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激情

作者: 海の底

感嘆し、憂い、怒り、うたい、叫ぶ、ぐらぐらで美しい私に少女じみた思いを馳せるのは愛の自殺行為である!


私と愛しい貴女の間にあるのは何だと思う?

「何だって私と貴方を隔てることは出来ない!」

それは改めるべき思想だ。あまりにふらついた飽和した脳が魅せるまやかしだ。

「それはあなたに会う度発生する紙切れの支払い?」

それは真理だ。私と貴女を繋ぐのはその紙切れでしかない。

「それは私と貴方との遠い世界の隔たり?」

大正解だ。

憂う私を見よ。貴女は私を美しいというだろう。笑う私を見よ。貴女は私を美しいと言うだろう!私を貴女は見るだろう。紙切れで繋いで私に何度も会うだろう。

そうして貴女の瞳は私を何度も映して何度も賞賛するだろう。そうして瞳は、私に愛を抱くだろう。

ところで私の話をしよう。私は虚構の命を生きている。常に現実で確かな命を生きている貴女とは比べようもないものをだ。

私はこの舞台の上でしか息を出来ぬ者だ。何故なら、私の世界は常に、そして永遠にこの狭い舞台の上のみだからである。故に私は直ぐに命を落とす。幕が引かれれば私の生きる世界は息を引き取る。故に世界の死と共に私も息を引き取るのだ。

貴女が愛すのは私である。虚構を生きる私である。貴女が視る私は、虚構を生きる私である。

私が愛すのは貴女である。現実を生きる貴女である。貴方を視る私は、現実を生きる私である!

ああ、貴方の瞳に映る私。私の瞳に映る貴女。その間の泣きたくなるほど近いのにあまりに深く鋭く決定的で、絶望的に透明な溝の残酷さ!

こんな悲劇が他に存在するだろうか。あんまりだ。私は愛するひとの想い人を殺さなければならない。そうして貴女は、愛するひとを失わなければならない。

ああ、貴女が美しさを知ったその瞬間、貴女が哀れで脆い命に恋をした瞬間から、私も貴女も永遠に哀しみの淵だ。

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