24話 一旦落ち着け
やばい、昨日投稿忘れてた。
文字数多めだから、許して( ;∀;)
エリアボスである銀色の大狼、『シルヴィアス』を見事打倒した俺たちは、とりあえず街に戻った。
「まさか、また助けられちゃうとはね……」
フィリトのその言葉を皮切りに、そこで待機してくれていた4人衆に感謝の言葉を次々に言われたのだが、
「あー、そういうのいいから。それよりあんたらこれから空いてる?」
「ああ、ごめん、午後から4人で用事があるので……今日の夜は大丈夫ですよ」
「じゃあそれで」
と半ば強引に会う約束を取り付けた。
勿論、治癒剤と光剣を買う際に俺がした借金の返済のためだ。
そう言えば今更かもしれないが、4人組の説明とかしてなかったな。
リーダー格の青年が、フィリト。
暗い緑髪に青目の、背の高い好青年だ。
アサルトライフルを使った中〜近距離制圧型か。
そしてもう1人の青年、+アルファ。
背はフィリトより低く、それでも俺より高い。
灰色に黒目、ショットガン使いだ。
……名前的に、少し付属品みたいな扱いを受けてそうな気もするが、それは多分気のせいだろう。
てか名前は自分でつけたんだし、彼は自ら進んでその扱いを望んでいるのだろう。
詳しくは知らないが。
そして怪我していた彼女は、アリサ。
金髪に翡翠の瞳で俺よりも背も高く、なんか一番世界観に合った格好だ。
緑色の迷彩服に、武器はサブマシンガン、そしてハンドガンもサブとして装備してるのか。
なんか、かっこいいなそのスタイル。
実際にいそうで、少し憧れる。
最後の1人、凪。
明るい水色の短髪に銀色の目、ボルトアクション式ライフル……狙撃手か。
この中ではましろを除くと、一番背が低い。
唯一の、救いだ。
『フィリト』>『ウォータム』≧『+アルファ』>『アリサ』>俺>『凪』>『越えられない壁さん』>『ましろ』
…………何の順番かって?
…………察してくれ。
ウォータム高いなおい泣くぞ。
というか狙撃手目指す奴らは背が低いのが多いのか?
……とか思ったけど、凪も女性の平均は普通に超えてるわ。
じゃあ、背の高い奴らが近接職選びやすいとか、そういうのがあるのかね。
ちなみに今更かもしれないが、アバターをリアルと全く違う姿にはできない。
動きに支障が出るかもしれないからだという。
だが、顔を変更したり、10センチくらい背を誤魔化すことも可能らしい。
……まぁ俺はしようとしても、キャラメイクなかったせいでできなかったがな!
フィリトは俺の考えを察したのか、申し訳なさそうに言う。
……勿論前半のな。
借金の返済についてな。
背の話じゃない。
「お、お金は気にしなくても……二度も助けて貰いましたし」
「いや、あれのお陰で勝てたからな、払わないと気が済まない」
「そうだな、確かお金足りなかったんだろ?」
「おう、お前が致命傷負ってなかったらもっと楽だったんだがな」
「うぐっ」
ウォータムの言葉に茶々を返しつつ、俺は考える。
もしあの治癒力増強剤が無ければ、ウォータムは死に戻りしていただろう。
もしあの光剣がなければ、絶対的な火力不足でじり貧になっていた可能性が高い。
勿論片方が欠けても勝てたっちゃ勝てたのだろうが、とんでもなく時間がかかったのは間違いない。
そしてそれは確実に、治癒力増強剤の値段を超える損失になっていたと思われる。
それを止めたのは、彼らの英断のお陰だ。
……あの配金がなければ、余裕だったんじゃねとか、そういうことは言わない。
誰も得しない、そして過去のことはもう言わない、それが俺なのだ。
というか、俺の中でそれ以上に気になることがある。
「……あのさ、少し気になることがあるんだが……」
「? 何ですか?」
「何でも言ってください!」
女性2人に詰め寄られ、俺は困惑。
少し躊躇いつつ、口を開いた。
「……た、タメ口で話さないか? ……ゲームなんだし」
なんか、改めて言葉にすると少し気恥ずかしい。
だが、別に初対面という訳でも無いんだし、それくらいは良いはず。
……相手が丁寧語だと、少し調子が狂うんだよなぁ。
折角のゲームだ、楽しんだもの勝ちだろ。
……こちらとしても、金という恩があることだし。
「……確かに、そうね」
「ま、そんなこと言われたら、止めるしかないよな」
「そうね、それもそうだわ」
「……僕らは、君達には本当に感謝してるからね。必要ないかもしれないが、何か有ったら言ってほしい」
凪、+アルファ、アリサ、フィリトの順だ。
頼りになる……かどうかはわからないが、知り合いができたのは大きい。
……例え、ゲーム内の財布が少し痛もうともな。
「ああ、これからもよろしく頼む」
「うん、よろしくね」
俺達は4人組全員と握手を交わした。
「……あの、ところで……」
「ん? ましろどうした?」
「……………………なんでもないですよ、別に! 言われても止められませんし!」
なんかましろが、納得がいかないような目で見てくる。
なんでだ?
