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20話 逃げるぞ

4/13:少々無線について追加。

「ということで……残すは森と市街地か」

「それなら……あまり高低差のない森がいいですかね?」

「そうだな、それがいい」

「了解、早速行こうぜ!」

「おい、待てウォータム……まあいいか、行こう」

「はい!」



 ――――



 という訳で、森へとやって来た。

 俺とウォータムは、イヤホンマイクを耳にはめる。

 俺は腰に入れた通信中継機を確認。

 これで、送受信が可能なはずだ。


「あ、魔物見つけました!」


 と思ったら早速、ましろが獲物を発見した。

 早っ。


「じゃあ、早速ですが撃ち込んじゃいますね~」

「ああ、よろしく」



 ――――



 やはり街の近辺にいるため、出会う魔物は取るに足らない物ばかり。

 プレイヤーも、Senをましろレベルまで上げているやつはいないのか、もしくは魔物狩りに(Sen)念しているのか、今のところ戦闘は回避できている。



「……なぁ、そろそろ中層行かねーか?」



 ウォータムが、緩急のない戦いに飽きたように、そう叫ぶ。

 ……そうだな、そう言えばこいつマスタリレベル上げのために剥ぎ取りしかしてないわ。

 うん、そりゃ飽きるか。

 ちなみにフィールドは浅層、中層、深層に別れており、奥になればなるほど魔物が強くなる、といった感じだ。



「……うーん、奥に行けば行くほど帰るのがしんどくなるし、魔物も強くなる。……更に、中層からはエリアボスが徘徊するようになるんだぞ……荒野では完全スルーしていたが」



