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56話 運が良いな

なんか一番最初に武器についての説明入れといたから、暇なときに読んで☆

 銀色の人型の飛行物体は、俺にその、生気のない双眸を向ける。

 そして手の平をこちらに開いた。

 どうやら、俺を標的として定めたらしい。


 とりあえず戦術としては、捕捉をできるだけ避けつつ、楕円軌道を描く手榴弾で砲撃。

 勿論、それだけであの速度精度威力お化けの光線をかわし切れるとはとても思わない。

 そもそも視認してから避ける、その次元でないのは確か。

 ……だが、俺は。



「敵の挙動を見れば、いつどこから攻撃が来るかくらいはわかる」


 敵の手の平が、光る。

 そこから刺すように高速で駆ける光の残滓。


「……それに、人間の可動域も理解しているからな」


 俺はそれをしっかりとかわしつつ、ついでとばかりに手榴弾を投げ込む。


 爆発音。


 しかしタイミングがずれたせいか、もしくは敵も対応してきているのか、破片は全て外れたらしい。

 一応俺は物陰に隠れ、煙の中目掛けて狙い続ける。


 そして、三個目を投げ込もうとした瞬間。

 煙から、影が飛び出す。


 ソレは高速で飛翔、俺の真上に移動し、手のひらを向ける。

 真っ直ぐ落ちる光を見やりつつ、俺は次の安全地帯を探す。

 捕捉されないようにアバターのスペックを十全に発揮して逃げ回りつつ、スキあれば反撃。

 安全地帯に着けばそこに留まり、手榴弾の狙いに徹する。


 一発ならば食らっても耐えきれる、とはいえ無闇に当たるべきではない。

 回復薬の数にも限りがある上、どうしても瞬時に全回復、という訳にはいかないしな。

 かわせる時はかわし、どうしてもかわし切れない時は『ウルフザレイ』を起動し、ほぼ無効化。

 あくまで当たっても生き残れる、という保険として機能させておくべきだろう。


 直線軌道と楕円軌道という差があるため、他の銃器よりはよっぽど戦いやすいだろう。

 実弾銃も光学銃も、基本的に直線軌道だからな。

 その高さにもよるが、遮蔽物越しに攻撃できる、というのは他の銃器にはない利点だ。


「…………よし、このままなら、時間は少しかかるが行けそうだ」




「……もしこのまま続けられれば、な」


 俺の懸念は、後に現状として、俺に襲いかかることになる。



 ────



 圧倒的な加速と、それを存分に発揮可能な『空中そら』という主戦場。

 そして、魔物としては破格の射程と威力を誇るレーザー攻撃。

 HPが低い代わりに防御力が高く、前述した回避能力も含めると、凶悪なまでの防衛性能を見せる。

 空を泳ぐソイツにとっては光剣はまさしくオモチャであり、正に硬くて速くて強い、をそのまま具現化したような存在。

 唯一の救いは、その攻撃が光学バリアを使えば減衰可能、ということだろうか。

 後、今の所はレーザー攻撃が手の平からしか撃ってこない点もか。


 これだけのことが理解できるほどの攻防を繰り広げた訳だが、今の所は危ない場面もなく、ほぼノーダメージのまま戦闘を継続できている。




 今の所は(・・・・)、だが。




 降り注ぐ光の柱を紙一重でかわしつつ、追従する銀色の人型魔物を見やる。

 先程からこいつはずっと、走る俺のすぐ後ろの上空を飛び、両手の手の平から間髪入れずに光線を撃ち込んでくる。

 そこには初期の、安全地帯を探せるほどのスキは見当たらなかった。


 初期は空中に静止しつつ、どちらかと言えば『観測』に重きを置いていたであろう動きが、今では『制圧』と言ったように変わっている。

 即ち、守勢から攻勢へ。

 明らかに敵の動きが、変化しているのだ。


 最初の動きは別に、舐めプ……という訳ではなく、恐らくこいつは様子を窺っていたのだ。

『こちらに有効打が存在するか否か』を。

 ……そして、『敵の攻撃がどのようなものなのか』を。


 具体的に言えば、俺の攻撃に、致命的なほどの威力を持つものは存在するのか。

 そしてその性質、例えば弾道、範囲、射程、威力などを文字通り『観測』し、その結果から敵の攻撃を予測する。

 そしてその攻撃に脅威がないと知られれば、今までとは一転、攻勢に出て来るという訳だ。


 少なくとも、『手榴弾』には、敵を短時間で倒す方法は存在しない。

 それは、確かだ。


「…………そりゃ、そうだよなぁ」


 そして、問題はそれだけじゃない。


 俺の進路を妨害、そして誘導するように放たれる光。

 それは先程の、俺の後を追うように発射されていたそれとは、明らかに性質が異なっていた。


 勿論、威力が強くなっているとか、突然曲がるようになったとか、そういうことではない。

 端的に言い表すとすると、こうなる。

 敵の攻撃の性質が変わったのではなく、敵自体の性質(・・・・・・)が変化したのだ。


 すなわち。

 敵の攻撃が、ただ単に俺を狙ったものではなく、俺の行動も加味したものになっている、ということ。

 守勢から攻勢に代わった影響が、ここでも色濃く出ているみたいだ。



「『エリアボスは人間並みの学習能力を有しており、戦況に応じて最適化される』。つまり、長期戦になればなるほど敵は強くなるのに対し、俺は消耗させられるばかり、って訳か」