……まあいいか。
彼らとフレンド登録をして、とりあえずはログアウトすることにした。
────
昼飯を食べ終え、戻ってきた俺達は、とある事件に出くわすことになった。
「お、トナカイ来たか! 早速だがどう思う!?」
ウォータムが俺に向けて叫んでいた。
ましろはまだいないようだ。
ふと、ウォータムの足元を注視する。
何かが、うごめいていた。
「……うん? それって、もしかしてそいつが関係してるのか?」
そう言って俺が指差したのは、ウォータムに縋り付く1人の青年。
勿論フィリトではなければ、+アルファでもない。
全くもって、見たことのない相手だった。
誰だよお前。
「ああ、さっきインしたんだが、こいつがくれくれってうるさいんだよ」
「お願いでござる、どうか、どうか、譲ってほしいでござる」
「だー、鬱陶しいなあ!」
「おい、一旦落ち着け」
滂沱の涙を流しつつ、ウォータムに縋る彼は、とても必死そうだ。
それを見ているからこそ、ウォータムも邪険にできないのだろう。
何か、理由があるのだろうか。
とりあえず、少し話を聞いてみるか。
「おい、そこのアンタ、そいつは馬鹿だから何言っても伝わらないぞ」
「酷え!!!」
「そうでござるか、では彼のフレンドである君に聞くでござる」
「そっちもそっちでスルーすんじゃねえよ!」
「…………うん?」
少し気になる文言があったが、まあいいか。
というかウォータム弄りの才能あるかもなこいつ。
「どうか、森の大狼の牙と大爪、できれば骨も譲ってくれないか、でござる」
……へえ?
────
「……で? なんでそれが必要なんだ?」
色々な疑問が頭を駆け巡ったが、俺はとりあえずそう切り込んでみることにした。
今の所魔物の素材というのは、売却するしか手のない物だったはずだ。
俺もウォータムも、ショップで売却しようとして早くインしたのだ。
それ以外の用途があるのならば、是非俺たちも聞きたい。
「ああ……実は、俺は武器を作りたいのでござる」
「ふむ……成る程」
確かに、普通に考えればそうだ。
この世界は、魔物によって文明が衰退した世界。
つまり魔物はそれだけの戦闘力を有しているということであり、その素材は生半可の物では無いだろう。
勿論雑魚相手ではその限りでは無いだろうが、それは腐ってもエリアボスの素材。
もし武器に転用することができれば、多大な戦力になってくれるのは間違い無いだろう。
……だが。
この世界では、魔物の素材は加工できないし、そもそも普通の武器を造ることすらできなかったはずだ。
勿論説明書から得た知識ではあるのだが。
「魔物の素材って、加工ができないんじゃないのか?」
「……そうでござるな。そう思われてても仕方ないでござる」
そう、このゲームにおいて、武器は作成できない。
加工系のスキルは初期スキル欄に存在しないし、魔物の素材も精々オブジェクト化ができるくらい。
……そもそも、銃の構造の具体的な知識、それこそ1から作れるレベルで知ってる人間なんて極少数だろう。
それも、実用的な物の、それを。
勿論、もしスキルがあれば簡略化された作成過程で作ることが可能かもしれない。
スキルさえ、あればな。
「……確かに、魔物の素材で実用的な武器を作るのは現在の技術では難しいでござる。歴史上、数々の猛者がそれに挑戦したらしいが、あえなく敗れているという」
……なんか、こいつの話は一々スケールが大きいな。
歴史って、まだサービス開始から1日くらいしか経ってないぞ?
もしかしたらその前からインしている人間もいるのかもしれないが、そこまで大仰な言い方をする必要はないだろう。
少しそこに、些細な違和感を感じた。
「だが、俺は諦めたくないんでござる、この夢を。魔物の素材で武器を作ることはできるって、証明したいのでござる」
うん?
なんか、致命的な間違いをしている気がするな。
ちょっと考えてみよう。
なんでこいつは、魔物の素材を欲しがっている?
それは勿論、武器を作るためだ。
だが、そこに違和感を感じるな。
武器を作るために、魔物の素材が必要?
それも、エリアボスである『シルヴィアス』の牙と爪を?
……それは、おかしくないだろうか。
俺は先の、些細な違和感を無視し、結論に至った。
────そうか。
成る程なぁ?
