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59話 わたしの、英雄(裏)

ここも胸糞要素ありなので、見たくない方は見ないでくださいな~

 秋人と夕木とかいう女子が去った、公園内に設置された女子トイレ。

 俺はそこに躊躇なく足を踏み入れ、中にいる彼らを見やり、一言。


「無様だな」


 座り込んだ一人の女子が、顔を上げて呟く。

 その目にはきっと、顔全体を覆う仮面を被った少年の姿が映っていることだろう。


「……アンタは、誰よ?」

「まぁまぁ、俺が誰かなんて結構どうでもいいだろ? それよりも、なんでここに知ったような顔をして入って来たか。それを聞いた方が良いんじゃないか」

「……なんで、ここにいるのよ」

「よし、じゃあ端的に言わせてもらうぞ」


 どこか聞き取りづらい、歪な声で断言する。


「俺は、ここにいる全員と、取引をしに来た」

「……取引?」

「ああ、そうだ。俺はお前らに、『夕木茜へのいじめと思しき行為の停止』を望んでいる。そして、『ここで得た情報並びに、俺に関する情報全ての漏洩防止』。この辺りで十分かな」

「…………で? 取引という以上、こちらにもメリットはあるんでしょうね」

「ああ。俺の言う条件を守ってくれている間は、俺は『お前らの情報を一切公開しない』と誓おう」

「…………はぁ!?!?」


 素っ頓狂な声をあげる彼女を見やりつつ、俺はスマホを取り出して、そこに書いてある内容を読み上げる。

 その際に、一人の女子を指さすのも忘れない。


「野崎真子、中学二年生、住所は────」

「な、なによそれ」

「何って、お前ら全員分の個人情報だが」

「な、な、なんで知ってるのよ……?」

「別に、調べる手段はいくらでもあるしな。同じ学校に通ってるんだし」


 大体の住所で良いなら、地区行事の割り当てを見れば簡単にわかる。

 それ以上となると流石に少し手間だったが、なんとか全員分集めることができた。

 …………まぁ、正直使う気はないから、なくても変わらないのかもしれないが、一応な。

 あえて言うのならば、こういう読み上げでリアリティを追求するためか。


「更に、俺が握っている情報はこれだけじゃないぞ」


 俺は日常的に(・・・・)学校にも持ち込んでいた、自らのスマホを示す。

 そこには、ごく最近に撮影された、とある動画が再生されていた。

 それを見て、彼女らの顔面が蒼白になる。


「……まぁ、言うまでもないとは思うが、俺はお前らによるいじめの決定的な瞬間を握っている。……無論、その酷い内容もな」


 いじめの根絶を決めた俺は、俺は夕木茜を時間の許す限り『ストーキング』し、その瞬間をスマホで記録し続けた。

 勿論、校内のいじめも同様に、スマホを使って撮影している。

 ……動画ならば確実な証拠になる上に、撮影音も鳴らないしな。


 そのお陰で、主犯格の女子の人数も確実に把握できたし、いじめの内容も証拠に収めた。

 この証拠が存在すれば、流石に腰の重い学校側も動かざるを得ないだろうし、最悪どうとでもなる。

 このえぐい内容、そして加害者の個人情報が公開されれば、さぞかし暮らしづらくなることだろう。


 それが功を奏したのか、彼女の顔色は徐々に悪くなっていく。


「安心しろ、お前らが俺の言った条件を守ってくれている間は、今まで通りの生活を送れるだろうよ。わざわざ問題を起こす必要性が、俺には薄いからな」

「そ、そんなの脅迫! 脅迫じゃない!!」


 脅迫。

 害を加えることを告知することで相手を恐れさせ、選択の自由を狭めること。

