表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
49/65

47話 異状

改訂の主な箇所はここですm(__)m

前の部分も少し追加されていますが、既読の方にはそこまで変化ありませんのでご了承を。



8/15……さらっと時系列を改訂していくぅ~☆

「トナカイさん、一週間ぶりですね!」

「そうだな、久しぶり。そしてテストお疲れー」

「さっきぶりだな、トナカイ!」

「お前もアバターという意味では一週間ぶりだがな」


 その一週間後、テストを終えた俺達はその放課後に集まっていた。


 ましろがふと、俺を凝視して言う。


「あれ? トナカイさん、衣装チェンジですか? それも凄く似合ってますよ!」

「ああ、ありがとう」

「本当だ、変わってる。全然気づかなかったわ」

「……ウォータム。俺だからいいが、他の奴にはちゃんと気を配ってやれよ」

「? どういうことだ?」

「わからないならいい。なぁましろ?」

「あー、お兄ちゃんはそういう所鈍感ですものね」

「だよなー」

「…………?」

「とりあえず、ちょっと待ってろよ」


 アイテム欄から二つのものを取り出してトレード画面を開く。


「はいこれ。受け取っといたぞ」

「え? あ、これもしかして……!」

「銀狼……て、アイツか! そう言えば頼んでたな……すっかり忘れてたが」

「一応苦労して倒したんだぞ? 忘れんな」


 トレード完了の画面を閉じ、各々が装備を実体化して身に着け始める。

 ウォータムの手から大剣が生え、重力に引かれるように彼の腕を少し落とす。


「うお、これ結構重いな」

「大丈夫か? ウォータムの筋力値があればある程度扱えるかと思ったんだが」

「いや、いける。光剣みたいに自由自在とまではいかないがな」

「それなら問題ない。光剣とは使い方が根本的に異なるからな」

「そうなのか?」

「詳しくは後で説明するが、多分どっちも使うことになるだろうよ」

「そうか……良かった」


 大剣を背中に提げるウォータムを尻目に、後ろを向くと、そこには勿論のことましろがいた。

 緑色を主体とした迷彩服と、迷彩帽。

 それはいつもと変わらないのだが、その間、首元を覆うようにスカーフが巻かれていた。

 背中に掛けられた狙撃銃『M110』も含め、順調に白の浸食が始まっているような気もする。

 …………と言っても、純白なのは彼女の髪と肌のみなのだが。


 ……とか考えている、自分が少し怖い。


 ましろは見られていることに気づいたのか、わたわたと手を振って応える。


「あ、こっちも大丈夫ですよ! と言ってもスカーフですから、直接戦闘に影響したりはしませんが」

「ああ、凄く似合ってるぞ」

「そ、そうですか? あああ、ありがとうござます」

「それに、戦闘で自分を鼓舞できたりもするしな。それがある意味強さに繋がるのかもしれない」

「成る程……まぁつまり、めっちゃ頑張ればいいってことですよね!」

「まぁこれはゲームだし、そんな肩ひじ張ってやんなくてもいいかもしれないがな」


 その他諸注意的な説明を挟み、俺はパンと手を叩く。


「よし二人とも、装備確認は済んだか?」

「はい!」

「俺も大丈夫だ!」

「そうか、じゃあ早速だが狩りにでも行くか?」

「そうだな!」

「その前に一応、ご飯済ませときませんか?」

「それもそうだな」


 そんな他愛もない会話をしつつ、俺達は兵糧通りへの道を歩く。

 そんな、時だった。



「……あれ、これって何ですか?」


 ふとましろが、壁に貼り付けられた、茶色みがかった紙を指さす。

 その見慣れぬ紙には、暗闇に浮かぶ銀色の人型が映った写真とともに、こう書かれていた。



 ────────────────────

 WANTED


 風貌:銀と黒の軍服に身を包んだ、黒髪の少年。中距離からの即死攻撃を得意としており、手のひらから光線も撃ち出せるという。

 罪状:防衛プレイヤーを全員殺し、彼らが得られるはずだった利益を全て奪った疑い。

 賞金:その時の状態に応じて、一万~五万G。

 ────────────────────



 ましろがそれを見たまま、固まっている。

 ぎぎぎぎ、とまるで油の切れたブリキ機械のように、こちらを向く彼女。

 その目は全く、笑っていなかった。


 冷や汗が、流れ落ちる。


「…………トナカイ、さん?」

「…………なんでしょうか」

「……あの後、何してたんですか?」

「……いやまぁ、一種のギャンブルだよギャンブル。昨日は運よく大勝ちしてな」


 そう言って俺は、自分の所持金の値を見せる。


『501025』


 六桁にも渡るそれを見せられ、またもフリーズする彼女。


「…………トナカイさん」

「…………はい」

「本当は、何があったんですか。怒らないですから話してください」

「…………話すと長くなりますが、よろしいでしょうか」


