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23話 切り札

4/16:光剣の名前、良い感じに変更。

異論は認めない、これで決定!

 ウォータムが戦闘に乱入した時は、俺は2人の女性プレイヤーに接触していた。

 1人は倒れており、もう1人は倒れた金髪の女性を介抱していた。

 それは確かに、昨日の夕方あった4人の内の2人で、間違いはなかった。


「なぁ」

「……っ! 誰!?」


 俺が来た方向上仕方なく、後ろから話しかける形になってしまったのだが。

 彼女はおおよそ過剰とも言える反応を示した。

 恐らく、傷ついた女性を看病するのによほど集中していたのだろう。

 後、後ろから声掛けられりゃ誰でもびっくりするか、普通。


「あぁ……俺はトナカイってプレイヤーなんだが、敵意はない。むしろ助けに来た側だ」

「助け……? ……あ、もしかして」

「……そんなことより、早く準備しろ、時間はあまりないぞ」

「手榴弾さん?」

「……そう呼ばれる経緯に心当たりはあるが、できればトナカイと呼んで欲しい」


 なんで助けるという単語で思い出したのかは、まあ、突っ込むべきではないだろう。

 それより、そろそろ来るはずだ。


「アリサ、凪! 早く逃げるぞ!」


 俺の予想通り、緑髪の両腕を失った青年を背負った男が走りこんできた。

 ウォータムの乱入により、逃走が可能となった彼らは、女性陣に状況を伝えるために必ずこちらに合流する。

 仮にそうしなくても、そんな奴ら救う価値もないから、置いていくのみだ。

 しかし実際は仲間思いの優しい奴らだったらしい。

 良かったな。


「って……あんたは……あの時の……?」


 そこの…………誰だっけ、そういえば名前は聞いていないな。

 怪我人を背負う灰色髪の青年は、どうやら俺の顔を覚えていたらしい。

 俺を見て意外そうな顔を浮かべている。


「何でここに……いや、それどころじゃないか」

「話が早くて助かる」


 とりあえず逃げる準備はできているか聞くと、彼は強く首肯した。


「俺達はもうできてるから心配するな、それより凪、逃げれそうか?」

「……ううん……1人ならなんとかってところ」


 そう言って彼女、凪は、自分の右脚を見せる。

 それは半ばほどで切断されており、断面からは赤いポリゴンが散っていた。

 ……馬鹿か、そんな足で逃げ切れるはずないだろが。

 俺はそこの灰髪を指さし、問う。


「……そこの人、2人を担いで逃げれそうか?」

「俺か? ……すまない、筋力値が足りなさそうだ」


 ……やっぱりか。

 そんな予感はしてたんだよな。

 ……だとするとやはり、これしかないか。

 正直、乗り気ではないんだがな。

 だがまぁ、ウォータムとましろをほっぽってこんなことをしている以上、ある程度の成果は残す必要がある。

 それには、4人生存が必要不可欠だ。


「……そうか……、仕方ないな、2人とも少し我慢しててくれ」

「……え、あ、ちょ!?」


 俺は一言断りを入れると、女性2人を抱えた。