 いや、表面上はお互いに利のある取引でしかないんだがな。

 今までも存在していたそのリスクを、無視し続けてきたのは他でもない、お前らだろうに。


 だが、この状況は確かに、俺が脅しているようにも見えるかもしれない。

 まあ、実際そうなんだがな。


「……確かに、現状は脅迫に見えるかもしれないな」

「じゃ、じゃあ……!」

「暴行罪や傷害罪、器物損壊罪や侮辱罪、更には脅迫罪。まだまだあるが、聞きたいか?」

「……!」

「そう、これらは、お前らも常日頃からやっていること。その中に脅迫が含まれるのは、あれれ、何でなんだろうな?」

「…………」

「脅迫をしていた奴らが、脅迫を否定する? 結局、自分が良ければ良いと、そういうことなのかね」


 勿論、これは俺がやられたことじゃない。

 夕木茜がいつも、やられていたことだ。


「更に言えば、実際には脅迫にはなり得ないだろうよ」

「は?」

「俺とお前らは結果的に、ただ平和的なお話をして、お互いに利のある協定を結んで終わる、それだけの話だ。少なくとも俺の予定ではな」

「でも、もしアタシらがこれをばらしたら……!」

「その場合、取引は無効。手が滑って、この情報達を全部リークしちゃうかもなぁ?」

「ぐっ…………!」


 勘違いしないでほしいが、これはあくまでチャンスをあげているだけだ。

 今までも、『俺に情報を公開されるリスク』は存在していたのに、それを無視してきたのはお前らだ。

 そしてこれは、そのリスクをなくすための俺からの提案だ。

 そんな、人を蹴落とすようなことをするより、よっぽど有益なことなんてたくさんあるからな。



「ここで一つ、明確にしておくぞ」


「脅迫とは言ったが、俺は、お前らを騙すつもりも、害するつもりも、毛頭ない」


「お前らが真摯に取引条件を守ってくれさえすれば、俺も同じく、真摯に対応してやるよ」

「そ、そんな言葉、信用できる訳がないじゃない!」

「別に、信じてくれと言うつもりはない。俺がいつ狂乱を起こし、約束を反故にするとも限らないしな」

「…………じゃ、じゃあ」

「だが、そんなことは本質じゃぁない」


「まぁつまり、何が言いたいかと言うとな」




「裏道は全て潰した。俺の提示する条件をどうしても飲みたくなければ、全力で抵抗してくるといい。……ただし、その先に待っているのは果てしない泥沼と、お前らの社会的な死のみだがな」


「勿論、こちらとしては飲んでくれた方が助かる。お前らも今まで通りの生活ができるし、俺もそっちの方が全体的に楽だからな」


「これでも、俺としては譲歩したつもりなんだぞ? 『平和的な話し合い』にするためにな」


「これ以上譲歩はできないから、嫌なら歯向かって来ても別にいいぞ? この時点で、殆ど俺の目的は達成されているからな」



「飲んでくれたら万々歳、飲んでくれなくともお前ら主犯格を纏めて表舞台から引きずり下ろせる。どちらにせよ彼女がいじめられることはもう、ないからな」



 あくまで『平和的解決』の方が、互いにメリットのある話ってだけで、本来この状況を創り出せれば、俺の最低限の目的は達成されている。

 ……まぁ、後は蛇足だから、本当は必要ないのだが。

 まぁ別に、やれることはやっておいて損はないだろうしな。


 主犯格の女子達は唇をかたかたと震わせながら、絶句している。


「……彼女が好きだからって、いくら何でもこんなこと、許されるはずが……」

「…………あ、勘違いするなよ? 夕木茜とは俺は面と向かって会ったこともないし、好意を寄せている訳でもない。はっきり言おう、アイツと俺は、ただの他人だ。今までのいじめは黙認してたしな」



