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014:Fire Worl

『な、なんだアレは!?』『UFO!?』『計測半っ!!』

『友軍か? 確認急げ!!』『照合できませんっ!!』『未確認の飛行物体!?』


広範囲探査術式が次々と音を拾う。

聞こえてくる声の大半は、地上で戦うLOGの皆さんが此方を見て驚く声だ。


「うわー……」


そういえば、コレって存在そのものが初公開なのか。

ウチのラボで秘密裏に開発されてた奴のプロトタイプだし、結局正式採用もされなかったから、まさに幻の機体と言う奴か。

――しかたない。このままLOG側に攻撃される、なんてのも洒落にならない。


『此方はLOG防衛班。其処の所属不明機に告ぐ、直ちに当領内から離脱せよ。現状我々はアンノウンとの戦闘中で……ああ、もうっ!! 邪魔だからどっか行けっ!!』


あ、キレた。

こちらに向けてライフルを構える紫電改。さっさと応答したほうがいいだろう。


「あ~……此方、PAM−01長門。少しだけお手伝いに来ました~」


途端聞こえてくるのは、騒然というか混乱の窮みというか、そんなかんじにパニクった空気。

……やばい。ちょっとノリが軽すぎたか。


『PAM? AMのプロトタイプって……馬鹿な、AMは陸奥の一種しか生産されていない筈……』


流石LOGの生徒というか、形式番号だけでおおむねは伝わったみたいだ。


「まぁ、そういうわけで、加勢させていただきます」


面倒になって言葉を切る。

説明なんて後。今はアレを叩き潰す事が先決だ。


「――グロ肉め……」


グロ肉は此方を眼中に収めてはおらず、そのまま正面にいる大和に向かって突進を仕掛けようとしていた。


魔力を一気に練成する。

S3機関を通された魔力はその質と量を一気に加速され、元の数倍の威力となって荒れ狂う。

その荒れ狂う魔力を、術式と意志の力で制御して。


着たい各部に浮び上がる小さな魔法陣。

その中心に発生した光は、そのままジグザグの軌道を描いて、側面からアンノウンの各部へと着弾していく。

圧縮魔力の砲撃。

これを喰らって平気でいられるものなんて、有機物だろうが無機物だろうがありえない。


案の定アンノウンはバランスを崩し、その勢いのまま敷地脇の土手へと突っ込んだ。


「エゴグゴアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!」


おぉ、怒ってる怒ってる。


「……さて」


今のうちがチャンスだろう。

アンノウンから視線を外して大和を見る。

その大和は、矢張り此方が何者なのかを判断しかねている様で、メインモニターをこちらに向けていた。


――まぁ、いいか。とりあえず今のうちに。


長門が大和の背後へと移動する。

少し驚いたような大和だったが、しかし機敏な反応が出来るほどの魔力は既に無いのだろう。

長門は機体を90度…天空を正面に、その機体底部を大和の背中に貼り付けた。


ガコンッ、という着床音。

大和のサイズに対して、長門のサイズはかなり小さい。5分の1程度だ。

まるでランドセルを背負う小学6年生だ。


『な、なんだっ!?』

『接触された!? 千穂、接触回線を……』

「もう開いてるって」


聞こえてきた声に、俺は思わず突っ込みを入れていた。


「いよっ!」

『……巧!?』

『ええっ!? 保健室で寝てたはずじゃ……』

『だ、大丈夫なんですか!?』

「あーオケオケ。全然大丈夫。むしろお前らこそ大丈夫か?」


接触した事で大和と長門との回線が繋がった。


「……強制接続(アクセス)。当該対象の探査」


精神の糸を伸ばして、大和の管制システムへと繋ぐ。

会話の合間に大和を探査していくが――なんというか、よくこんな状態で起動できたな、と言うような有様だった。

各部魔術回路はかなりのダメージを受けているし、昼間の戦闘のダメージだって完全に修理できているわけではない。そもそも機体の劣化で反応もかなり鈍くなってしまっている。


『――その、シェルターに逃げ遅れた子が、アンノウンに狙われてたから……』

『それで陽輔くんが大和に乗り込んじゃって……』

『で、仕方ないから私達も乗り込んで、一緒に出撃したの』

「何その王道展開。お前らヒーローか」


まるで王道のヒーローみたいな理由を聞かされて、思わずそんな感想を漏らしてしまった。

逃げ遅れた子を助ける為?

……滅茶苦茶格好良いじゃないか。


「それじゃ、俺はヒーローを助ける便利キャラだな」


いいながら術式を次々と編み出していく。

酸化分離術式、再錬成術式、術式修正、接続公式。再起動。


一瞬大和の電源が途切れ、再び起動しなおす。


『な、何!?』


驚く真弓の声。

それも当然だろう。つい先程まで限界ギリギリで起動していたはずの大和に、しかし今では完全起動に十分……それどころか、はるかに上回るほどの魔力が注ぎ込まれていたのだ。


これこそ、EHM支援用機EAM長門の真の機能、魔力の外部接続だ。

各機体の魔力的、魔術的後方支援こそが、この機体に与えられた役割。


『機体各部、一気にオールグリーン!! 何で!? 何したのよ巧っ!!』

「応急処置をな。錆を抜いて、劣化金属を鍛えなおした」


言うのは簡単だが、実際にやろうとすると物凄く手間と時間がかかる。

この短時間で完了させる事ができたのは、ひとえにこの長門の性能故だ。


「まぁ、とりあえず、コレであの肉塊に後れを取る事はないだろう?」


回線ごしに、鉄壁の向こう側の三人に話しかける。

気のせいかもしれないが、その向こうで三人が闘志を燃やしている気がした。


「そんじゃ、怪獣退治と洒落込みましょうか」

『了解!!』『任せなさい!!』『微力ですけど、頑張ります!!』


そんな其々の言葉に宜しいとばかりに頷いて。

大和は、その巨大な双眼を緑に輝かせた。



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