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26話 無線機チェック

「……はぁ、これじゃ完全に素寒貧じゃないか」


 俺は1人、溜め息を吐いた。


 ゴーシュにエリアボスの銀狼『シルヴィアス』の素材を全て明け渡した俺達は、改めてそいつのドロップを確認してみた。

 ……あ、そいつって言っても、ゴーシュを殺してドロップ回収したわけじゃないからな。

 分かってるだろうけど、念のため。


 あいつが落としたのは、主に言うなれば素材とアイテムと……その他だ。

 ……いや、当たり前なんだが、少々理解が追い付いていない。


 素材はあのござる口調に全部やっちまったから、残りはアイテム類なんだが……。

 えっと、バッテリーパックや手榴弾全種。

 そして、銃弾は『7.62x51mm NATO弾』。

 BGNライフルで使用する弾薬だ。


 その中では特に手榴弾の量が突出しており、結果俺の所持量は馬鹿みたいに増えた。

 これはもう、めちゃめちゃ嬉しい。

 やっふい。


 ……ここまでは、まぁある程度運がよかったんだなと、納得していただけると思う。

 問題は、これからだ。


 まず、トランシーバー。

 ……それも、俺が見初めた使いやすそうなタイプ、無線イヤホンとその中継機だ。

 ……正直、なんの冗談かと思った。

 戦利品を売った金で買おうと思ってたものがそのまま落ちたのだ。

 なんのご都合主義だよ。



 そして、肝心のその他。

 銃が、ドロップした。

 それも、白い実弾狙撃銃だ。


 もう一度言おう。

 そう、全体が白塗りの、狙撃銃『ナイツアーマメントM110』だ。

 前半のナイツアーマメントは製造社名なので、『M110』でもいい。


 その色はまぁ、真っ白というよりは少々……というか結構濁ったベージュ色な気もするが、少なくとも黒くはないな、うん。


『M110』。

 それは、現在でも正式に採用されている、米国製のセミオート軍用狙撃銃だ。

 携行性を重視したドラグノフと比べると、その重量は大幅に増加している。

 また見た目も大きく違い、消音機サプレッサーを着けると更に、ゴツイ印象を受ける。

 しかしそのおかげか、狙撃精度もドラグノフに比べ、上である。


 同じ米国製の『M16自動小銃』と約60%もの部品互換性があり、見た目も素人目にはそっくりだ。

 ハンドガードの上下にピカティニーレールが装備されており、対応した光学機器や二脚を装備可能。

 装弾数は10、もしくは20発。

 セミオートスナイパーライフルの中でも高い狙撃精度を誇る一丁だ。


 速射性の高いロシア製のドラグノフに対抗するため採用された、こちらも速射性に優れたセミオートスナイパーライフル。

 その成り立ちに、そこはかとなく縁を感じる。


「正に、『ドラグノフなんて見たくないし、使うなんて以ての外ですぅ!!』と言い放ったましろが使うべき銃だ!」

「そこまでは言ってませんよ!? というか声真似上手すぎませんか!?!?」

「……そういや、声真似得意だったなトナカイ」

「そんな褒めんな」

「褒めてねえ」


 呆れつつ呟くウォータムを黙殺し、ましろに『M110』を手渡す。


「んじゃ、これはましろが使ってくれ」

「……え、良いんですか?」

「……いや、狙撃銃だし、ましろ以外に誰も使えないしさ」

「……てっきり、売っちゃうのかと思ってました」

「俺って何だと思われてるの!?」


 勿論、これがサブマシンガンだったりショットガンだったりした場合は、売ってたかもしれないが。

 ……いや、やっぱないな。

 アサルトライフルでも性能的にはBGNライフルよりは上だろうから、ましろに渡しているだろうし。

 上記の2つだとしてもきっと、返済代わりに4人組に渡してただろう。

 そういう意味では、これはちょうどよかった。

 色もなんか、白っぽいしな。


 そしてそんな『M110』も、使用弾薬はなんと同じ、『7.62x51mm NATO弾』。

 ここまでくると最早、神のお膳立てじゃないか、とも思えて来るね。


 ……ただ一つの懸念は、その全長だろうか。

 一メートルを超えているので、背の低いましろが上手く構えられるのか。

 ……まぁ、ゲームだし、なんとかなると信じよう。


「ありがとうございます、大切に使わせていただきます!!」

「返事は『Yes,sir!』のみしか認めん!!」

「Yes,sir!」


 敬礼しつつ素直にそう言うましろを見て、なんかほっこりした。




 ……ドロップしたのは、以上だ。

 ……さて、ここまで見て、何かしら気づいた点はないだろうか。



 ……うん、見事に使うものばかりでびっくりだわ。



 いや、そのこと自体はとても良いことなんだよ?