 あーあ、本当、何で俺がこんなことしてんのかね。

 なんとなく目についたからと言って、こんなことまでする必要はなかったような気もする。

 ストーキングして情報を集める必要も、機を見計らう理由も、こんな所に秋人を呼び出して夕木茜を助け出してもらうことも。

 そこまでせず、今までのようにただ傍観していれば、どれだけ楽だったことか。

 それでなくとも、こんな徹底的にする必要も、なかったような気もする。


 ただ、なんとなく。

 そうとしか言えないが、まぁあえて理由付けをするとしたら。


 秋人が偶に関わるような人間が目の前で消えていくのが、俺としては嫌だったから、だろうか。

 …………まだ取り戻せるのに、傍観したまま何かを失う。

 そんなことは、もうしたくはないと感じたから、だろうか。


 …………だから、俺は俺のできることを全てやった。

 多分、そういうことなのだろう。



 だから俺は、徹底的に主犯格の情報、つまり弱みを探した。

 まずは主犯格の特定、公開されてはならないであろう個人情報の類、いじめの確たる証拠、そいつらが犯した罪。

 それらを全て集め、そして様々なパターンを想定し、今日という日を待った。

 今日という、『主犯格の女子が全員集まる瞬間』を。


 夕木茜の後を追い、女子トイレの中をカメラ越しに見れば、個室に誰かが隠れているであろうことは容易に想像がついた。

 その数だと、仮に運動部男子だと仮定した場合、体格に恵まれない俺には殆ど勝ち目はなさそうだ。

 それでなくとも、元々秋人を表舞台に立たせようと考えていたから、結果的には変わらなかったかもしれないが、まぁそれは蛇足だろう。


 ……だから、俺は秋人にそのことを人伝に知った風を装い、急いで来るように伝えた。

 そのせいか、大分ぎりぎりにはなってしまったが、どうにか秋人の到着が間に合い、救出に成功。


 そして俺はその後、満を持して入ってきた、という訳だ。

 …………秋人の陰で、いじめを終わらせるために。

 ……機械仕掛けの神(デウスエクスマキナ)を、自らの手で創り出すために。


 …………少なくとも探偵や密偵みたいな仕事は絶対にやりたくない、そう思える期間だった。

 本当に全国のストーカーの皆さんは、その有り余るエネルギーを別の所に使えばいいのに。

 そっちの方がよっぽど健全だし、時間と労力の有効活用だ。

 ……まぁ、俺が言えたことではないかもしれないが。


 俺はスマホをチラつかせながら、付け足すようにつぶやく。


「……あ、もし変なことを考えて、実際にそれを行動に移そうとしているのなら、止めといた方が良いぞ」


「……俺は人体の構造を、ある程度理解しているからな。ブレザーのポケットからナイフや携帯を取り出したり、ポケットの中で操作したりする動作、相手から安全に凶器を奪う方法、そして────」