 勿論普通に抱えると揺れでダメージが促進する可能性があるため、1人は背負い、1人は正面から両腕で抱え込んだ。

 俗に言うお姫様抱っこだが、前から直接抱き寄せるよりはましだろう。



 ……というかこの2人、意外と背が高い。

 水色の髪の、脚を負傷していた女性はともかく、気を失っている金髪の女性はもしかしたら俺より高いかもしれない。

 ……すみません、もしかしなくても高いです。

 ………………はぁ。


「え、ああ、えっと、その……」

「すまないな、今は何よりも早さと確実性を優先させて貰ってるが、許してくれ」

「それは良いんだけど…………重く、ないの?」

「え、ああ、軽いぞ? 俺は筋力極振りだしな」

「……そ、そうなんだ」


 脱力した人間というのは、普通より重く感じるという説があるが、生憎今の俺には全く違いがわからん。

 ……それはそうか、筋力特化だもんな。

 って、そんなどうでもいい思考をしている暇はないな、早く街に戻らないとな。



 ……切り札を、あいつに渡すためにな。



「……さぁそこの人、行くぞ、俺が街まで先導する」

「ああ、てか俺は+アルファっていう名前だ」

「そうか」


 灰色の髪の青年が、そう告げる。

 ……そうか、気が向いたら覚えておこうかね。



 ────



 俺は最初からこのつもりでいたのだが、何か伝え漏れがあっただろうか。

 俺は言った通り、皆と一緒に逃げた(・・・・・・・・)んだが。

 というかあの4人組の中にはSen高いやつもいないし、コンパスも双眼鏡もなく、怪我人3人抱えて、森の中で放ったらかしでどうやったら街まで逃げれると思ったんだ?

 例え魔物に会わずとも、100%迷うだろそれ。

 だから俺が先導することによって、あいつらを安全に街に送り届けたのだ。

 双眼鏡で先の景色は見えるし、ある程度の方向は覚えていたからな。

 苦もなく街にたどり着いた俺は、一刻も早く合流しようと思ってここまで走ってきたのだ。


 ……てかさ、せっかくこっちもトランシーバーで連絡したのに、反応しないってどういうことだよ。

 ……まぁ十中八九、アイテム欄に入れたままほったらかしにしてたんだろうが。

 その可能性に気づいたのは俺も街に戻ってからだったからな、これからはアイテム欄から出すことを徹底させよう。


「まあ、答え合わせは後だ、体が癒えたら教えてくれ」


 そういって俺は、持っていた物を投げ渡した。

 そして、音と光の暴威から回復した狼と向かい合う。


「これは…………!?」

「今、必要なものだろ?」


 そう、俺が投げ渡したのは、光剣だった。

 そこそこのお値段はしたが、それに見合った威力と汎用性を兼ね備えた、一振りの剣。

 光剣『Clear』。

 単純すぎるその名前は、まるでウォータムのようだと思った。




 どうせ文字通り刃が立たないだろうと予想していた俺は、魔物の素材と弾、そして街まで送った4人組に借金(長い間彷徨っていたらしく、魔物の素材はそこそこ持っていた)しつつ、それと治癒力増強剤を手に入れた。

