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113:briefing


「さて、と」

「本当に開けられんの?」

「任せておけ」


とは言ったものの。

俺達は現在、地下3階にある第三モニタールームへとたどり着いていた。

このモニタールーム、第三というだけあって、メインのサブのサブという、予備の呼び扱いの場所であり、普段は使われずにほこりを被っている場所である、と言うのはこの基地を訪れて先ず最初に知った情報だ。


まぁ、サブのサブとはいえモニタールーム。戦況情報なんかにもアクセスできる筈のその施設だ。当然ながら機密レベルは高いのだろう。

俺の権限でアクセスできれば良いのだけれども。


「えーと、……招待権限でのアクセス要求」

『――権限レベルが不足しています』

「駄目か。なら、――技術局員七瀬巧。アクセス要求」


言いながらモニターに簡易パスを打ち込んでいく。

此方の権限は、ラボのテストパイロットとしての権限だ。

下手な駐屯地くらいなら完全に自由に出入りできる程度の権限は与えられている。


『――認証』


システム音声が響き、プシュッっという音を立てて、モニタールームの戸が開いた。


「うわ、本当に開いた」

「本当にって……任せろといったろう?」


部屋に足を踏み入れた途端、真っ暗だった部屋の中に徐々に明かりがともっていく。


「えっと、メインモニターは……あった」


周囲を見回して、システムに接続できそうな端末を探し出す。

部屋の脇に設置されたキーボードを見つけて、慌ててその席へと腰を下ろした。


さて、此処からは此方の腕で情報を漁らにゃ為らんわけなのですが。

先ず最初に統合情報システムにアクセス。この端末はそもそも此処に所属する端末であって、特に進入制限をかけられたりはしていない。


「えーと……敵勢分子の分布図……地形マップと、そういや避難はちゃんと完了してるのか?」

「街頭カメラにアクセスすれば良いんじゃない? 確かアレも此処のシステムにくっついてた筈よ」


なるほどと頷いて検索をかける。

確かに街頭カメラのシステムデータは統合情報システム上に登録されていた。

けど、コレを直接表示するのは分り辛過ぎるな。


近隣の地形データを呼び出し、それに街頭のポイントをマーキング。そのポイントに関連付ける形で、縮小画面を地図上に表示していく。


「最後にあの子達に会った場所は覚えてる?」

「ああ。中央よりの広場であった。でもあの時南の露天か西の舞台を進めたから、多分そっちに行ってると思うんだけれども……」

「あぁ、確かにそれ以外はあんまりデートコースには向かないもんね――って、いた!!」

「!? 何処」

「ソレ! 其処のカメラ!!」


慌てて、言われたカメラをズームする。……なんてこった。避難できてないじゃないか連中。

画面に表示されているのは、まだまだ数多く逃げ惑う祭りの参加者と、その並に揉まれ逃げ惑う件の二人……西野陽輔と香山千穂の二人の姿だった。


「急な避難警報だったから、お祭りに来ていた人たちの大半が避難し遅れてるのよ……」

「此処は軍施設だろうに。ちゃんと誘導してやれよ!!」


愚痴りつつ、基地データを検索して、この基地の情報をさらに漁っていく。

この基地、外に出ているのは食堂とか来賓用のベッドスペースとか、代替可能なものが大半で、施設の重要部分はその9割以上が地下に埋設されている。


その所為だろうか。この基地、避難用の地下シェルターと言うのがぜんぜん存在していない。

つまり、今此処に居るお祭りの参加者が避難するべき場所というのが、全然無いのだ。


「これ、不味いな」

「ちょっ、どうするのよ!?」

「地下基地の出入り口を開放するか? いやいや、そんなことしたら余計パニックが拡大するか。なにせ出入り口が狭すぎる。ならHMの出撃口……駄目か。此処エレベーター式かよ。HMが出撃しきるまでは無理……くそ」

「嗚呼もうっ! 私も手伝う。端末使うわよ!!」


言って、真弓はすぐそばにあった端末にしがみついた。

正直、ソレを咎める余裕は今の俺には存在していない。あまりにも、現在動いている筈の軍の対応の遅さに、むかっ腹を立てていた所為でもあるのだが。


「アンノウンのデータ、確認されているのを赤点で地図上に投影するわよ」

「なら避難未完了地域を緑で表示する。……って、何じゃこりゃ!? アンノウンの数多すぎないか!?」

「確認数250!? 来てるのは小型種みたいだけど……それでも多すぎるわよ!?」


地図上に現れた赤い点の数々。この遠野駐屯地の地図から大分離れた海上にパッと見ただけでも百以上の光点が。それも、結構な速度で基地方向へと接近しているのが見て取れた。

余りの事態に二人揃って悲鳴じみた声を上げてしまうが……現状、その程度のタイムロスすらも惜しい。


「しかも最悪のコンディションだ。避難が完了しているならHMで丸ごと掃討、最悪爆撃で話は済むが、避難未完了だと混戦になる」

「それって……」

「ああ。最悪の場合、アンノウンとの……HM無しでの白兵戦(ガチンコ)になる」


HMの平均的なサイズは16メートル。大して、アンノウンには大体三つの区分が存在する。

一つは大型種。この間現れた30~40メートルほどの丘のような怪物。

次いで、最も現出率の高い中型種。これはHMより少し大きい程度の20メートル級。

そして最後に、小型種と呼ばれる4メートルほどの怪物が存在する。

その姿形は其々バラバラなのだけれども、アンノウンは大体この三つの規格サイズに区分できる。


で、今回現れたのはその小型種。それも見た限りは途轍もない数が。

この小型種と言うのが厄介で、HMで対応するには小さすぎ、下手に接近されると直接HMに取り付かれ、アリに群がれるようにして倒されてしまう。

そうならないためにはHMをとにかく振り回し、最大火力で敵を掃討するしかない。

が、現状では先にも言った通り、避難が完了しておらず、そんな戦い方をすれば甚大な被害が出るのは目に見えている。


「こうなれば、敵が陸地に上陸する前に殲滅される事を祈るしかないな」

「出来ると思う?」

「無理だろうな」

「ちょっと」


冗談を言っているとかではなく。

なんというか、油断と慢心が招いたパニックと言うか。

基地の公開とかをする割、緊急時の対応が少し杜撰というか。

まぁ、HMも相当な数が揃っているのだから、そりゃ少しは慢心しても、心情としては仕方ないとは思うけれど。


「さて、如何動くかね」


視線の先には、出撃するHM部隊の姿が映るモニター。

どうやら総戦力で一気に片付ける心算らしく、一気に大量のHMが出撃していく様子が映し出されていた。



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