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40話 アン

「……効率的で、何がいけないのよ?」


 効率が過ぎる故に、非効率。

 彼女はその意味を、まだ理解できていないようだ。


「単純だ、人材というリソースを割り当てるところを根本的に間違えてるんだよ」

「……」

「その間違いさえなければ、確かに効率的だろうな」

「……その間違いってのは、結局何なの」


 俺は端的に言い放つ。


「集客だ」



 ────



「そ、そんなの……!!」

「まぁ待て、言いたいことはわかる、良いから任せろって」

「……」


 そもそも、飲食店の繁忙期に、この程度の客の入りしかないことが異常なのだ。

 勿論ここは別世界も同然だが、それでも流石におかしい。

 当然その分こちらの負担も減るはずなのだが、それならおかしいことがある。


 兵士を雇う、その理由だ。

 普通に考えて、料理人やら接客業に長けた人材を雇うべきなのだ。

 多少コストが割高になるとはいえ、そちらの方が断然良いに決まっている。

 それなのに、しない。



 なぜか。

 それは、圧倒的な人材不足だ。

 そして恐らく、これはゴーシュの言っていたことと関係している。



 あいつは言っていた。

『1ヶ月前、魔物が侵入してきた』と。

 その魔物によってあいつの親のエリンズが重傷を負い、現場に復帰できないと。


 その言葉を思い出し、俺は気づいた。


 それと同等、もしくはそれ以上の被害が、ここを襲ったのではないか、と。

 よく考えれば当然だ、ここには食料が豊富にある。

 魔物が偏食で、人のみしか食いたくないとかいう理由じゃない限り、まずはこっちの方に来るだろう。


 そしてその影響で有用な人材が減少したのならば、彼女が兵士に恩を着せて働かせようとする、その心理にも納得がいく。

 それほどまでに、追い詰められているのだろう。


 そしてそれは、どの店も似たり寄ったりのはずだ。


 だからこそ、付け入るスキがある。

 普通なら使えないような戦力が、今この場所には3人もいる。

 3人分リードしていると言い換えてもいい。


 ……勿論、この店が平均ではなく、最底辺という可能性はある。


 ……だがな。

 今まではそうだったとしても、これからはわからない。

 今からそれを、教えてやる。


「どうせ、今来ている客は常連客ばかりなんだろ?」

「……」


 それはわかってるみたいだな。

 ……じゃあ。


「その常連客が、何を求めて、ここに来るかわかるか?」

「……料理?」

「普通すぎ。そんな陳腐な回答は求めてない」


 確かに料理も1つの要素ではあろうが、全てではない。

 俺はその、他の要素を聞いたんだ。


「なんとなく、この答えはお前じゃ出ない気がするから、もうネタバレしちゃうな」

「……」

「常連客の目当て、それは……」


 俺は、目の前の少女を指さし、はっきりと言い切った。



「お前自身、だよ」



 俺の言葉に、彼女の瞳はまん丸に見開かれた。



「……え?」



「だから、お前を1目見るために通ってるんだろ、客どもは」

「……待って、それってつまり……」

「……訂正めんどいし、勝手に言っとけ」


 男なんて、至極単純なものだ。

 それを知らないお前に、こんな言葉をやろう。


『可愛いは、正義』


 男は所詮、それを信条にして生きているような奴らが大半だ。

 残りの奴らも、美少女に食いつかない奴がいるはずがない。

 俺も一応、そうだからな。


「ともかくお前にはずっと、人目の付く所にいてもらうぞ。猫被りの準備はできたか?」