「────拒否した相手の息の根を止める方法を、俺は熟知している」



「『バレなきゃ、犯罪を犯しても問題ない』という言葉。お前らが一番、身に染みて知っているはずだよな?」


「『いじめ』なんていう、ガキだから許されるような、至極くだらない犯罪を積み重ねてきた、犯罪者さん達?」


「別に俺は、お前らに奴隷になれ、と言いたい訳じゃない。……信用はできないだろうが、どう足掻いたところで、この状況は変わりはしないぞ?」



「さぁ、選べよ。自分の意見ぐらい、自分で言えるだろ?」



 暫し待ってみるが、一向に返答のない彼ら。

 ……それはそうか、流石にこの条件に乗っても、俺に操られる未来しか見えないものな。

 ガキらしく、意地になってるのもあるんだろうが、相手はそれぐらいの絶望を抱いているといっても、差し支えないだろう。



 恐怖に染まったたくさんの瞳を前に、俺は思考する。


 ここで乗ってくれても良かったが、まぁ予定通りではある。

 ……しかしここからの展開は、慎重に見定める必要があるだろうな。


 ある程度の状況に対応できるよう、柔軟な作戦を用意したが、それは相手の性質によって変化するタイプのそれだ。

 故に、俺は念入りに確認する。



 全員の心を、『恐怖』が支配しているか否かを。

 狂った(・・・)奴が、その中にいないかどうかを。



「さて」



 全員が恐れていることを確かめた俺は、次に取るべき行動を見定める。


 彼女たちが、俺を恐れる理由。

 それは、端的に言えば、未知に対する不安。

 俺の正体が何なのかわからない、俺の本当の目的が何なのか推測しているけれど答えが出ない、俺が少しでも気を悪くすれば全員の人生が詰むかもしれない。

 それらすべてが、未知に対する恐怖と言い切ることができる。

 即ち。


 それら全てを取っ払ってやれば、最初の悪印象は残るものの、概ね解決する。

 そしてそれを纏めて行う方法を、俺は知っている。



「俺の目的を、ここで明確にしておこうと思うわ」



 俺は仮面に手をかけ、妙にフィットするそれを取り外す。

 視界が少し広がり、クリアになる。



「俺の行動原理は、最初っから何も変わっちゃいない」



 仮面に取り付けておいた変声機をオフにしつつ、俺は彼女らの方を向く。



「いじめを止めたい。それだけだ」



 素顔を晒した俺を見て、俺以外の全員の表情が引きつっている。



「……半井、悠莉…………!?」

「……え、俺のこと知ってんの? クラスの中では目立たない方だと思うんだが」

「全ての定期考査で、全教科満点近くを取ってるような頭おかしい奴を、忘れる訳がないわよ……!」

「いやまぁ、それはそうなんだが」


 まぁ、その辺はそこそこどうでもいいことだし、あんまり考慮に入れてなかった。

 でもまぁ、取れる点数を取るのに、理由はいらないしな。

 むしろ手を抜く理由の方が見つからない。


 そんなことを頭の片隅で考えつつも、口は勝手に言葉を紡いでいく。


「まぁ、知ってるなら話は早いな。この通り、俺は半井悠莉、お前らのクラスメイトの一人だ」

「…………何のつもり?」

「顔を晒したことについてか? それは、『平和的な取引』をするに当たって、顔と名前を晒すべきだという、至極当たり前の事実に気づいただけだ。特に問題もないし」


 そう、特に問題はないのだ。

 相手はただ、『平和的な取引』を飲み、いつも通りの暮らしを取り戻すだけ。

 それ以外の可能性としては、自分の社会的立場を捨ててまで、俺に逆らって自滅するか。

 そこは、何も変わってはいない。



 ……だが。


 …………ただ一つ、変化した点を述べるとすれば。





 相手が選択を誤れば、俺自身までもが危うくなる、という点だろうか。




 …………だがそれも、見方を変えればメリットになり得るのだが。

 というか俺にとっては、その全てがメリットでしかない。



「…………これで、お前らは俺の罪、つまりストーキングや盗撮、脅迫などで訴え、人生を破綻させることができるようになった」


 俺は彼女らを指さしつつ、続ける。


「つまり、お前ら全員と俺のどちらもが、お互いの人生を破綻させるだけの力を持っているってことだな」

「…………何が、言いたいの?」

「即ち、お互いに抑止力が働いてるってことだ。分かりやすい例で言えば核抑止みたいなもんだな」


 核抑止。

 それは簡単に言えば、核爆弾を持つ国同士による、戦争の抑止だ。

 核弾道ミサイルを安易に撃ち込めば、それを察知した敵国に反撃されかねない、ということ。

 結果どちらもが壊滅的な被害を受け、そこにプラスの要素など一つも存在しないため、基本的に戦争を避けあう。

 これが核抑止であり、抑止力の一種だ。


「つまりだな」


 俺は人差し指を上げながら、説明を再開する。


「お互いに攻撃すれば即死級のダメージを負うとわかってるから、お互いに刺激し合わないのが、双方にとっての最善策ってことだ。俺は元から騙そうという意思はなかったが、これではっきりしただろ」

