怯な使用はあるわけ無いと言われたわ」
海軍も相変わらずの巨砲主義が主流で航空機や潜水艦は卑怯だと会議で散々に言われていた。
「対潜水艦用の装備があれば手を回して輸入します」
いくつか理論的な物はイギリスで研究中で、対ドイツ用に急ぎ実用化を行っておりそれを小西が裏の商売で手に入れると言うことになった。
「イギリスの基礎技術はすごいですぞ、レーダー等もドイツが先行していましたが開発も後一歩だそうです。それとアンテナですが日本の八木アンテナと日本無線がマグネトロンがあり海軍は見切りをつけましたが空軍の名で独占の契約を終えており実用はまだ先になりますが開戦には間に合わせたいと思います」
ディスプレイ等の技術が揃わず結局戦争中盤になってしまったのだが、
「色々頼む小西」
そう言って話を終えた。
「来月開けておいてください、修学旅行いえ軍事教練で5日間軽井沢で行います」
「汽車で移動、現地には6輪トラックが装備を満載して予定通り到着予定です」
200名の輸送のため10台のトラックが現地に向かうことになり草津で宿泊と白根山への登山等も計画されていた。
「毎年だからなれたものか、厚木から新宿経由で上野から軽井沢か」
「車両は大野大尉が訓練をかねて富士山の麓から山梨そして佐久から軽井沢に向かいます」
そう言っていると成葉が入室してきて、
「今年こそは私も参加希望します」
3期生までは引率として修学旅行に慰労目的で参加しており私と成葉は忙しくて参加は見送っていたが私が行くと聞いたらしく希望してくる。
「現場のトップいや指揮官が二人とも参加するのは何かあったときの事を考えれば不味い」
そう言うと小西が、
「上海の作戦も一段落ついてますし、次の戦争が始まればそうも言ってられないのでこの際よろしいのでは、私も参加予定ですし」
そう助け船を出してくれひきつった成葉は赤みを帯びて頷き私もそれならばと同意した。
「そう言えば小西は初回に色々手配をしてくれたのだな」
嬉しそうに敬礼して退出していく成葉を横で見ながら笑顔の小西は頷き、
「今回は移動は軍装と言うことですが、それ以外はいつもと変わらぬでよろしいですか」
何かあると思いながらも、
「全て任せる何時ものように、外部から言われるのは私の役目だがな」
そう言って当日を迎えた。
「第101整備中隊1小隊乗車」
「第51飛行兵中隊1小隊乗車」
軍事教練と言うことで新たに部隊をつくり名目上給料と住居を与えられていたのを実質兵として組み入れておりトラックで先ずは小田急線の厚木へ向かい臨時列車で新宿へ、
「ご苦労様です」
駅長以下職員が出迎えてくれ普段はこれ程の乗降客は初めてだと喜びながら到着した列車に乗せてもらい送り出してくれる。
「それでは輸送中隊は軽井沢に向かいます」
トラックはそのまま2名乗車で向かい一度別れた。
「すごい、どんどん景色が流れていく」
初めて汽車に乗った少女たちは声をあげて喜び普段基地では見せない顔を見せてくれる。
「よろしいのですか」
成葉が聞いてくるのを、
「駅に着いての移動中はだが、誰も見てないし汽車の中は問題あるまい」
真面目な成葉ははらはらしているが他の引率は学生時代に自分達もしていたことなので気にする様子はなかった。
「降車整列」
新宿で降りてこの日のために行軍の練習をした少女達が構内を進み国鉄で上野へ向かう、
「上野からは貸しきりだからな」
それまではお行儀よく座っており終点の上野で降りると手配していた臨時の汽車に乗ろうとしたところ、
「何だこれは修学旅行は禁止と言うお達しが出ているのにしかも二等兵の軍装でけしからん」
陸軍の佐官だろうかくってかかってきており面倒だと思いながら向かおうとすると、
「陸軍が、空軍の事に何を意見があるのかな」
「何を、何だ小娘」
この声はと思ってあわてて人混みを掻き分けると、
「御廓少将ご苦労」
そこには作業用の軍装を何故か身に付けた密宮照仁中将閣下がおり私を手招きしている。
「御廓少将だ、空軍の事に陸軍が何の様だ、不敬になる前に去れ」
目の前にいる御方が皇室のとは知らぬだろうが、
「何をって何をする」
口答えする中佐の首に腕を回して皆に背を向けながら銃を抜き、
「あの御方を知らぬとは不敬にもはなはだしい、黙って去れ、この事を誰かに漏らせば銃殺となるぞ」
最初は暴れたが顔を再度みて動きを止めて汗をかきながら人混みに消えていった。
「無茶なさいますな、御忍びで」
「教練に向かうこと父上にはいっておる。楽しみだ」
頭を抱えたくなる状況に中将は客車に乗り込み汽車は出発した。
「これが駅弁か」
聞きたいことはあるが本人は気にせず自由を満喫しており今頃は侍従が青い顔をしているだろうと思いながら成葉に護衛と世話をたのみ汽車は町並みを外れて郊外の景色が良いやまなみを見ながら進む、最初は中将がいるので緊張したが中将が歌をうたいだしそれにつられて合唱が始まり到着まで華やかな車内で皆楽しんでいた。
