48話 会議
速筆になりたいなぁ……なんて。
勿論ストックはまだまだあるけど、書く速度が上がらなくてつい投稿を渋りがち。
本当に、読んでくれてる人ありがとう☆
魔物の大群が、こちらに迫ってきている。
街に到着するのは、約1時間後、西門近くでの戦闘となるという。
それは中層や浅層の魔物を中心に、時折深層の魔物も混ざっており、その物量は明らかに数人のプレイヤーの許容量を超えている。
故に俺達は一時的に徒党を組み、街の境界を最終防衛ラインと定め、壁の中や上からそれを守り抜く。
そんな計画だ。
ちなみにそのライン上にある門を突破されたら敗北。
門の大きさ(人間や車両が通れる部分のこと)は、幅50メートル、高さ30メートル。
10×10キロメートルである街の大きさに比べれば些細な大きさだが、魔物の群れの大きさは確実にそれ以上になる。
壁の強度については今更心配はいらないが、念のため門以外に近づく魔物も掃討。
余裕がなくなれば、門の近くに来たものを重点的に叩けと。
走りつつ、受付嬢さんの話を俺なりに要約すると、こうなるらしい。
俺の経験と下見による補足もあるが、概ね間違いはないだろう。
というか受付嬢さん、俺と同じくらい足速いな。
……とか思ったけど、俺敏捷値初期値でしたね。
それだけだと凡庸、ってことか。
「それで、肝心の兵力と魔物の数はどのくらいなんだ?」
「今現在で、50人程度はいます。魔物の数は今現在も増えていくと思われますが……最低でも200は超えてくるかと」
「成る程……」
籠城戦において、攻めてくる敵が防衛側の3倍いると、拮抗するという話を聞いたことはある。
数のみ見ると少し厳しいような気もするが、今までの傾向を見る限り魔物にはあまり遠距離攻撃をしてくる奴はいない。
ウォータムが複数の銃に勝てないように、魔物も数が多くそこそこタフとはいえ突破するのは難しい……と思う。
……まぁ、時代も違うし、鵜呑みにするべきではないがな。
参考程度に考えるべきか。
100%防衛を考えると、もう少し人員を集めた方が良いかもな。
「もっと兵は集められないのか?」
「作戦を伝え、態勢を整える時間も考えると、多分あなたで最後になりそうです」
「それもそうか……」
少し、ゲーム的に考えてみよう。
……俺みたいなプレイヤーが巻き込まれている以上、これはプレイヤー参加型である可能性が高い。
もしかしたら俺のみに起きている個人イベントである可能性もあるが、俺がそこまでのことをしたようには思えない。
恐らくその時間にインさえしていれば、予め会ったことのある受付嬢に誘われる、みたいなことかもしれない。
……だが。
このゲームにインしている人間が、50人くらいしかいないとは考えづらい。
……しかし、個人イベントらしきものが、こんな大掛かりなものになるだろうか。
「何かの条件で参加兵士を絞るなりしているのか?」
「それはしていないのですが……実は、参加を渋る方々もいまして」
「……あー」
成る程、時間的余裕がない、もしくは強さに自信のない、後はそもそも誘われていないとかか。
まぁそれでも多少無理がある気もするが、発見からそう経っていないとしたら有り得るな。
……1日前ぐらいに発見できるように頑張れよとは思うが、ゲームだしな、これ。
多少の無理は押しとおるべきだ。
「あ、もうすぐ作戦会場に着きます」
そう言って彼女が指さすのは、全面をガラスで覆われた、背の高い、なぜか特徴的なビル。
……そう、役所だ。
いやまぁ、道のり的にある程度わかってはいたがな。
「……結果的にここになるのね」
「なんのことですか?」
「いやなんでもない」
この受付嬢さんと役所の外で会ったと思ったら、結局役所に戻されたとか思ってはいない。
「で、肝心の兵士たちはどこに集まってるんだ?」
「はい、あそこの10階に皆さん集まっていただいております」
「10階か、なんかコメントしづらい数だな。もっと低かったら後の階何に使ってるんだよとか言えるんだが」
「ちょっと意味が分かりませんが、言いたいことはわかります。適度な高さな気がしますよね」
「区切りも良いしな」
曲がりなりにも、街の危機だ。
ある程度の高さ、つまり重要性、隠匿性がなければツッコめたのだが、どうやら封殺されたようだ。
それも微妙な感じに。
……まぁ、傭兵みたいな立ち位置にいる俺らに対する措置としてはそこそこではあるか?
いや、気にしない方が良さそうだな。
「……ところでさ」
「何でしょうか?」
「あんたさ、結構余裕ない?」
「気のせいじゃないですか?」
「絶対余裕あるよな……なんでだ?」
「強いて言うなら、あなたが間抜けなことばかり言うからですよ」
「そこまで言ってないと思うんだが……」
「……変態」
「それは確実に脈絡がないと断言できる」
というかよく考えたらさ、さっき会った時のセリフもいささか変態チックだったよな。
なんでそんな偏見を持たれているんだ?