「……猫被りって言った!? あたしそんなことしてない!」

「どうだかな」


 俺は彼女に背中を向け、


「客どもの相手は頼む、こちらもせいぜい頑張らせてもらうとするよ」

「給料分は、働いてよね」

「当然だ……あ、そうだ、1つ言い忘れてた。客には必ず、これを言うように心がけてくれ」

「え……あ、うん。わかったけど……」

「意味はそこまで考えるな、行くぞ」

「う、うん」



 ────



「お食事なら、こちら『馬のしっぽ亭』でいかがでしょうかー!?」


 外でましろが声を張り上げ、精一杯人を集めてくれている。

 それを聞いて、次々とNPCやらプレイヤーやらが入店してくる。

 その中にはどうやらましろのことを知るもの(売却金バラマキ事件参照)もいるらしく、そのお礼として入店してくれた。

 そしてその知り合いも──etc。

 そしてその、ましろ効果と呼ぶべきものは絶大で、あれよあれよという間に満員になってしまった。

 ……流石の人畜無害力、その力は圧倒的だ。

 ……流石にここまでとは、予想外だった。

 なんだこれ、経過1時間でついでに列まででき始めた。


 …………………………すごっ。


「ちょ、並んでるわよ、どうするの!?」

「ちょ、ましろ一旦撤収! 流石に集めすぎ! もうずっと接客しとけ!」

「はい!!」


 そこそこ人が並んでるだけで、人気店だと勘違いされてまた人が増える。

 捌ききれるかな……これ。


 とりあえず接客は茶髪とましろ、そしてもう1人の従業員さん(女性)に担当してもらうとして、問題は厨房。

 料理やったことない系男子が2人と料理人が1人。

 最初は自分の案とはいえ、大丈夫なのかという気持ちが働いたりしたが。


「ははははーーーッ!!」


 ウォータムはノリ良く素材を包丁で一刀両断しているし、俺はある程度言われれば慣れる。

 最初は少し難航したもの、途中からはそこそこの速度になったと思う。

 むしろ、接客が少し追いついていないくらいだろうか。


 ……よし。


「ウォータム、それ運べ! 12番テーブルだ!」

「あいよ!」

「違うそれじゃない、あれだよあれ!!」

「は!? じゃあどれだよ!?」

「あれだっつってんだろうが!?」

「だからあれがどれだって聞いてんだろうが!?」

「トナカイさん、これですよね?」

「そうそうそれそれ。流石ましろだなぁ」

「それさっき俺が運ぼうとした奴じゃなかったっけ……?」

「気のせいだ」

「気のせいじゃねーよ!!」


 とまぁ、こんな感じの茶番(主に俺による)がありつつも、意外と順調に進んでいった。



 ────



「はぁ……やっと捌き終わったな」

「そうですね……無事捌ききれてよかったです」

「……だなぁ」


 俺達3人は、やりきったという達成感に浸っていた。

 実際、そうだ。

 5時間近くぶっ続けで、ずっと働き続けたのだから。

 ……いや勿論、短いってことはわかってるよ?

 でも、バイト経験のない(ましろの場合はなさそうな)3人が5時間てんてこまいになれば、そりゃ疲れるものでしょ。


「……ねぇ」


 そんな充実感に満たされていた俺の服を、誰かが引っ張る。

 少なくとも、目の前にいるましろではない。

 ということは──


「ウォータムかっ!!」

「っきゃぁ!?」


 全力で振り返り、ウォータムにヘッドバットでもくらわそうかと思ったのだが、どうやら違ったらしい。

 そこにいたのは、やはりというかなんというか茶髪店員だった。

 そりゃそうだ、ウォータムが『ねぇ』とか言ったら、鳥肌立って死ぬわ!!