 ……どうせ、こいつを倒せば黒字なはずなのだ。

 それなら、勝てる可能性を少しでも上げるべきだ。

 もしこの光剣なしで倒せていたとしても、戦力増加という意味で言えば悪いことじゃないしな。




 ……何よりも。

 何も考えずに突き進み、全てを切り払うウォータムに相応しいと感じたから。

 きっとこの銘も、そういう使い方を想定されたものなんだろうな、と今になって思った。




 ウォータムはそれを握り締め、俺の名前を呟いた。

 気色悪いなと突っ込もうと思ったが、銀狼の顎が迫っていた。


「…………トナカイ」

「話は後だって言ってんだろ、うわ危なっ」


 噛み付き攻撃をギリギリで回避しつつ、手榴弾を口内に叩き込む。

 勿論栓を抜いた状態でだ。

 破裂音と共に、大狼のHPがじわりと減る。

 ……ちなみに、スタングレネードは今は使えない。

 生物には等しく、耐性時間というものがあるのだ。

 詳しくは省くが、今は効かないってことだけ覚えて危ねぇ。


 銀狼の攻撃を文字通りギリギリでかわしつつ、恨み言を零す。


「全く、こちとら一撃でも急所に食らったらお陀仏なんだぞ」

「……相変わらず、規格外だなお前」

「何のことだ? うわっと」

「……わからねーならいいよ」


 ウォータムは、新しい光剣を持ち、刃を出した。

 光剣『BEGIN』が明るい青色の刃だったのに対し、『Clear』は血の色の様な赤色の刃。

 それは奇しくも、今彼が纏うオーラと同じ色であった。


「ともかく、これから俺もやるよ」

「おう、よろしく。……あ、言ってなかったかもしれないが、治癒力増強剤って効果強すぎて耐性できる設定だから、次からは効きが悪くなるぞ」

「!?!?!?」


 ウォータムは、今日一番驚いたような顔をしていた。


 当たり前だろ、瀕死の重傷から回復させるようなものがそう簡単に買えてたまるか。

 恐らく、初心者用の1回限りのエリクサーみたいな扱いだったのだろう。

 初心者にとってこの額は、薬1つにしては大金だし、初期に薬にそこまで費やすバカがいるとは思えないしな。

 というか一度使った後の回復量が、軟膏と同レベルらしいと言うのはどうでもいい蛇足か。


「って、来るぞ!」

「ああ!」


 飛び掛かりからの、その巨大な爪による引き裂き。

 ウォータムはかわしつつ切り裂き、俺は衝撃手榴弾を腹の下に投げ込んだ。

 爆発。

 ギャウンと言う声と共に大狼が飛び退く。

 その時一瞬見えたそいつの腹部は、一部焦げたような痕があった。


「……やっぱり、毛皮は熱や衝撃に弱いな。単体のダメージはそうでもなくても、焦げた部分は毛皮による防御が無効化されるとかありそう」


 焼夷弾とかあれば楽だったんだが、とか思ったが、実際焼夷弾あったら今頃森灰になってるわ、と自問自答していた。

 流石に荒野を2つに増やすような真似は、したくないしできない。

 それで良かったと思おう。

 ……選択肢あったら、ついやっちゃいそうだし。


「だが、これ以上はあまり爆破させずに行くぞ」

「そりゃまた、何でだよ」

「そりゃお前……毛皮をあまり傷付けるとドロップに影響するかもしれないだろ、それにコスパ悪いし」

「……そうですか」


 倒し方によって、ドロップが変わる。

 そういう小説を読んだことあって、こことは違ってファンタジー世界なのだが……関係ないか。

 ともかく、そういうのが有ってもおかしくないのだ。

 だから俺は、


「俺は栓を抜かずに手榴弾を投げてサポートするから、お前は削りに専念してくれ」

「あーもう、わかったよ!!」

「あ、削るときは一部分のみを傷つけてくれよ、全身傷だらけだと」

「わかってるっつってんだろ!!」


 わかってるならよろしい。


 ――ドォン――


 木々の間から放たれた光線で、大狼の右目が潰れた。

 ぎゃあううう。

 HPが、目に見えるほどに減った。


「ほら、早くしないと妹に先越されんぞ」

「ぐぅっ……!」


 慌ててウォータムも、攻撃に参加する。

 喉の辺りを重点的に攻撃して、相手の反撃も俺の手榴弾が許さない。

 口を開けたらその中に栓を抜いて投げ込む。

 腕を上げたら数発そこに叩き込む。

 移動しようとしても、レーザー狙撃と手榴弾で後ろ足に衝撃や爆破を叩き込み、最小限に留める。

 ……え、傷つけてんじゃんって?

 脚の毛皮って、需要あるのか?


 相手のHPが、見る見る間に減っていく。

 すげえ余裕。

 やったね。


「ぐ……ぐがあああああ!!!」


 HPが1割を切った辺りで、狼が叫び始め、体に緑色のオーラを纏い始める。

 お前らオーラ好きだな。

 俺も好きだ。


「だがまぁ、変身を素直に待ってやるほど俺はお人好しじゃないんでな――ましろ、ウォータム、大狼から遠ざかって耳と目を塞げ!」


 そう言って俺は、大狼の顔面に向かって手榴弾を投げ込む。

 それはとんでもない勢いで狼の額に激突し、また閃光と轟音で世界を蹂躙した。

 はい、またもスタングレネードです。

 全く後悔はしていない。


「よし、後は畳み掛けろ!」


 ましろは、先程撃った右目の所に重点的にレーザーを撃ち込んだ。

 ウォータムは先程よりも一層激しく、喉を切り裂きまくっている。

 そして俺も開いた口内に手榴弾をしこたま叩き込んだ。


「これで、終わりだっ!」


 ウォータムが最後の一撃を加えた瞬間、口内の手榴弾が爆発した。

 そのどちらが原因なのかはわからないが、その瞬間に大狼のHPが全損したのは、確かだ。


 俺達は、勝ったのだ。

(もしかしたら今後名前やらグレードやら所持金やらを纏めてぼかしつつ、全体的に改訂するかもしれないのでよろしくお願いします)重大発言サラリ

(実はもうしてるのであります)

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