2話 チュートリアル
4/11:全体的に話の流れを改訂。
4/12:またまた改訂、あーあ、飴描写入れるの忘れてたorz
「……そろそろか」
壁に立て掛けた時計を頻りに確認し、呟く俺。
実はそう呟いたのは3回目なのだが、それはご愛嬌。
時刻は午前9時50分、後10分でCWOの正式なサービスの開始である。
……ああいや、これ書いた奴の嘘がばれる瞬間だ、間違えるなよ俺。
はは、こんなものに期待している奴の断末魔が、目に見えるようだ。
……俺も含め。
「……だが、この後少しが長いんだよなぁ」
手持無沙汰な俺は、ベッドに寝転んで手に抱えたVRギアを見つめる。
……せっかくここまで待ったんだ、ここからは本当に始まる可能性を考えた方が良い。
そのために、ある程度書も読んだんだ。
真偽はわからないが、何も知らないよりはましだ。
ただ、1つ合っていたからと言って、他の情報も確証もないのに信じるのは避けるべきだ。
……プレイスタイルや使いたい武器も、決めてしまったが。
これで全く別のゲーム性だったら、少し痛いなぁ。
……まぁ、VRMMOができる時点で、嬉しいことに違いはないのだが。
……てか結局、開始時刻は本当にこの日の10時きっかりみたいだな。
前から試していた俺が、馬鹿みたいだ。
そんな、取り留めのないことを考えながら、俺は時間を潰した。
「……そろそろか」
時刻は、9時59分。
俺は4度目の台詞を反芻しつつ、ギアを被る。
そして────
『ようこそ、クルーエル・ワールド・オンライン通称CWOの世界へ! 私はチュートリアルを担当する、ガブリエルと申します』
そんな、甘ったるい声が耳に響き、俺の意識は覚醒した。
咄嗟に見回すと、無数の正方形で構成された、真っ白で無機質な部屋にいた。
そして目の前には、金髪碧眼の幼女。
その背中からは1対の、大きな翼が生えていた。
こんな光景は、少なくとも現実ではあり得ない。
つまり、これは……。
これが本物のVRMMOだという感想を抱く前に、俺は脊髄反射で呟いてしまった。
「……なんだこのちんちくりんは」
『…………』
無言でにっこりと笑顔を浮かべ、よたよたと近寄ってくる幼女。
そんな様子に毒気を抜かれた俺は、
『はいチェストぉ!!』
「ぐふっ」
唐突に、鳩尾に痛烈なボディーブローを受けた。
なぜに…………。
俺が一体、何をした……。
精々ちんちくりんって言ったくらいじゃないか……。
……そうは言っても、痛みはそこまでないな。
目視だと悶絶するくらいの威力はありそうだったが。
『はい、それが痛覚軽減の力です。それはある程度以上の痛みを軽減する効果があります。実感できて良かったですね』
「……ああ、よくわかった」
主に精神ショックは軽減されないってことがな。
つまり、銃で撃たれても体は痛くないが、精神は痛んだままってことだろ?
初見でそれだと、トラウマになりそうじゃないか?
このゲーム、PKが推奨されてるっぽいし。
『そんな奴等、辞めてしまえばいいんです。後喋れ』
「そんな残酷な……題名通りだな」
後素が出てるぞ。
仮にもチュートリアルの天使ともあろう者が、こんなんでいいのか?
悪魔と言われても納得できるぞ。
今からでも遅くない、堕天したらどうだ?
『いいんですよ、普段は天使ですから』
「天界では本性を隠してる堕天使……確か名前もガヴリーる」
『だまらっしゃい』
前見ていたアニメに出てくる無気力系堕天使の話をしようとしたら怒られた。
喋れと言ったり黙れと言ったり、俺はどうすればいいんだよ。
……まあいいや、本題に入ろう。
『……本題?』
「おいこら忘れんな、チュートリアルしてくれ」
『…………………ああ、そうでしたね』
「…………」
もういい、まずは名前からだな。
そう考えた瞬間、ガブリエルが口を開いた。
『はあ? わたくしの名前を聞くなんて100年早いですわ、まずはそちらから名乗れですわ』
「……色々突っ込み所はあるが、とりあえず1つ。だから俺が名乗ろうとしてんだよ!!」
別にお前に名乗らせようとした訳じゃないんだよ!