「降車、整列」
いつの間にか寝てしまっており掛け声に起きて汽車から降りると軍装ではなく華やかな洋服を着た少女達が整列しており小西が、
「予定を変えて軽井沢で2泊と草津は2泊で少将閣下もこちらにお着替えを」
軍装ではなく背広に着替えさせられ手配していたホテルに入ると一息つく、
「驚きでしかないがこれが本来の修学旅行か」
騙されるのはわかっていたがこれ程とはと思いながら東京では拝むことができなくなった洋食が出されて嬉しそうに食べている。
「毎回こんななら参加すればよかったな成葉」
「密宮照仁様そうですね」
官位は呼ばずにすごすと言う事で華やかな夜を迎えた。
「禁止なダンスとは」
ダンスホールに集合する。
「御廓」
密宮照仁中将閣下に呼ばれて緊張する。
手を差し出され何年それ以上前の事を思い出しながらステップをふむ、
「隠れた才能と言うのか踊れるとはな」
「武官でヨーロッパとアメリカに行ったときにさんざんさせられましたから」
一曲踊りきり一礼をすると密宮照仁中将閣下が、
「ほっとしている暇はないぞ」
そう笑いながら待っている成葉が進み出てどうやらその後ろは順番を待っているようで小西も優雅に相手をしており女生徒同士も踊り花が開くように踊り時々ステップを間違えて足を踏まれることもあるが動揺する相手に気にせずに踊り続けることができた。
何人と踊ったかもわからずようやく終えると小西が、
「水分補給に一杯どうですかな」
小西の部屋に行きウィスキーをロックで飲む、
「私がこう言うのもおかしいですが彼女達を戦争に送り込みたくはありません」
戦争のおかげで儲けた小西が一番戦争を嫌っており本来は空軍に手を貸す事は無かったのだが、
「戦争は回避したいのは空軍の上層部皆思っている。ロシアとの戦いに引き分けていれば、それと清国から多額の賠償金を得られたことも」
「戦争は儲かる。大国にも勝てると勘違いした」
あの時ロシアで革命が起こらなければ1か月後負けたのは日本だったかも知れなかった。
「弾薬の生産も追い付かず国民に宣伝された勝利は次で逆転されたと上では思っていたがロシアに勝ってしまいそれも忘れてしまっている」
「いや、忘れてないからこそこの引き締めか」
あらためて話すとアメリカの国力がどれ程か想像もついてないがロシアに勝てたのだからとその一言だけで目をそらす現状に絶望しかなかったが指揮官はそんなことを表に出してはいけない。
「空軍も本土決戦がまさか起きるとはと思っているから出来たと言ってもかごんではないですからな」
戦いが始まれば南方との輸送路で彼女達は戦い命を落としていく、
「とにかく被害は最小限で戦い抜く、勝っても負けてもな」
ようやく静かになった隣接の女生徒達の部屋を見ながらグラスをささげた。
翌日は軽井沢で自由行動、密宮照仁中将閣下も一緒に街中を歩き私は警察署に挨拶をして問題があれば協力を頼み午後から汽車で草津へ移動して夕方入った。
「なかなか時間がかかったな」
50km程を3時間かけて汽車は急勾配な山を登り到着するとそこには輸送隊のトラックも到着しており温泉宿に入った。
「温泉はいいな、明日は白根山登山だが危険はないか」
活火山で時々噴煙をあげてると聞いていたが、
「硫黄を採取している会社に問い合わせたところ火口に入り込まなければ問題なしとのことです」
「密宮照仁中将閣下もおられる、安全第一でな」
予定通り行軍と言う名の登山を行う、
「遠くまでよく見えるな、しかしこれよりも高く飛ぶのだからな寒いといってられんぞ」
密宮照仁中将閣下が初めての体験に浮かれており成葉と共に登っていく、
「登山なんて何年ぶりですかね」
小西も嬉しそうにしており無事におりてきて温泉でゆっくりとした。
「御廓少将、ついてきてくれ公務でな」
そう言うと隣接の病院へと小西と向かう、
「ライ病などの患者が療養していると言うこと、ごくろう」
そう言って建物の中で話を聞いたり見学を行ったりして皇女の公務として行っており別の一面を見せられ尊敬と敬愛を深くさせてくれた。
翌日は移動でトラックに乗って山道を下り佐久方面へでて山梨へとトラックの車列は続く、
「トラックの乗り心地は何とかならぬのか、ここはまだクッションが効いているようだが後ろは板の椅子がついているだけお尻がどうにかなりそうだな」
「元々物資の輸送ですから席を設置するわけにはいかなあいのです」
「戦争の道具は不自由なものだな」
そう言われて苦笑するしかなく諏訪湖畔で一泊し諏訪大社に詣でてから厚木に帰還した。
年末にMe109が完成して搭乗する。
「零戦よりも大きいが千三百馬力以上楽しみだ」
