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013:上空風景


長門の機動力は凄まじかった。

いきなりの全速力。途端に視界は黒く染まりかけて、慌てて魔力でそれを調整して。


風よりも早く飛んだ長門は、結果数分と経たずにLOGの上空へとたどり着いていた。

上空からの戦況考察。

観測する為の計器はこの機体には搭載されていない。

…が、観測する為の術ならば、おれのアタマには幾つでも入っている。


遠見の魔術と生命感知。さらに精神の糸を機体を通して解き放つ。


「………っ、うぉ……」


驚いて、そんな声が出た。

遠見は俺の普段異常の精度で映像を読み取り、生命感知はまるで赤外線モニターの如く詳細な情報を欠き示して。精神の糸でさえ俺の限界量のウン倍に増幅されていた。


「これが…SSS機関か」


ソーサリー・シンクロ・システム。

術者と同調し、機械的にその魔術を底上げする弩級の荒業。

そもそも同調能力が無ければこの機体を扱えず、尚且つフィードバックされる情報を整理しきれる処理能力が無ければパニックを起こして卒倒してしまいかねない。


術式は機体に投影され、しかし得られた情報は無作為にフィードバックされる。

流石に少しキツイ物を感じるが、しかし堪えられないレベルと言うわけでもない。


「避難は…途中かな」


地上に生命反応は殆ど無い。

反応はむしろ地底…地下シェルターでも在るのだろうか。残っている残存民間人も、幾つかの点へと向かって集合している。

とりあえず一般人に被害が出ることはなさそうだ。


「問題は、と」


何故だろうか。

戦場に出る4つの陰。

紫電改と、それに並び立つ巨大な機械人の姿。


「なんで大和が出撃してるんだ?」


アレは旧式の機体だ。

俺達は時間稼ぎとしてあの機体を操ったものの、そのコストや性能を考えてもあの機体を再起動させるメリットなど到底思い浮かばない。


それにあの動き…なんというか、素人臭い。


動きこそ武術でも出来るような動きだが、HMとの反応に関しての“慣れ”のようなものが感じられない。


…まぁ、いいか。まぁいい。俺には関係ない。

すべきは、あの三人が無事に避難したかどうかと言うことだけだ。


「みょんに…妙に嫌な予感がするけど……」


咬んでしまった。この機体が単座だった事を喜んで、と。


「えーと」


あの三人の感覚を思い出す。

個人が持つ生命力魔力の波形。人は誰しも魔力を持つ。その波形を生命感知とあわせて……。


あまり細かい波形は覚えていない。全部大体だ。

けど、大体の波形を少しずつチューニングしていけばそのうち……。


「は?」


いや、マテ。落ち着け俺。

んな筈がない。


何故、大和から、三人の気配がしているんだ?


地形情報、その他諸々の情報を察知していく。

近隣に居るのはアンノウン×1 紫電改×3 大和×1 報道ヘリ×1


…あー、解ったかもしれない。

大和に乗っているのが、あの三人だとして。

その背後に在るあの施設…あれはシェルターへの入り口か。


連中も魔導師の卵だし、HMを起動させる程度はあの三人でも出来るだろう。

シェルターの入り口を守る為に、居ても経っても居られなくて……。


あの三人にはありそうな感じがする。

正義感強そうだったし、あの三人。


「でもなぁ…」


よくあの機体を動かせたな、と。

…そうか、魔力を見れば良いのか。


<目>を凝らす。

物理的視界から霊的視界へ。

魔力の流がよりよく見えるその世界で。


やっぱり、起動している割には物凄く魔力が少ない。

それなのに、何故ああも起動できているのか。


考えている所に魔力砲撃の流れ弾が大和へと飛んでいく。

今の魔力では、弾くのは無理だろう…と、思っていたのに。

大和はソレをなんとか弾いてしまう。


「……ああ、真弓か」


配置は上から下へ、陽輔、真弓、千穂の組み合わせだろう。

メインパイロットに陽輔。多分武術の心得でもあったのか。

機関制御に真弓。機構学科だけあって魔力に対するセンスでも在ったのだろう。

情報管制に千穂。情報に必要なのは判断力だ。彼女ならお手の物だろう。


「ははぁ、必要最低限を部分的に動かしたか」


本来2つ電池が必要な所を、二度に分けて認証させる方式。

かなり裏技臭いが、出来なくもない。


そいっても、それでは精々鋼の盾が良いところ、まともに戦闘なんて出来る筈もない。


「やっぱり、加勢したほうが良いよな」


一つ呟いて、長門へと魔力を送り込むのだった。




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