というかお前さっきガブリエルって言ってたよな!?
そしてその口調はなんなんだ!?
てかそもそも何で俺が仕切らなきゃいけないんだよ!
……なんか、ツッコんだらもう負けな気がする。
「……はぁ、もういいや。なんか自分で設定できる方法とかないんですか?」
『それじゃ、はいこれ』
彼女から渡されたのは、透明なウィンドウだった。
そこにはデフォルトであろう、俺のステータスと残り振れるステータスポイント、そして空きスキル枠が5つあった。
初期スキルについて、少し説明を挟もうと思う。
初期は5枠分選ぶことができ、残りのスキルも基本、その後の行動で集めることが可能。
わざわざ5枠分といったのは、いくつか複数の枠を食うスキルも存在するためである。
いくらでも取得可能だが、戦闘に反映されるのは5枠分のみ。
町にある役所でその5枠は変更可能だが、1度変更すると24時間変更できない。
つまりは特別な理由がない限り、最初に選んだ5つのスキルに絞って育てていくべきなのである。
そしてついでに、ステータスについても軽く触れておく。
基本的に6種のステータス、Str、Vit、Agi、Dex、Luk、Senにポイントを割り振っていく。
プレイヤー本人のレベルは存在しないため、基本的にそれが最終ステータスとなるらしい。
割り振れるのは合計100ポイント、1つの項目に最低10振る必要がある。
ちなみに10が、この世界の人間の平均的な性能らしい。
「……え、本当に丸投げ? 普通あんたがやってくれるものじゃ」
『え……なんで私が』
「……存在意義を小1時間問い詰めたい気分だ」
『それを言ったら、存在意義がある人類の方が少ないでしょ』
「……もっと別のところに思考のリソース使わない? あんた怠惰の化身? なんなん?」
『否定はしません☆』
「……もうやだこいつ」
もういいや、このまま自分でステータス設定してしまおう。
こいつ絶対やってくれないし。
……透明な板に指を這わせていると、ふと彼女が背後に忍び寄ってきた。
『そういえば君は、武器種何にするんですかね?』
「……いや、今更かよ!!」
このゲームの武器は本によると、主に6種類くらいに分けられる。
ライフル、ハンドガン、ショットガン、サブマシンガン。
そしてアイテムと、光剣。
最初の4種は、更に実弾銃と光学銃に分けることのできる、俗に言う銃だ。
基本的に光学銃の方が優れているが、アイテムにより威力が減衰されることも多々ある。
故に対魔獣には光学銃、対人なら実弾銃に役割がわけられるという。
ライフルは汎用性が高く、遠距離からの狙撃や、弾を連射できるアサルトライフルによる突撃まで用途が幅広い。
ハンドガンは片手でも扱うことができ、双銃やサブウェポンとして人気が高いが、片手で扱う場合はそこそこ筋力値が必要。
ショットガンは散弾による近距離制圧力が強く、威力の高い単弾も撃てる。
サブマシンガンは、要求筋力値が低く、オートマハンドガンの弾で撃てるアサルトライフルの様なものだ(実際の分類は違うけど)。
アイテムに置ける武器は主に手榴弾、実弾やバッテリーパック(光学銃の弾)のことで、戦闘支援兵器や銃弾に分類される。
光剣は特殊で、対光学銃バリアを無視し、殆どのプレイヤーを1撃2撃で全損させるほどの威力を持つが、余程近距離じゃないと当たらない。
全てに利点はあるが、欠点もある。
ちなみにスキルに、『~マスタリ』というのが、銃と剣の2種類が存在している。
効果が強めなので、扱う武器のマスタリは持っていて損はない。
『……私の言葉を無視して長々と説明してくれましたね……それも結構詳しいし』
「確か武器種の話だったな……俺はこれだよ」
そう言って俺はステータスを示す。
これを見れば、何となく俺のやりたいことがわかるはず。
そのステータスを見た彼女は、数秒止まった。
『………………もふふふふふふふ!』
そして俺の脳は、数秒止まった。
フリーズした脳が回り始め、彼女が何とも形容しがたい声を上げた、と遅れて理解した。
……なにこれ、笑い声なのか?