本家ドイツの109より大型化しており翼内にも12.7mmが2丁のはずだが脚の大型化と補強そして幅を広げるのを優先したため今回は、量産型は2丁ずつとなっており大空へ飛び上がった。
「軽快が197よりも無いが圧倒的な上昇力と一番良いのは胴体が伸びた分射撃時にぶれないな」
地上の標的に対地攻撃をすると全然しやすくこれならばと思い試験飛行を終えた。
「ライツ殿、なかなか良い機体になったな着陸もしやすくなったし、射撃時の安定性は文句なしだ、いくつか改良をした後生産にはいるがエンジンの馬力を千五百まであげてほしい」
「燃料噴射装置でないので冷却のラジエターを効率よくしていけば問題はありません」
試作は一度分解整備され異状がないか確認して成葉等の左官と尉官が交代で乗って問題の洗い直しを行った。
「97式艦戦と戦うと後ろをとられてしまいます」
そういう声があがったので模擬戦を観戦する。
「図体がでかいだけで97式に遅れをとっているな空軍の新型は」
話を聞いたのか海軍の佐官も見学に来ており旋回で追い回されるMe109を笑い海軍でも陸軍でも使い物にならないと言う話が蔓延していた。
「機体の長所を考えずに同じようなことをするからだ」
不満そうな彼女らに模擬戦をする。
「3対1で」
離陸は横一列に並び加速する。
97式が先に離陸するがMe109は加速を続け離陸すると一気に上空へ上昇する。
「馬力で先ずは引き離して上空の優位な場所を取って」
呟きながら未だ速度に乗らないアヒルを急降下でさらに加速をつけて引き金を引く、ペイントの戦果は見ずに一撃離脱して上空に上がるとアヒルはついてこられずついていくと失速しそうになっているのでそれを狙って急降下して命中させて離脱した。
「成葉はなかなかだな」
私が狙うのを軽快なアヒルでかわすが、私は直ぐに上空へ上がり反撃をさせない状況をつくり流れてきた雲に入り一度上昇しながら離れて急降下しながら低空ギリギリで加速をして上空を警戒していた成葉の横から襲撃してペイントの花を咲かせて終わった。
「705km、急降下でこれ程とはな」
機体の軋みもなく頑丈なMe109に感心しながら着陸してライツ殿に報告していると皆が集まる。
「この機体は馬力と機体が頑丈なのと安定した射撃が長所であり当然水平方向の格闘戦では97式には負けるが長所を生かせばだ」
しばらくは戦術的な方法を紙にまとめ教本を出さなければと思いながら年明けた。
新年早々補強した零戦改が出来上がった。
「重量は250kg増加で馬力は350増加、機銃は20mm2丁から12.7mm4丁にタンクの容量も減って2000kmがせいぜいか」
何度か零戦に乗ったが格闘戦は思い通りに動き素晴らしい、しかし防弾と耐久性が無いこの機体はやはり空軍では使わないと決めていたのであくまでも試作の域を出ない改である。
「やっぱり重く感じるが堀越のこの操縦管の軽快さは素晴らしいな」
Me109にも欲しいが高速域になると重くて力が必要になり馬力を大幅に上げたこの機体では速度をあげすぎると私でも操作が重く感じられる。
重くなったが旋回半径はMe109に比べるもなく小さく空母に搭載するのに考慮しても良いかと思いながら初飛行を終えた。
昨年からのインドシナ進駐によりアメリカは鉄などの輸出を禁止してきており国内でも不穏分子の取り締まりが厳しくなりドイツは遠くアフリカで勝利したことにより日本もと叫んでいる。
「ハルノートで最後通牒をアメリカが出してきたと言うことだが」
「正常に反論すればいいが」
密宮照仁中将閣下と小西と急遽会議を開き開戦時についての陸海との連携を私に命令をする。
「戦争が始まれば一部を除き輸入は難しくなりましょう、どれだけ東南アジアから物資を送り込めるかですな」
「勝利を疑わない連中からすれば非国民ですが」
「海軍が山本が開戦での奇襲を考えているようだが戦えば戦うほど終わると言うことだ」
「2年ででしょう」
「何れにせよ我が空軍は帝都の防衛のためにある」
密宮照仁中将閣下が言うのを頷き報告を続ける。
「残りのタンカーも軽空母として興龍と嚥龍としての改装も完了しておりタンカーを8隻と輸送艦8隻、駆逐艦は桜と梅の他に4隻を発注しており来年夏に引き渡しの予定となっております」
これが空軍の命の綱であり優先的にと言うことで私がしばらくは艦隊司令で乗船て輸送を行うことを確認した。
惣流の整備も終わり軽空母3隻駆逐艦2隻の編成で艦隊運用を行う、
「空軍も足並みを揃えて南方作戦の一翼を担ってくれ」
御前会議後の海軍からの作戦命令書を渡されあ号作戦と、
先ずはマレー作戦の25軍の護衛のために出港することになる。
「搭載機はMe109を20機補助機を3機を搭載、惣流には零戦改を司令官専用機を搭載します」
長期作戦になるので給油艦と補給艦を2隻ずつ帯同させることになり出港準備を命じた。




