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111:Girl’s


「へぇ、んじゃお父さんの伝手でHMを動かしてたから、あんなにHMの操縦に慣れてたんだ」

「まぁ、そんなところだ」


真弓に少しだけ内輪の話をしつつ、財布の中を確認して少し鬱になる。

露天って、もっとこう、雰囲気を楽しむような物じゃなかったか?

何処の世界に露天で一万近い額を消費する奴が居るんだ、と。


「道理でね。そうでもないと、あの時ああまで綺麗にHMを扱ってた理由が分らないもの」


あの時。というのはつまり、数日前のLoG襲撃事件のことだろう。


「まぁ、な。とはいっても、アンノウン戦はあのときが初めてだったんだぞ?」

「嘘ぉ」


嘘ではない。

実際にアンノウンを見たこと、と言うのはあることにはある。

のだが、実際にHMを操ってのアンノウンとの実戦、というのは、アレが初めてのことだった。


「それでよくあの怪獣に勝てたわね」

「そも、アレはアンノウンに勝利するのが目的ではなく、アレから逃げ延びる、というのが目的だった筈だ。他に逃げ場も無かったし、あの状況でもなければ、整備不良の超大型HMで大型アンノウンとのガチンコなどという無謀を通り越したことは絶対にせんよ」

「自覚はあったのね……」


なんだか失礼な事を言われている気がするぞ。

まぁ、別にだからといってどうもしないのだけれども。


「それはさておき」

「……その定型文を使う人間、初めて見たな」

「五月蝿い。アンタは、何で此処に居るの?」


ビシッ、という効果音でも流れそうな程、絵になる姿で此方を指す真弓。

ただ、指しているのがフランクフルトの串だというのが少し笑える。


「ん、いや観光だと……」

「嘘。なら誰かと一緒に来たって良いはずでしょ? 聞いてるわよ、あんたがクラスの子の誘いを断ったって。あのロボフェチが、って噂になってたわ」


……なんだか、本当に失礼な事を言われているなぁ。

さて、如何反論した物か。出来れば、ここで暴れている、なんていう話は表に出さないのがベスト何だけれども。


「ん? 其処に居るのは七瀬さんでは?」


聞き覚えのある声に、首を背後へ回して、思わず絶句した。


「なっ、ちゅ、中尉!?」

「今日は七瀬さん。試合拝見しましたが、凄い戦果ですね」

「あ、有難う御座います。といってもアレ、対アンノウン戦に慣れてる人間の不意をついた、って言うだけなんですけどね……じゃなくて!?」


思わず声を上げるが、稲見中尉はきょとんと首を傾げるだけで、此方が何を言いたいのかには全く気付いていない様子だった。

くそ、可愛いじゃねーか!!


「中尉、パイロットスーツで出歩くのは不味いでしょう!?」

「? そうですか? 特に問題は無いと思うのですが……」


アタマ痛い。この人、自覚が無いんだろうか。

HMのパイロットスーツと言うのは、大体が統一規格であり、全身を覆う特殊素材のスーツと、部分的に急所を覆う制御版を内臓したプロテクターで構成されている。


このパイロットスーツ、耐熱耐圧対弾対刃と、様々な事柄に対応した優れものの素材である上に、仕込まれたセンサーによってパイロットの体調管理も出来、薬物投与により人工的に興奮状態を作り出したり、また心配停止時には緊急の電気ショックを行えたりもする。


そんな優れもののパイロットスーツ。だが、一つだけ、どうしようもない弱点が存在する。


「あのですね、言ってしまえばソレ、水着みたいな物なんですから。上に何か羽織るなりしてもらわないと、過分に目の毒ですって……」


スーツの特徴を一言で挙げるなら、全身タイツ、という一言で言い表せる。

これは対Gなどの圧力調整のため如何しても必要な事柄であり、改善の仕様がない。

想像してほしい。体型がはっきり浮き出し、要所要所だけ小さなプロテクターに囲われた女性の姿を。

物凄く、エロいのだ。


見回せば、想像通りというか。

前かがみに歩く男性諸君や、それを彼女に見られてもみじ模様を頬に残す男性諸君。

うん、これ以上無関係な通行人の人間関係を砕く前に、コイツなんとかしないと。


「ええっと……とりあえずコレを」

「む、有難う御座います。……ところで、其方は?」


上着を渡してそれを羽織らせて、不意に思い出して背後を振り返る。

なんだか、嫌な笑みを浮かべた。

のだけれども。


「もしかして、七瀬さんの彼女さんですか?」

「ブフゥッ!?」


その顔が思わず引きつったのを見て、内心少し良い気味だと思った。

とはいっても、此方の顔も向こうと大差ないとは思う。


「違いますよ。彼女は……えー、説明しにくいな」


クラスメイト、と言うのは先ず違う。そもそも学科が違うし。

別にクラブ活動が一緒と言うわけでも無いし。あえていうなら、友人の彼女(仮)の友達?

んな説明が出来るか、と。


「戦友、ってやつですかね?」

「あー、うん。その説明で良いんじゃない?」


同じような事を考えていたのだろう。

真弓が唸りつつ、苦笑のような表情を浮かべながら、此方の言葉に同意をしてみせた。


「戦友……ですか?」

「ええ。先日のLoGでのアンノウンの騒動、顛末はご存知ですか?」

「――あぁ、貴方が招待されたきっかけの」


どうやら、彼女にも一応の情報は通っていたらしい。


「そのとき、一緒にHMを動かした面子の一人なんですよ」

「なるほど。……私は遠野駐屯地第802小隊所属HMパイロット、稲見理奈中尉です。よろしくお願いします」

「LoG機構学科一年の、樋口真弓です。此方こそよろしくお願いします」

「あ、私はまだ16なんで、敬語でなくても結構よ?」


何処か喋り方の固い真弓を見て、稲見中尉がそう言って笑顔を見せた。


「いいの? なら普通に喋らせてもらうね」


言って握手する二人。

まぁ、元気系美少女と天然(?)美少女が並んでいる光景だ。眼福っちゃ眼福何だけれども。

そっか、16か。若いなー、とは思ってたけど、まさか年下とは……。


「ところで、さっき試合って言ってたけど?」

「ええ。メインステージでやっているHMの模擬戦。貴女も七瀬さんの応援に着たんじゃないの?」


気付いたら暴露されていた。

視線をやれば、物凄い目で此方を見てくる真弓の姿。

どういう事か説明しろ! と言っているのが何故か理解できてしまって。

――まぁ、話の流れなら普通聞かれるよな、と。


「とりあえず、事情も説明しますんで、場所移動しません?」


そう言って、歩いてその場から移動を開始した。

目的地は遠野基地本部。先ず、中尉を着替えさせるのが最優先だ。


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