 そう前置きをおいて、俺は話し始めた。

 二人がログアウトした後に、一体何が起きたのかを。




 ────




 時は戻り、一週間前の夜。


「……あ、俺も落ちるわ、また明日なトナカイ!」

「ああ、また明日な」

「またです!」


 そんな言葉を残して、2人が粒子となって消える。

 それは、彼らがログアウトした証だ。

 次ログインしてもそこに現れるため、今この世界に2人はいないことになる。

 ……まあ、そのこと自体は別に珍しいわけでもないがな。

 その状態で俺のみいる、というのはとても珍しいことだ。

 なぜだろうか、少し感傷的な気分になる。


 空を、見上げる。

 そこにはいつもより少し暗い、曇天が広がっているのみだった。


「……ふう」


 少し、溜め息を吐く。

 そういえば、このゲーム内で2人がいないのは、初めてだっただろうか。

 このゲームでは1人で行動することは少なく、大体ましろかウォータムがいたからな。


 周りの、妙に騒がしい喧騒を視界ごとシャットアウトして、俺は物思いに耽る。

 どうせ街中だし、食事もあれから定期的に摂っている。

 死ぬことはほぼあり得ないだろうから、周りを気にせずともいい。

 ここは、戦場ではないのだから。

 ……まぁ、戦場も死のどちらも、運営に造られた偽物でしかないのだが。


 俺は、先程の会話の一部を反芻してみる。


『まぁこれでも良いかもしれないな。どうせプレイヤー同士の戦争はその内来るだろうし』

『……どういうことだ?』

『別に、大した話じゃない。これが実弾銃を扱うゲームである以上、そっちが本命だと俺は思うからな』

『……成る程、つまり大会とかが来ると、そういう訳ですか』

『そうそう』


 先程はこう言ったが、少し語弊があるかもしれないな。

 まるで明日や明後日が、当たり前に来ると楽観視しているように見える。

 ……そうならない可能性だって、あるかもしれないのだ。


 俺は一応、このゲームに対しての疑念は抱いたままでいる。

 今の所悪意の見えない『CWO』ではあるのだが、腑に落ちない点が多すぎるのだ。


 まず、運営の意図が不明瞭な点。

 なぜ、このゲームを造ったのか。

 そして、なぜ無料かつ秘密裏に配り、プレイさせているのか。

 今の所は人体実験である可能性が濃厚ではあるのだが、俺としてはどうしても、それはどこか間違っているような気がしてならないのだ。


 そんなことのために情報操作やVRMMOの開発を行うというのは、圧倒的にコストの無駄だ。

 他国からの遠隔攻撃……というのも同じくコストや実現性の問題から考えにくい。

 ……まぁ、そんなことを言ったら何の可能性も思い浮かばないのだが。


 ……なんというか、どことなく歪な気がするんだよな。

 そもそも、今の人類がこのゲームを創り出せるとは到底思えないのだ。

 そこが全ての元凶であるような気もする。

 それが、次点の疑問だ。


 勿論、世界には俺の頭では考えも及ばないような天才がいることは確かだ。

 だが、それらの可能性を加味しても、これほどまで感覚を再現した別世界の創造というのは、人類にはまだ不可能としか思えないのだ。

 それほど、もう一つの世界を感じさせるほどのVRMMOという次元は、はるか遠くにあると俺は思う。


 それほどまでの技術、そして徹底的な情報操作、一方通行の換金システム。

 これらには不条理なことが多すぎて、もうどこから突っ込めばいいのかがわからないレベルだ。

 ともかく、そんな力を持っているのにどうしてこんな手段を取っているのか、という点が不可解なのだ。

 ……だが。


 このゲームを一度プレイすれば、わかる。

 これは、少なくとも俺達を害そうという意思を込められて造られたものではないことを、どこか直感的に理解できるのだ。

 現実の感覚を遮断し、運営の影も形も見せない……というより最低限にすることで、ここは『現実の世界』ではなく、『もう一つの世界』と見ることができている。

 某夢と魔法の国のように、ここでは現実の自分ではなく、別の人間だと思える『何か』があった。

 要するに、まるで『第二の人生』を歩んでいるような、そんな気分になれるのだ。


 それがあるからか、俺は勿論、ましろやウォータム、そして今もプレイしているプレイヤー達も、今までこの世界に入り浸ってきたのだと思う。


 勿論それが催眠の一種である、という可能性も考えた。

 徐々に催眠にかけていき、俺達プレイヤーを駒として操ろうとしているのか。

 …………もしくは。



 プレイ中に俺達の体を乗っ取る、とか。



 まさかな、と思いたいが、机上論で言えば可能と言える。

 これはあくまで俺個人の予測だが、今俺が頭に付けているであろうVRギアは、五感を一時的に掌握し、疑似的に感覚を遮断、そして『CWO』の世界に繋いでいるのだろう。

 もしくは俺個人の中で全て完結している、という可能性もあるが、それはもう完全に手遅れなので無視する。