ようやく、お前の目的が見えたぞ、この詐欺師が。
「……なあ、今の話を聞いた上で、もう一回聞くぞ」
「……?」
俺は息を吸い、先程の言葉を反芻する。
「なんで、それが必要なんだ?」
空気が、凍った。
「……何言ってるんでござるか、さっきも言ったでござるよ、俺は武器を──」
「それがおかしいんだよ」
俺が言っているのは、そのことじゃない。
別に、武器を作りたいと思うこと自体は、何もおかしくはない。
ただ、そこに何故、魔物の素材の話が出てくる?
武器を作りたいのならば、普通に考えてまずは加工の楽な金属から始めろよ。
例えそれがアイテムの素材に無かったとしても、まずはそれを探すことから始めるのが普通なんじゃないか?
武器を作りたいのに、初めから超ハードモードの物を使って、成功する訳がない。
それなのに、この素材を求めるってことは──
「どうせ、売り払う気なんだろ? エリアボスの素材は高めに売れるらしいからなぁ」
「断じて、俺はそんなことなんてしないでござる!!」
「は、どうだか」
「俺はただ、それで最高の武器を作りたいだけでござる!! 魔物の、それも強い魔物の」
「……お前さ」
俺は高い筋力値を使い、片手でそいつの胸倉を掴んで持ち上げる。
軽い。
「そもそもさ、頼むにしても、頼み方って物があることを知らないのか?」
「……」
「もしお前が仮に? 武器作成を志す若人だとして? 傲慢にただ渡せと言えばはいどうぞと渡してくれるとでも思ってるのか? 夢を語れば、金を払わずに済むとでも?」
「……確かにそれは、すまなかったでござる。でも俺はっ」
「わからないのか?」
俺は額が当たるほどに顔を近づけ、言う。
「俺は、お前がそのくだらない頭を下げて誠心誠意謝れば、この件はチャラにしてやるって言ってるんだよ。さっさと去ねよ、詐欺師風情が」
「……トナカイさん!」
後ろから、声が聞こえた。
振り向くとそこには、
「……一旦、落ち着いて、彼と話し合いませんか?」
少し怒った表情の、ましろがいた。
いつから、いたのだろう。
まあ、それはどうでもいいか。
「だが、こいつはっ」
「一旦、落ち着いてください、トナカイさん。私にはその人が、悪い人には見えないんです」
「…………」
「それに」
「私は、トナカイさんのそんな姿、見たくありません」
「……そうか」
少し、落ち着いた。
だが俺の頭では、その可能性しか思い浮かばない。
例え1日で金属素材を見つけたとしても、そこから加工の方法を探し、魔物の素材を加工できるまでになるまで、少なくとも1日では不可能だ。
どう考えても、状況的に、こいつは詐欺師にしか見えない。
───いや、待てよ?
そもそもこいつはどうして、俺たちが、というかウォータムが牙と大爪を持っていることを知っている?
剣マスタリを上げるため、解体し、アイテムとして持っているのはウォータムだ。
だから彼は、最初に来ていたからではなく、持っているからウォータムに縋り付いていた?
その情報、そして俺たちが銀狼を倒した事実を、どこから?
答えが、見えない。
だがしかし、こいつがただの詐欺師ではないような気もしてきた。
「……ありがとな、ましろ。少し落ち着いた」
「さっきのトナカイさん、凄く怖かったんですよ?」
「……それには、全面的に同意だ、あれはやばい」
「ウォータム、いたのか」
「ずっといたわボケェ!!」
……そうか、そんな酷かったか。
やばいな、あまりにも感覚が現実味を帯びすぎていて、俺の脳が無意識に現実だと思い込んでいるらしい。
だから詐欺師とかは許せないし、少々本気でプレイしてしまっているらしい。
……いや、プレイというよりもロール、と言うべきか。
VRMMORPG、ヴァーチャル・リアリティ・マッシブリー・マルチプレイヤー・オンライン・ロール・プレイング・ゲーム。
……めちゃめちゃ長いが、ともかく俺はRPGの1人のキャラ、荒廃世界で戦う兵士の『トナカイ』と、自分を誤認してしまっているのだと思う。
……本来は、肩肘張らずに、楽しむべきものなんだがな。
ウォータムやましろにもそう言ったはずなのに、自分が間違えてどうするよ。
「……すまなかった、大人気無かったな」
「……いや、多分俺の方が年上だと思うでござるが」
「だったらもっとちゃんとした態度で頼め」
「うっ……それは本当にすまなかったでござる」
「ああ、俺も悪かったからおあいこだな」
「そう言えば、自己紹介をしていなかったでござるな。俺はこういう者でござる」
彼はそう言って、名刺を差し出してきた。
そこには立派に、
『銃・剣製造責任者代理 ゴーシュ・アルベルトロン』
「「「………………………………………………は?」」」
先程とは別の意味で、空気が凍った。