 俺は今更ながらに歯噛みする。

 ダメージソースが微々たるものでしかない俺にとっては、限りなく最悪の条件、といっても差し支えなかった。


 森のエリアボスである銀狼に三人で挑んだ際は、ウォータムという明確な火力役がいてくれたから、俺が合流してからは戦闘時間を短縮することができた。

 銀狼自身がその戦局の変遷についてこれなかった、ということもあるのかもしれないが、それを成したのは紛れもなくウォータムの圧倒的な火力故である。

 つまり学習能力を超えるほどの速度で倒すことが、最良の討伐法なのだろう。


 ……しかし、俺単体ではその戦法を使うことはできない。

 理由は勿論、圧倒的な火力不足のため、だ。

 これで敵が回復とかしてきたら最悪以外の何物でもないのだが、どうやらこいつはしてこないみたいだ。

 その辺を考えると、やはり俺は運がいいのだろう。



 そして、長期戦による消耗というのは、何も俺自身の疲労のみを指している訳ではない。

 所持している回復薬や手榴弾の量、そして何よりも光学バリアに填め込まれたバッテリーパックの残量だ。


 ……そう、この戦闘には、明確なタイムリミットというものが存在している。

『AOG 0.50』のバッテリー残量が切れれば、敵の攻撃を一撃でも食らったら死亡。

 ……それに加え、今まではカスダメとして無視できていた些細な掠りが、無視できないダメージとして蓄積していくこととなる。

 勿論バッテリーが切れても戦闘を続けることは可能だろうが、そんな状況でより一層激しさを増した攻撃をかわし切れるかと問われれば、NOと言わざるを得ない。


 ……と言っても、その限界まではまだ数時間程ある。

 流石にそこまで戦闘が長引くとは考えづらいし、考えたくもないが……。


「……っ!」


 白い光が俺のすぐ横を掠め、肩から微量の赤い飛沫が散る。

 自動HP回復(リジェネ)効果のあるタブレットを口に含み、ダメージを相殺する。


 まずい。

 ついに、掠った。

 掠って、しまった。


 回復薬の絶妙な苦みに顔を顰めつつ、俺は思考を重ねる。


 やはり、相手は徐々に、俺の行動に慣れ始めているのだ。

 今までも、不規則な回避を念頭に動いてきたつもりなのだが、どうやら焼け石に水だったようだ。

 こちらの攻撃頻度が減る中、敵の攻撃は俺のHP、そして回復薬の残量を手堅く削ってくるだろう。


 そしてその減った攻撃頻度の中、俺も必死に手榴弾で狙う。

 しかし、衝撃手榴弾の範囲を見切られてきているのか、あまりダメージが入らなくなってきている。


 ……冷静に考えると、それは必定かもしれない。

 投擲故に弾速が銃弾より非常に遅く、弾自体も大きく、認識しやすい。

 そしてこのエリアボスは、銀狼に比べて体の大きさが比にならないくらい小さい。

 故に元々爆発に巻き込みづらく、そして対策もされやすかった、と。


 だからといって範囲が広く、ランダム性の高い破片手榴弾を投げ込んだとしても、敵の防御力の高さからそこまでダメージが通らない。

 伊達にエリアボスは名乗れない、という訳か。


 厄介、と言えば。

 やはりその、高速かつ精緻な飛行能力が一番厄介な点だろうな。

 あれのせいで、既に範囲を見切られている衝撃手榴弾は効果を成さないし、こちらから一方的に攻撃できるような安全地帯が存在しない。

 現状だと、直線軌道と楕円軌道の差を活用できていないのだ。


 逆に言えば、それさえ潰せば大分楽になる、と言ったところか。

 飛行能力の大元は、やはり背中から生えた一対の翼だろう。

 それを破壊すれば、漸く同じ土俵に立てるってことだな。


 だが、一つ懸念が存在する。

 ……手榴弾は総じて、部位破壊には向いていないのだ。

 いや、そう言うと少し語弊があるだろうか。


 平均的なプレイヤーのような、ある程度柔らかい対象ならば、四肢を吹っ飛ばすことは難しくはない。

 相手が破片や衝撃で破砕できる程度の硬さならば、手榴弾でえぐり取ることができる。

 しかし硬い敵への貫通力や破壊力という点に関しては、やはり銃弾や光学銃には及ばない。

 どうしても、衝撃や破片は分散するから、一点集中で破壊するのには向かないからな。



 総評としては、状況は絶えず悪化している、としか言えない。

 もっと最悪な状況が想像できるだけに、最悪と胸を張って言えないのは少し寂しいような気もするが。

 だが、実際に俺の想像する『最悪』よりはましな状況、と言うこともできる。

 例えば回復はしなかったり、一応普通にダメージが通ったりな。

 勿論悪いことには変わりないが、まだ打つ手はある、といった感じだろうか。



 俺は口元に微笑を浮かべ、そして呟く。



「…………本当に、俺は運が良いな」



『ウルフザレイ』を起動し、足を止め、振り返る。

 多大な光量とともに、曇天に浮かぶそれは、今までにない俺の行動に少し戸惑いを憶えているのかもしれない。



 俺はとある手榴弾を手にし、エリアボスに指を向けて言い放つ。



「勝手に俺の限界を見定め、様子を窺うのを止めて攻勢に出た」



「そんなお前に、一つ教えてやるよ」




「切り札は最後まで、誰にも悟らせないものだってことをな」


 そして俺は、その手榴弾を投擲した。

読んでくれてありがとござますぁ!

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