 お金に変換すると実質半分になってしまうから、そのままドロップしてくれるのは実に効率的だ。


 そういう意味では、例え素材を除いたとしても、今回が一番の戦果と言える。

 それも、ぶっちぎりでだ。

 それは誇るべきことだし、とても素晴らしいことだ。

 ……それは、そうなんだが……。



 俺達の残金は現在、すっからかん、全くのゼロである。

 俺が全てお金を預かっており、先の戦闘で借金をしつつなんとか揃えた物資のせいで、所持金は皆無であった。

 ……いくらアイテムがめっちゃ落ちても、勿体なくて売れないというのは問題だろう。

 ……例え一時の所持金のために売ろうとしても、俺の指がどうしても拒否を押してしまう。

 どう考えても結果的に、損だからな……。



 この染みついたドケチ根性が、今は少し恨めしい…………。


「……っと、トナカイどうした?」

「どこか調子でも、悪いんですか?」

「こいつの場合、大体頭だろうな」


 思わず頭を抱えてうずくまると、隣にいたウォータムとましろが心配するように声をかけてきた。

 それはそうか、このままじゃ俺完全に挙動不審野郎だな。

 ……手榴弾を口内爆破させてる奴が何を今更、とか言ったやつは後で来い。

 後ウォータム、お前もだよ。


「いや……折角色々得たのに、肝心の金銭事情が解決しないとはな」

「あー、確かにな。運は凄くいいんだろうが……複雑な気分だな」

「所持金がないと、少し不安になりますよね」


 ましろ、それはそうなんだよ。

 俺もそうだ。

 だがその不安よりも、どうしても損をしたくないんだよ俺は。

 そんな自分に、打ち勝てそうにないんだ。



「……まぁいいや、次は市街地だったよな」

「ああ、ついに最後だな」

「頑張りましょっ!」

「……別に最後ではないだろ」


 ただ、まだ回っていないフィールドの中で、街に面しているのが市街地のみというだけで。

 進みさえすれば、別のフィールドもあるんだぞ。

 ……更に言えば、3人でもっと遊びたいしな。


 そんなことを考えつつ、俺達は歩を進めるのだった。



 ────



 市街地前。

 俺は2人の前で、一度大きく手を叩いた。


「……じゃ、早速作戦を伝えるぞ」

「はーい!」


 まず、ウォータムは単独行動。

 地上の一定範囲を移動しつつ、ましろか俺が魔物を仕留めた場合、そちらに向かってドロップの回収。

 魔物を見つけた場合、周りにプレイヤーがいないことを確認しつつ殺せ。

 プレイヤーを見つけた場合は、余裕があれば簡単な位置や人数を報告してくれ。

 奇襲された場合も同様。


 ましろは、基本俺と一緒に行動してもらう。

 ビルの上階に陣取り、スコープ越しの狙撃で敵を撃ち抜け。

 もしウォータムが交戦を始めた場合は、狙撃による援護。

 俺も双眼鏡を使い、ましろの補助スポッターとして、もしくは砲撃手としての役割を熟す。


「……よし、大体の動きは分かったか? 何か質問や案があれば言ってくれ」

「んー、じゃあ俺は基本別行動ってことか?」

「そういうことになるな。だが安心しろ、無線機による連絡は結構頻繁に行うつもりだから」


 ウォータムはその答えを聞くと、了解、と口の端を上げた。

 その様子に安心し、俺はましろの方に向き直る。


「ましろは何か、質問はないか?」

「……無線機の使い方を、少し実践したいです。前は私持ってなかったですし、お兄ちゃんが……」

「……ああ、確かに心配だな、ウォータムの頭が」