そしてなんでこんな余裕そうなんだ?
これは本当にわからん。
誰か教えてくれよ。
「ほら、そんなアホなことを言ってる間に着きましたよ」
「アホはウォータムのだけのはずなのにな……」
「そんな釈然としないような顔をしてないで、はやくいきますよ、時間はもうないんですから」
「……釈然としないな……」
この人は、アンとは違う意味で苦手かもしれん。
……よく考えたら俺、NPC相手に好感を抱いたことが全くないな。
人としてはそれが正常なのかもしれないが、どこかおかしいような気もする。
なんか、釈然としないなぁ……
そんなテキトーなことを考えながら、俺と受付嬢さんは会議室に向かうのだった。
────
「たのもー」
大きな音を立てて扉を蹴り開け、そんな第一声とともに中に入る。
場所は役所の10階、兵士50人の集まる会議室だ。
だだっ広いそこには、机が長方形上に並べられており、それらには銃を肩から提げた兵士たちが腰かけていた。
ここは多分、現状のように大人数での会議に使われているのだろう。
全面ガラス張りであるこのビルの端の方に位置しているらしく、一面には灰色とネオンが浮かんでいる。
それ以外には特に特筆すべき部分はなく、強いて言うならば、兵士の殆どがこちらを見ている、ということのみだろうか。
「遅くなって悪かったな。席は空いてるか?」
近くにいた1人の男が、無言で一点に目線を向ける。
隣に明らかに異彩を放つ、1人のプレイヤーがいた。
正直、隣に座るのに勇気がいるほどだ。
……いや、だからこそ空いてるんだろうな、うん。
そして実際、そこしか空いていないようだ。
仕方ない。
俺はそこに座り、隣にいるそいつを見やる。
まず目につくのは、頭の前面のみを覆う、無骨なガスマスクだ。
その目元はマジックミラーのような構造になっており、その表情はうかがい知れない。
そしてその境目からは燃えるように赤々とした長髪が覗き、後頭部で1つに結いあげられている。
動きやすそうな服装に身を包んでおり、その均整のとれた体のラインをこれでもかと晒している。
全体的に黒で纏められており、それだけに赤色のポニーテールが目立つ。
……だが正直、それらのことはどうだっていいのだ。
彼女がスレンダーな体型であるであることも、それ以上に危ない雰囲気を漂わせていることも、本当にどうでもいい。
そんなことよりも俺は、まずいことに気が付いてしまった。
この女、座高が俺より高い。
足の長さも含め、恐らく身長は180センチちょい程度だろうか。
比較的高めだったアリサや凪は勿論、ウォータムやフィリトよりもでかい。
横のサイズで言えば俺より少し細いのだが……くそ、やってられねー。
嫉妬で腸が煮えくり返りそうだ。
俺が嫉妬の炎を燃やしていた時、彼女は口を開いた。
「……どこにでもいそうな顔だナ」
「いきなり辛辣だなお前、唐辛子みたいな髪しやがって」
おおよそ品性も女性らしさも感じられない口調で、彼女は毒を吐いてきた。
突然のことながら、なぜかするすると煽りの言葉がでてきた。
「唐辛子と見間違えるなんて、相当目が死んでいるらしいナ」
「辛辣とかけていることもわからないとは、言語機能が熱でいかれちゃってるんじゃないか?」
「今時そんな表現、ガキだって使わないだロ。どうやら死んでんのは目だけじゃなさそうだナ」
「理解できている時点で、お前の脳みそも死んでるのも確実だな」
「知らなくてもある程度は予測できる可能性に思い至らない時点で、オマエよりオレの方が上手であることは確かだナ」
「俺より優れているという具体的な根拠がないと俺は納得できないが、そんな証拠ないだろ? そもそも1つの数値では測れないようなものを勝手な憶測で勝手に裁定し、勝手に他人に押し付けるのは馬鹿のやることだ」
「それ、ついさっきオマエもやってただロ」
「別に馬鹿であることは否定しない。俺はただ、お前より劣った存在だと思われることが我慢ならないだけだからな」
「……やっぱそのうざったらしい態度、どこかの知り合いに似てて吐き気がするナ」
「奇遇だな、俺もだ。もう二度と関わりたくないなお前とは」
そう言って、俺は彼女との会話を打ち切った。
どうやら彼女はNPCではないらしいから、俺の苦手な奴は全員NPC説は否定されてしまったようだ。
まぁ、世界のどこかにはこのくらい反りの合わない奴もいるだろうな。
俺と彼女の小声による冷戦が終わったところで、司会進行役であろう男性(NPC)が咳払いをし、
「……ごほん。では、この戦闘についての説明を行いたいと思う。質問は時間を設けるから、その際に纏めて言ってくれ」