 ウォータムやましろとの冒険が全て俺の妄想だったとか、有り得る訳がない。

 俺にそこまでの想像力があるとは思えないし、あったらこんなゲームやっていない……と思うしな。


 まぁ、俺がなんでこんな怪しいゲームやっているのかと言えば、言えることはこれしかない。


 どうせ、俺にはもう失うものなんて何もないから。

 その程度のリスク、初プレイ前にも考えた。

 俺はその葛藤の中、プレイする道を選んだ。

 それはもう、変えられないのだ。


 …………何より。

 そんな程度のリスクで人類最高峰の技術を体験できている、と思えば。

 多少はありがたみがあるような……ないような。


 とにかく。

 俺はもう、突っ走ると決めた。

 たとえそこに何が待っていようと。

 俺は。



 目を開いて、空を見上げる。

 そこには、少し暗くなった曇天が、相も変わらず存在していた。

 街の四方を囲む壁が、視界の端に映り込む。



 こうしてみると、本当にこの世界は良くできていると思う。

 ……よく、できすぎている。

 先程も言ったが、ここは一種の世界だと思わせる何かがあり、そこに運営の影も形も見えないのだ。

 ここがゲームだとわかってはいても、どうしてもどこかこの世界に肩入れしてしまう自分がいる。

 魔物蔓延る世界で銃を持って戦う、1人の兵士として生きているような、そんな錯覚を覚えてしまう。


 ……そんな訳が、ないのに。

 この世界は所詮幻想で、現実ではないはずなのに。

 どこか、溺れてしまいそうになる、自分がいた。


 俺は、また目を瞑る。

 そして、考えを巡らせる。


 ……いや、わかっている。

 俺は本当は、わかってはいるのだ。


 俺は理解も、納得も、自覚もしている。

 この世界が幻想であり、俺は、半井悠莉は、『トナカイ』という名の兵士ではない、と。

 そして俺は、実際その通りに行動している。


 なぜ、そうわかるか。

『トナカイ』と『半井悠莉』は、本質的な何かが、食い違っているから。

 根拠もある。


 俺は、現実リアルでは────



 真っ暗な視界にちらり、と赤いものが舞う。

 それとともに頬に感じた、軽い、それでいて確かな、痛み。

 僅かに減る、HPバー。

 俺はその現象に、少しだけ心当たりがあった。


 破片手榴弾で、自分の片腕を吹っ飛ばしたとき。

 衝撃手榴弾で、自分の両足をずたずたに引き裂いたとき。

 ……文字通り自爆ばかりなのは、気にしない。

 ともかく規模は違えど、俺はその現象と同様のものを、経験していた。


 それは、ダメージ。

 ……街中では絶対に発生しないはずのそれが、このとき、俺の体に生じていた。


 ……いや、おかしい。

 なんで?

 そもそも死ぬ理由は、空腹のみであるはずなのに。

 空腹じゃダメージエフェクトは出ず、じわじわと最大HPが削れていくはず。

 ……だからこそ、わかりづらいんだがな。


 それはともかく、空腹だとしてもダメージは受けないはずなのだ。

 だったら俺は、ダメージを受けていない?

 ……否、目を瞑っていても見える赤いエフェクトなんて、ダメージしかあり得ない。


 だったら一体、何が起きた?

 一時的に安全地帯の要因、つまりダメージ無効が消えたのか?

 可能性はある。

 だが、その理由がわからない。

 なぜ?


 ふと、思い出す。

『非戦闘地域』という単語を。

 そうだ、確か。

 あの説明書には、確かにそんな単語が、街と同列に書かれていた。

 だからなんだ?

 いや、良く考えろ。


 ゴーシュが、言っていた。

 ここが、『非戦闘地域』でなくなった、唯一の例外を。

 非戦闘地域ではなく、戦闘地域に、なってしまった原因を。


 確か、それは────




「もっと刺激が欲しいんなら、くれてやりますよこの変態が……ッ」



 ふと、いつぞやの受付嬢の姿が見えた。

 彼女は開いた手を振り上げ、俺の頬に叩きつけてきた。

 さっき痛んだ頬とは、逆の頬だった。


 赤い微量のエフェクトが、舞う。


「ど、どうしたんだ受付嬢さん!?」

「どうもこうも何も、こんな時になんでそんな、ぼーっとしてられるんですかね……?」


 彼女は最初の時、初日にスキルを確認した時と同じように、冷ややかな目線を向けてくる。

 思考が、冷えていく。


「……成る程、現状を簡単に説明してくれないか?」


 恐らく、彼女の言うこんな時と、俺の言う異状とは、同じ原因を辿るものだろう。

 俺も言葉に対する返答は、果たして、俺の思考とほとんど合致したものだった。





「魔物が、大群をなして、この街に向かって来ているんですよ!」



 役所ここじゃない所で会ったら、またよろしく。

 何気なく放っていたその一言が、予想だにしない所で繋がったような気がした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