 そう、中層からはエリアボスといって、普通の魔物に比べ圧倒的な強さを持つものが徘徊し始める。

 そして深層にはそれに加え、奥地にそれ以上の強さの、フィールドボスが鎮座している。

 それを倒さずとも、その先にあるフィールドには行くことはできるが、フィールドボスを倒せば、そのフィールドの迷宮に挑戦することが可能になる。

 その迷宮は、フィールドボス級の相手が雑魚魔物として出てくる……なんてことは流石にないが、徘徊する魔物、そしてボスも深層より一回り以上強いという。

 ……まぁ、それは今はどうでもいいか。



 ちなみに荒野でスルーしていた理由は、出会う確率が極端に低いことと、出会った場合も逃げ切れるからだ。

 俺達は、浅層と中層の境目らへんで戦っていたからな。

 中層のエリアボスは、中層にしか行けない。

 少しは粘るが、いずれ中層に戻っていく。

 ……だからと言って、危険を冒していい理由にはならないよな。

 ……反省。


 ついでに1つ。

 それを駆使したはめ技は使えない。

 エリアボスは総じて知能が高く、それに気づくとすぐに逃げたり、無理矢理突っ込んできたりするらしい。

 遠距離攻撃持ってた場合とかもう最悪だ。



「まぁ、昨日も行きましたし、触りだけなら良いんじゃないでしょうか」

「……そうだな、少し行ってみるか。だがもしエリアボスを見つけても、戦わないで逃げるぞ」

「……えー」

「えーじゃない、もうあまり危険は犯したくないんだ」



 という訳で、中層に行ってみることになった。



 ――――



 位置的には中層に入ったみたいだが、景色としてはそこまで変わらない。

 まあそれは荒野でもそうだったしな。

 違いがあった方がこちらとしては嬉しいのだが、隣り合ってるのにそこまで劇的に変わっている方が怖いか。

 とりあえず周りを見渡してみたのだが、何もいないな。

 ましろに聞いても、周りに魔物やプレイヤーはいないらしい。



「とりあえず、ましろか俺が魔物を発見するまでは、今まで通り移動しつつ様子見って所か」

「見つけたらどうするんだ?」

「魔物が1匹だったらましろが先制攻撃、耐えられてこちらに向かってきたらウォータムが塞き止めつつ、ましろと俺が援護」

「おう、わかった! ……お前俺が戦ってる最中に手榴弾投げ込む気じゃないだろうな」

「珍しく冴えてるじゃないか」

「開き直るな、否定してくれよ!!」



 口で否定したからって信じないくせに。

 意味のないことはしない主義なんだよ、俺は。



「さて、先へ進もう。ましろ、頼んだぞ」

「頑張ります! トナカイさんもじゃんじゃん倒しちゃってください!」

「勿論、そのつもりだが……コスパ悪いんだよな俺」

「うん、トナカイとましろで倒されちゃぁ、俺の出番が無くなりそうなんだが」

「そんなわけ無いだろ? お前には立派な役目があるじゃないか…………剥ぎ取り」

「おいてめえ解体するぞオラ」

「やれるものならやってみろああん?」

「ちょ、お兄ちゃん! トナカイさんも大人げないですよ」

「……そうだな、大人げなかった。ごめんウォータム」

「それはそれで傷つくんだが!?」


 そんなこんなで、俺達は中層を進んでいく。

 ……てかましろ、絶対確信犯だろそれ。

 うけるわ。



 ――――



「あ、見つけた。前方だがやや右寄り。距離は150メートルはあるな。木の上にいるっぽいが、葉に隠れてて全体像は見えない。もう少し寄ればわかりそうだが」


 俺がそう呟くまでに、そこまで時間はかからなかった。


「森中層での初魔物か……わくわくするな!」

「よしましろ、ちゃっちゃと仕留めよう」

「はい!!」

「おい、俺の出番残しといてくれよ!?」

「……何それ?」

「俺の存在すら忘れてんじゃねぇよ!」


 ましろがレーザーライフルを手に取り、俺に聞いた方向に構える。


「……うーん、あ、見えました! ここからならある程度見えますし、狙撃しますか?」

「ああ、頼む。もし一発で仕留められなくても気にするな、ウォータムが自分の身と引き換えに特攻してくれる」

「その言い方どうにかなりませんかねぇ!?」

「……え、文字通りの意味なんだが?」

「手榴弾出すな出すな! てか自爆特攻かよ!?」

「なんかウォータムがごちゃごちゃ言ってるが、気にするなよましろ」

「はい、気にしません!」

「手酷い裏切りだこれはぁ!!」


 ましろと結託してウォータムを弄る。

 いやぁ、楽しいなこれ。


「あ、本当にいつでもいいからな」

「…………」


 双眼鏡を覗きつつ気楽な感じで言うと、返事はなかった。

 ましろは既に、狙撃態勢を整え精神集中をしているようだ。


 その数秒後、銃口から光がほとばしった。


 左目を貫かれた猿型の魔物が、頭から墜落した。

 そのまま暫く時間が経過したが、起き上がる気配はなかった。

 ……凄いなましろ、本当に一撃で決めやがった。


「……凄いなましろ」

「ま、まぐれですよ……えへ」

「……ましろ、今度は倒さなくていいからな、な?」

「よし、このままウォータムの出番全て奪っちまえ!」

「トナカイぃぃぃいいいい」


 よし、この調子で次もどんどん行こう。




 ────



 あの後、猿魔物がいきなり起き上がって襲いかかって来る、なんてこともなく俺達は順調に魔物を狩った。


「……ってことで、そろそろ終わりにしないか? もうすぐ昼ご飯だぞ?」

「えー、まだエリアボスに会ってないぞ?」

「何会うまで帰れないみたいに言ってんだ、見つけても逃げるって言ってんだろが」

「…………ちょっとぐらいは良くない?」

「ちょっとってなんだよ」


 死に戻りするつもりか?

 逃げ切れる保証もないのにちょっとなんて俺はごめんだぞ。

 お前囮にして逃げるわ。


「……………………あの」


 ましろが、まるでとても気不味いような表情をしている。

 ……まさか。

 俺は双眼鏡で、行く先を確認してみる。



「…………………………いた」



 そこには、明らかに普通の魔物ではない、巨大な白銀の狼が。


「………………マジで?」

「………………マジで」


 それも、たった今プレイヤー数人と交戦中であった。

 フルオートレーザーライフルとレーザーショットガンを持った青年2人と、少し遠くで待機している女性2人。

 恐らく待機している少女2人は、2人の内どちらか一方が怪我を負い、もう1人がその子を処置しているのだろう。

 青年2人は思ったより善戦しているが、防戦一方であり、傷を示す赤いポリゴン体が目立ち始めていた。

 ……あのレーザーライフル使い、動き的に銃剣使ってるのか?

 それはまぁ、いいか。


 ……あれでは多分、時間の問題だろう。

 ……てかなんか、見覚えあるなあいつら。


「あっ! 思い出しました、彼ら、昨日の」

「……ああ、あの合計800Gの奴等か!」

「………………どんな覚え方してるんですか」

「……それだと800Gの価値しかないように聞こえるが、確実にお前の方がクズいからな、トナカイ」

「いや、施しを受けといてこんな所で死にかけてんだ、俺なら学習能力を疑うね」


 てかそもそもなんで中層来てんだ、確かにここは中層の中でも浅層に近い部分だが……あ。

 もしかして。


「Sen高いやつが、いないのか?」

「ああ、それはあるな」


 このゲームでは、少なくとも序盤はSen持ちがいると楽だ。

 方角もある程度わかるし、感知能力も高い。

 勿論それらを解決する手段も存在しており、前者はコンパス、後者は双眼鏡を買えば、大体の場合は対処できる。

 コンパスは初心者セットの中に入っているが……あれ、迷う要素あまりなくない?

 地図にはフィールドのある程度の方角は書かれているはずだから、コンパスさえあれば町の方角くらいはわかるはずなんだがな。


 ……考えづらいが、コンパスを全員が落とした、と考えよう。

 恐らく荒野でPKを受けた彼らはコンパスを落とし、そのお金は例え俺らからの補填分を貰っても足りなかったのだろう。

 当たり前だ、元々足りない所に更に減ったのだ。

 ……それで彼らは、何も対策を練らずに、森に来てしまっのだろう。


 ……迷うと言う意味では多分、市街地に行った方がましだったのだろう。

 市街地なら、ある程度景色に違いがあるから、意外と2回来たところはわかったりする。

 ……しかし森には、景色にほぼ違いがない。

 故に迷い、そして中層に来てしまったことにも気づかずに……。

 そして運悪く、エリアボスに遭遇した、と。



「……成る程、なんで森に来たのかはわからんが、一応の納得はできた。これは、仕方ないな」

「それじゃぁ……!」

「逃げるぞ」

「「……………………え?」」


 お前ら、難聴か?

 俺の言葉がよく聞こえなかったのなら、もう一度、今度ははっきりと言おう。


「俺は、逃げるぞ」

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