「……言い返せねぇ、言い返せねぇけど今ものすごくお前を殴りたい」


 一応、銀狼戦前に使い方は説明しつつ、周波数の調整もやっといたのだが。

 ウォータムが中継機をアイテム欄に突っ込んだままで電波受信してなかったせいで、ましろも一抹の不安を抱いているのだろう。

 更にましろは、前回持ってなかったもんな。

 気持ちはわからなくもない。


「よし、じゃあ市街地の入り口ら辺で少し試すか」



 ────



 市街地。

 といってもそれはあくまで過去の市街地であり、正確には市街地跡、と表現するのが正しい。

 舗装された道、乱立するビル群、人気のない家屋。

 暗い曇天の下に映る、あまりにもリアルなそれらは、『退廃』という単語の具現にも似ていた。


「……これって、実在する街なんでしょうか」


 ましろが徐に、そんな呟きを漏らす。

 その問いに対し、俺はこう答えるしかない。


「……それは、作った奴にしかわからないだろうな」



 ────



「よしじゃあ、早速行くか……ひでぶっ!?」

「ちょっと待ってろ」


 おい、先に無線機のチェックするっつってんだろうが。

 鳥頭か。


 俺は早速飛び出そうとするウォータムを手刀で止め、腰に突っ込んどいた無線機を確認。

 今回は一応念も押したし、大丈夫だろう。

 俺は耳元の発信スイッチを押しながら、話してみる。


『あーあー、こちらトナカイ。一応聞くが、この周波数を使用している人はいないよな、どうぞ』


 一応、同じ周波数を使うチームがいないか確認する。

 周波数は無数にあるためそうそう被ることはないだろうが、念を押すに越したことはない。

 何も間違いがなければ、この俺の声は2人の、もしくは同じ周波数を設定している人の耳に届いているはずだ。

 2人が親指を立てるのを見て、少し安心した。


 俺はそのまま、十数秒待ってみる。

 誰からの返信もないため、どうやらこの周波数は今の所、俺達のものらしい。

 被る確率は多分天文学的確率だろうが、一応だ。



 よしじゃあ、確認を始めよう。


『……こちらトナカイ。現時点では他に近くでこの周波数を使うチームはいないようなので、今回はこの周波数を使う。異論はあるか、ウォータム? どうぞ』

『……あ、そういやこのボタンを押しつつ話すんだったか。こちらウォータム! トナカイ了解、どうぞ!』

『こちらトナカイ。んじゃましろ。普通に聞こえるとは思うが、一応返信してみてくれ、どうぞ』

『こちらましろ、なんだかこういうのってわくわくしますね! 確認ですが、お兄ちゃんもちゃんと聞こえてますか、どうぞ』

『こちらウォータム。ちゃんと聞こえてるから安心しろ、ましろ。どうぞ』

『こちらましろ、お兄ちゃん了解です、トナカイさんどうぞ』

『こちらトナカイ。これで大体の使い方はわかったな? 誰かが発信しているときに発信ボタンを押して話しても意味がないから、自分と答えてほしい相手の名前をちゃんと言うように。ウォータム、ましろの順で返事をしろ、どうぞ』

『こちらウォータム、トナカイ了解、どうぞ』

『こちらましろ、トナカイさん了解です、どうぞ』

『……こちらトナカイ、上出来だ2人とも。じゃあ一旦通信を終了する、また何かあれば連絡してくれ、どうぞ』


 よし、2人ともばっちりだ。

 本番では多少崩れても、3人なのであまり問題ないしな。

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