 ……うわぁ…………。


「……お前は一体、俺をどんな目で見てるんだ」


 ウォータムの戯言は完全スルー。



「で、どうかしたか?」

「……結局、どういうことなのよ、これ」


 彼女は、今まで嫌というほど言わされたその文を反芻する。


『これからも、日曜日のお昼に来てくださると嬉しいです!』


 彼女とましろ、そしてもう1人の従業員に、頑なに言わせ続けた言葉。

 それには勿論、意味が込められている。


「親切にされた人に、~日に来てくださいと言われれば、その日に来たくなるのが人間ってものなんだよ」


 そして普通洋食なんて、一週間に一度か二度食えれば十分だろう。

 そう考えると、比較的曜日ごとの偏差は少なくなるのだ。

 勿論土曜と月曜はそれに比べ少ない部類かもしれない(日曜にたくさん来るから、その前日に食いに来づらい)が、それは日曜日への準備や休憩に使えばいいさ。


「…………でも、なんで日曜日に限定するの? それでも兵士の人は不定期にしか働けないから──」


 ……そう、それが俺の作戦の最大の欠陥。

 兵士は、プレイヤーだ。

 それ故に、働ける時間が不定期になりやすい。

 ……だが、そのそもそもの前提が狂えばどうだ?


「…………ウォータム、ましろ。言ってやってくれ」


 俺は静かに、2人の肩を押した。

 2人は、声をそろえ、誓った。



「「私(俺)達は、日曜日のお昼、必ず働きに来ると誓います」」



「…………え…………!?」


 茶髪店員は、暫しの間固まっている。

 その間を誤魔化すために、俺は口を開いた。


「勿論、俺もな……つっても、ここにバイトが入ってきてある程度安定するまでの間だがな」


 誤魔化せなかった。

 …………まぁ、いいや。


 未だ動かない彼女に対し、俺は言葉を重ねる。


「……そもそもな、魔物の襲来が起きたことを知らない人間がいると思ってるのか?」

「……いない、と思う……」

「だろ。だからさぁ……あの、その、気休めにしかならないかもしれないが」


 俺は、自分より少し低い彼女の頭を撫でる。


「……少しくらい、人に甘えても良いんじゃないか?」


 お客さんとか、他の従業員さんとかにさ。

 魔物の被害で処理速度が落ちていることを正直に伝えれば、お客さんだって待ってくれる。

 更に言えば、多少遅くても、料理に心がこもってれば何も問題ないんだよ。


「…………」


 彼女は俯き、ふるふると震えていた。

 ……どうした?



「…………………………ぅ」

「う?」

「ぅぇぇええええええん」

「おわっ!?」


 甘い匂いが鼻腔をくすぐり、触れる柔らかな感触は微かに残った下心を燻らせる。

 最初は何が起きたのかわからなかったのだが、持てるSen値(※初期値です)を駆使して、ようやく現状を理解した。


 俺は、名前も知らない女の子に、抱きしめられていたのだ。


「い、今だけ……ひっく、寄りかからせて……」


 彼女の涙と鼻水でぐしゃぐしゃになった顔を見て。

 俺にはただ、彼女の頭を撫でつつ、こう言うことしかできなかった。


「……頑張ったな」







「………………アン」

「………………俺は、トナカイだ」

「………………知ってる」

「………………そうか、よろしくな」

「………………うん」



 ────



 次の日のこと。

 高校から帰り、早速インしてみれば。


「ちょ、これどうすんのよ!!?」


 行列のできた、『馬のしっぽ亭』の姿があった。


「……あー、これはちょっと、見通し甘かったな」


 とりあえず、早めにバイト候補が見つかることを祈ろう、うん。

 ……お客さんが増えることは、悪いことじゃないよね、うん。

 魔物被害のせいで処理速度が低いってことを、どうにか伝えてくれ。


「ちょ、トナカイ!? どこ行くつもりなのよ!? おーい、ねぇってば!?」


 物事には、諦めも肝心だよね、うん。

作者は経営ドシロートであり、この辺の話を書くにあたり迷走してました(笑

正直、飲食店が出て来てからの流れに自信ありません(汗

今後、もっと詳しくわかりやすくするために大幅な改訂を加える可能性があるため、よろしくお願いしますm(__)m


ここまで読んでくださり、誠にありがとうございます。

ここからもっと沢山の銃や剣、そして手榴弾や個性的なプレイヤーが出てきて面白くなる(予定)なので、今後ともよろしくです!


(ついでに、過去話もちょくちょく変更してますが、話の流れに大幅な変更はないので興味とお時間があるお方だけ見直してみることをお勧めしますぁ)

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