「…………」

「俺は、お前ら全員の住所などの個人情報や、いじめの内容等の、過去のことを全部水に流す。逆にお前らは、俺の個人情報や罪、そして夕木茜を見逃してくれってことだな」


 少し洒落たな言い方をすれば、俺はお前らの『過去』を全て水に流すから、お前らは俺の過去、そしてお前ら自身と夕木茜の『未来』をチャラにしてほしい。

 そういう、ことだな。


「もう一度言うが、俺にはお前らを害する意思や理由はない。……そして、お前らにも、俺を害する理由はないはずだ」

「…………つまり、お互いに停戦協定を結ぼう、って訳?」

「そうなるな。勿論、そもそもお前らと俺は戦ってすらいないんだがな」


 全員地獄に落ちるか、全員今まで通りの平和な生活を続けるか。

 双方にとって、どちらが得なのかは、言うまでもないだろう。



「……で? お前らは結局どちらを選ぶ? できれば──」

「…………はぁ」



「わかった、わかったわよ。アイツをもういじめなきゃ良いんでしょ」


 溜め息混じりにそう呟く彼女は、どこか憑き物が落ちた、そんな表情をしていた。



「じゃあ、お前ら全員、それでいいか? 言っておくがこれは連帯責任だからな」


 彼女のどこか諦めたような声に釣られ、次々と消極的な賛同の声があがる。

 全員分のそれを聞いたところで、俺は手を叩き、薄く笑う。


「よし、これにて晴れて取引成立だな。じゃあ俺は帰るから、各自自由に解散してくれ」

「…………え、何そのおざなりな感じ」

「え、他に何か言うことがあるのか?」

「……いや、ないけど」

「じゃあ、俺は帰るぞ」

「えぇ…………」


 どこか腑に落ちない表情を浮かべた彼女らを置いて、俺は歩を進める。


「あ、ちなみに」


 トイレの出口に足を踏み出した時、ふと思い出したように俺は呟く。


「俺側から約束を破る時もあるから、もし夕木茜以外の誰かをいじめていたら、手が滑っちゃうかもな」

「え」


 数秒の間フリーズする彼女らを、俺はそのままの表情で見回す。


「ちょ、それずるじゃない!?」

「いや、お前らだって堂々と約束破ろうとしてたじゃないか。それに関してはお前らに何か言われる筋合いはないね」

「……ぅぅ」

「更に言えば、余程のことがなきゃ破る必要はないだろうしな。例えばお前らが犯罪に手を染めるくらいのことじゃなきゃ、な」

「…………ぅぐ」


 おまけ程度の口止めをしておき、


「何より、そんな犯罪に手を染めるよりは、他の、もっと有意義なことに時間を使った方がいいぞ。俺も今回の件で、そのことがよくわかった」

「……流石、ストーカーさんの言うことは違うわね」

「手を滑らせてやろうか?」

「すみませんでした」

「わかればいい」


 全く。

 曲がりなりにも、犯罪を止めるために行った、正当なそれだというのに。




「…………まぁ、お前らが常識のわかる、聡明で臆病な奴らで助かったのは確かだがな」




 こうして、安らぎすら覚えるほどの平和的な対談は、無事に終わったのだった。



 ────



 女子トイレから何のお咎めもなく退出し、のんびりと個人アパートへの家路を歩いていると、一人の女子が後ろから駆け寄ってくる。

 俺は溜め息を吐きつつ、とある作業を終えたスマホの画面を閉じ、振り向きざまに呟く。


「俺に言われたのに、早々にストーキングか。手が滑ってもおかしくないぞ」

「それはちょっと横暴すぎない!?」

「……で、なんで追いかけてきたんだ?」

「…………いや、少し気になることがあって」


 彼女は少し、言い辛そうに眼を背ける。


「アタシは、人を見るのだけは得意なのよ」

「はぁ、それがどうした?」



「…………アンタさ、アタシ達が自暴自棄になって、情報をバラマキ始めたらどうするつもりだったの?」

「別に。そうなったら俺はお前らの情報を遠慮なく流して、お前らも道連れにするだろうよ」

「……嘘、ね」

「…………」

「アンタと、直接話してわかった」



「アンタは、やっぱりアタシ達とはどこか違う」



「何か人間にとって絶対に必要なものが、致命的に間違っている」



「端的に言うと、アンタは」

「俺としては」


 どこか、核心に触れつつあるその言葉を遮り、俺はまるで、自分に言い聞かせるように言い放つ。



「何も間違っちゃいないと、そう思いたいんだがな」



 ────



 そしてその後、夕木とかいう女子がいじめられることもなくなり、彼女は徐々に明るさを取り戻した……とかいう陳腐な言葉を吐きたかったけど、俺いじめられる前のアイツの性格知らないから何とも言えなかったわ。


 …………まぁ、それまでと比べて、確実に笑顔が増えていることは確かだろうな。

 別にやって良かったとまでは思わないが、まぁ、意外と悪くはないと思う。



 そんな、いじめのみが消えた教室の中で、俺はいつも通り、机に突っ伏して目を閉じた。

最後ら辺の会話は、正直入れるか迷ったんだけどね……まぁ、それぐらい『落として上げる』の効果が強かったということで。

後、仮面外す前と後で、まるで別人のように悠莉が演じ分けた、というのもあるかも。

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