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011:意識覚醒

目を見開いて、周囲を見回す。

周囲は白いカーテンで覆われている。視覚情報で得られるのはソレが限界か。

精神の糸を伸ばして周囲を探っていく。


………保健室?


「あら、目が覚めたの?」


カーテンの向こう側からそんな声が掛かる。

…糸を見られた? と言うことは、少なくとも魔導師と言うことにはなるだろうが…


身体を起こしてカーテンを開く。

と、其処には白衣を着込んだ、此方よりも少し年上の美女が座っていた。


「わぉ、美人」

「ほめてくれてアリガト。LOGの女医やってる海藤 千里よ。千里さんとか呼んでくれたら嬉しいわ」


千里と名乗ったその女医は、そう言って器用にウィンクして見せた。


「……此処は?」

「LOGの医務室。貴方コックピットの中で気絶してたから、此処で寝かされてたの」

「コックピット………」

「ん? 覚えてない?」


記憶の回想。

入学式、邂逅、校内見学、邂逅、展示見学、接敵、開戦、…………


「お、おぉ、そうか。気絶したか、俺」


頭に記憶が蘇ってくる。

気絶した事なんて余りにも久しぶりだったので、少しばかり混乱してしまったが…。


「大丈夫?」

「もう完全です」


頷いてみせると、女医…千里さんは「よし」と一言笑顔で頷いた。


「ところで、今どんな状況なんですか?」

「今は、…そうね、君が気絶してから二時間って所かしら」


時計を見れば、既に17:00。

未だ春のこの時期、ふと外を見れば既に空は赤焼けていて。


「――把握。アンノウンは?」

「逃げちゃったわ。けど、多分未だLOG近海に潜んでるんじゃないかしら。周辺での目撃例も、外洋での観測例もないし」


と、言う事は未だ戦闘態勢の最中と言うことではないか。

まぁ、流石にHMの配備も終わっている筈だし、大丈夫だとは思うのだけれども。


………HM?


「……っ、あ、あいつらはどうなりましたかっ!?」


肝心な事を聞き忘れていた。

意識が途絶する直前にLOGのHMが援護してくれた記憶は在るのだが、その後の顛末を俺は全く記憶していない。


「事情説明は全部あの子達がしたわよ?」

「どんな感じに?」

「さぁ、私は所詮女医。其処まで情報通じゃないわ」


…まぁ、ソレもまた道理。


「……まぁ、無事なら良いか」


言って、ベッドから立ち上がる。

多少ふらつきはするが、立ち歩く分には十二分に回復していた。


「もう歩けるの? 大丈夫?」

「とりあえずの魔力は溜まりましたんで、まぁ、多分」

「もう!?」


通常、魔力と言うのは一晩寝れば溜まるといわれている。

2時間で回復するのは、はっきり言って異常。


…異常だよなぁ…。


「まぁ、とりあえず大丈夫なんで、…えっと、俺はもう帰っても良いんですかね?」

「えーっと、貴方のお友達は全員帰らせたし、ええ、もう帰っても良いわよ」


頷いて、立ち上がる。

脱がされていたのであろう、壁に掛けられた自分の上着を羽織りなおす。


「そんじゃ、俺は失礼しますよ」

「はい、お疲れ様。また今度事情聴取されると思うけど、逃げないでね」

「はっはっは」

「ゴマカスナ。あと、寄り道はしない事。まっすぐ家に帰りなさい」





正直、回復したなんていう見立てはかなり甘かった。

学園の中庭に出た辺りで、不意に体を襲う虚脱感。


「…………っ」


久しく感じるこの感覚。

決して好きにはなれないけれども、やはり懐かしいと少し感じてしまう。


親の影響か、幼い頃からHMに乗る機会も、魔術を習う機会も多かった。

父の試作機に乗って遊んだり、母に魔術を教わったり。

で、幼い頃から魔力欠乏で倒れる事は多かった。


「倒れなさい。倒れて倒れて、それから前へ進めるのよ」


魔導師の母の台詞。

母の人生…魔導師経験らしいのだが、成程確かに俺は並外れた魔力持ちに成ってしまった。

今や小さな町くらい準備すれば消滅させることすら容易い。


…まぁ、それでも母さんには勝てないだろうけど。


「………」


ふらふらしながら校庭を歩いていく。

視界の端に件の三人を見たような気がした。

周囲を同年輩の生徒に囲まれているようだったが、…正直それを気にする余裕も無く。


「此処からなら…ラボのほうが近い…かな…」


正直、この後俺は確実に倒れる。

一刻も早く、安全区画へ……。


「精霊よ…」


意識の糸を伸ばして、近くを漂う精霊に語りかけて力を借りる。

同調魔術そのものは魔力を殆ど使わないし、残り少ない魔力でもそのくらいのことは出来た。


精霊に力を借りて、少し軽くなった身体を引き摺って。

なるべく急いでラボへと向かうのだった。



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