そもそも人間の出せる声なのか?
……あ、ココ仮想世界ダカラナンデモアリカー。
そんな訳あるかボケ。
『凄いね君、飴あげるよー!』
「あ、ああ……なんで飴? しかも3つ?」
『なんでだろねー?』
……なんだこいつ。
いきなり話し方が変わったな。
まぁいい。
それより、俺の構成に関してだ。
「……まあ、多少奇異なことはわかってるが……実際こんなスキルがあるってことは、こうしろってことじゃないのか?」
『もふふ……そうだけど……君は馬鹿なのかい?』
「否定はしない。けどなんか、これは失敗じゃないような気がするんだ」
俺が断言すると、彼女は薄く笑って、
「君、面白いね、気に入ったよ」
「えー……なんか感染りそうだからやだ……」
『酷いな、ボクをなんだと思ってるんだい……』
怠惰に振り切った堕天使、さしずめ怠堕天使とでも呼ぶべきか。
異論は認めない。
『……まぁいいや。後さ、これするには初期資金で足りるのかい?』
……それは、少し思っていた。
ショップで買えるもの一覧の値段を見て、初期資金じゃ到底回せないな、とは思っていた。
……あくまで、初期資金なら、な。
「……まぁそれは、あんたの裁量次第、と言ったところか」
俺がにこりと笑顔を浮かべると、彼女も悪い笑みを返し、
『もふふ、そうだね、勿論いいよ』
「へえ、いいのか?」
『うん、というか元から増やすよう設定してあるし』
「……俺にだけの特典、って訳でもなさそうだな」
『うん、君みたいな武器の選び方をすれば皆増えるよ』
……そうだな、確かにそれはあり得る。
むしろそうじゃなきゃ、採算に合わないよな。
「後、ずっと気になってたんだが……」
『なんだいなんだい?』
「その歳になってボクって……痛くない?」
『ボクは一体何歳だと思われてるんだい!?』
見た目は15歳くらいの堕天使だが、中身は30台後半の眼鏡かけた魔女だと思ってる……けど、まさか違うのか?
ちなみに魔女っていうのは魔法使いの女性バージョン(あくまで造語なので悪しからず)。
わからなければ三十路魔法使いで検索して。
『あっったりまえだろ! 違うわ!!』
「違うのか」
『何一つ合ってないよ、馬鹿!』
……ふうん。
ネカマか、なら納得、VRでそれはキモいから早く消えろ。
ちなみにネカマとは、ネット上でオカマすることだ。
止む無くそういう事情になっているのならともかく、少なくともお前には情状酌量の余地などない。
『あ、それは違う、ボクは男性じゃないから大丈夫だよ』
ガブリエルは首をぶんぶんと振りつつ、男性疑惑を否定する。
そうか。
まあどうでもいいけど。
『どうでもいいとか言われるのは心外だ!』
「じゃあどうすればいいんだよ!」
後言ってない。
……さて、そろそろ茶番は終わりにして、ゲームを始めたいんだが。
長々と話しちゃったし、友達が待ってそうだ。
『……あ、まだチュートリアル中だったね』
「忘れんな堕天使」
ま、そこそこ楽しかったな。
また会えればその時はよろしく。
『うん、また会えるといいね』
「……うーん」
そこは正直、首を傾げざるを得ないのが本音だ。
……だが。
『もふ、そこは即答するとこだよ』
「……そうかも、な」
こういうのも、偶には悪くないかもな。
『では、血も涙もない銃の世界で、良きゲームライフを!』
白い光が俺を包み始め、徐々に視界が白に染まっていく。
『ばいばーい!』
手を振るガブリエルの姿が色褪せ、世界が真っ白になる直前、俺は一つのことを思い出した。
俺……キャラクターメイキングしてなくね。




