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19話 交換条件

4/13:トランシーバーについての文言を追記。

4/16:金の単位をGではなく、ドラグノフにしました。

 ショップのカウンター前で、半透明なウィンドウを操作する俺達。


「……んじゃ、早速戦果を確認するか」

「あんな頑張って狩ったんだし、前回の売却金くらいは行ってるよな、きっと!」

「ですね、楽しみです!」


 瞳をキラッキラ輝かせて言うましろとウォータム。

 ……自分ではわからないが、きっと俺もなのだろう。

 この中の守銭奴といえば、間違いなく俺だしな。


「トナカイさん、めっちゃ目がキラキラしてますよ!」


 ウォータムもそこそこ輝いているのに言われないってことは、俺は余程キラキラしてるのだろう。

 もしかしたら、目が金貨やお札、金の延べ棒とかになっているのかもしれん。


「そう言えば2人とも、バッテリーパックの残量は大丈夫(かね)?」

「俺は……やっべ、もうすぐ切れそうじゃん!」

「私はまだまだ大丈夫そうです、流石初期武器、弱でも意外と保ちますね」

「ふうん……忘れた頃に切れるとかありそうだから気をつけるべきかね

「…………トナカイ、なんか口調おかしくね?」

「気のせいだがね


 ウォータムは昨日ずっと付けっ放しだったからな。

 むしろよく切れていないな。


 バッテリーパックには種類があり、それぞれ(弱)、(中)、(強)の3つ。

 少し勘違いしやすいのだが、これははめた武器の威力を決定するものではなく、発動可能な長さを表すものなのだ。

 例えば、ウォータムの光剣BEGIN。

 それは弱でも1時間半は保つが、中だと付けっ放しでも10時間以上は保つという。

 だが光剣の威力自体には全く関係がない、ということだ。

 しかし武器のグレードが高くなるにつれて、加速度的に消費エネルギー量も増えていくため、弱では実用に向かなくなる時が来るといった感じ。


 まぁ、武器のない俺には関係ない話だがな!


「……よし、売却物の設定完了、果たしてどれくらいの額になるかね……」


 俺は売却予定額のウィンドウをみんなの前に展開する。



 そこには、今までとは1つ桁の違う数字が刻まれていた。

 具体的に言えば、ドラグノフ2丁分を売却したくらいの額。

 つまり、新ドラグノフを1丁買える額だ。



「「「………………」」」


 俺達は、その額に絶句した。

 沼で稼いだ額(魔物狩り単体によって)に比べ、かけた時間は同程度なのに対し、稼げたお金の額が文字通り桁違いだからだ。

 勿論スナイパーライフルや双眼鏡の売却額も換算すればあちらの方がギリギリ上だが、配ったり売ってなかったりというのもあってそこまで実感はなかった。

 ……だがこれは、俺達で使える金だ。

 ましろも流石に今回は変なことを言い出さないと思うし、純粋な強化に費やすことができる。

 やったぜ。

 更にいえば、使える弾やら手榴弾やらを除いた額がこれなのだ、もう喜びの舞を踊りそうだ。

 ……と言っても衝撃手榴弾が不足気味なので、買う必要はあるだろうが。


 少し震える指で売却の文字を押すと、俺の持つGの数値が、その分だけ増えた。

 その数字を見て、改めて感慨のようなものが胸を満たし始める。


 勿論俺1人の分ではなく、3人でわける必要はあるが、それでも俺の初期資金よりも多い。

 ……あれ、よく考えたらそこまででもなくね?

 とか言ったらダメだな、うん。


「こ、こここれ、何に使いましょう?」

「あ、新しい武器でも買うか……?」


 予想以上の金額に、明らかに動揺している2人。

 そんな2人に、俺はとある提案をしようと話しかける。


「……少し俺から、提案があるんだが」

「何だよ、勿体ぶって……」

「良いですよ、何でしょうか?」


 ……期待に添えなくて申し訳ないが、武器、買えなくなるかも。


「連絡手段を、買おう」



 ────



 別行動。

 それはこのゲームで効率を語る際において、真っ先に上がる方策。

 2組に分かれることによって、実質魔物のエンカウントを2倍にする方法。

 しかしそれには、2組の間の連絡がほぼ必須な上、2つの索敵手段。

 そして何より、緊急時の座標伝達方法が欲しい。


 その内2つの条件を満たしている俺達は、残りの連絡手段さえどうにかなれば別行動が可能、という訳である。

 だから俺は、今回お金がある内に連絡手段を買っておいた方が良いと考えた。


 ……例え、今すぐは使わなかったとしても。



「……ってことでトランシーバー買わないか?」


 トランシーバーとは、送受信の可能な無線機のことを指す。

 形は特に問わないが、大抵は一昔前の携帯電話型を思い浮かべると思う。

 その認識で間違いはないが、このゲームではそれを耳に当ててどうこうする訳じゃない。

 片耳にはめたイヤホンマイク(発信ボタン付き)から送受信を行うのだ。

 この機械はあくまで、その中継地点に過ぎないのだ。


 ……設定すれば、直接耳に当てることもできるよ?

 しないけどな。


「……確かに、連絡手段は良いかもな。別行動はまだしないにしても、できるに越したことはないし」

「そうですね、そもそも私とお兄ちゃんは、役割と位置が全然違いますしね」


 っよし、2人とも好感触だ。

 ……だが、まだ最後の難関が残っているんだよな……。

 ……これを聞いても、賛成派に回ってくれるといいんだが。

 ええい、ままよ。


「……あのな、ここまで言っておいて何なんだが……使いやすそうなのは1つ、俺の初期資金と同じくらいするんだ」


「「………………」」


 途端に2人とも無言になった。

 勿論さっきとは真逆の理由で、だ。


 3人で分け合った今回の利益が、それより少し多い程度。

 ……つまり、今回の稼ぎの殆どをそれに使うことになるからだ。


「…………ましろ」

「……お兄ちゃんがいいなら」


 何やらウォータムがましろに耳打ちしている。

 ……何なんだ?


 俺も2人の分の分け前を残して衝撃手榴弾に全振りしつつ、2人の答えを待つ。

 衝撃手榴弾は範囲狭いし魔物に効きやすいしで、結構使いやすいのだ。

 破片手榴弾は逆に、遠くのプレイヤーへの奇襲用か、味方が近くにいない時かな。

 奇襲はましろの意向であまりしないから、破片の出番がそこまでないのは残念だ。


 そんなことを考えていると、ウォータム側に動きがあった。


「……よし、トナカイ、それを買おう。だが、1つしてほしいことがある」

「……まぁ、多少なら良いが」


 ウォータムが交換条件を持ち出してきやがった。

 ……生物として進化しやがったなこいつ。



「今から、また荒野行こう」



 ……お前、味しめてんじゃねえか。

 というか、それなら新光剣買って殲滅速度を上げた方が良いと思うんだが。

 そう聞いてみると。


「前と同じくらいの殲滅速度だとして、最後は『生存本能』で終わらせれば良いんだろ?」

「…………まぁ、それはそうなんだが」

「それならどうせ買い替えるとわかってる武器なんて、買う必要ないだろ?」

「…………いいのか?」

「ああ」


 ましろの方を向くと、同じように強い頷きを返した。


 ……全く、馬鹿野郎どもが。

 俺も、含めてな。


「よし、じゃあ行くか」


 俺はウォータムにトランシーバーを手渡し、2人に言った。


「一応、トランシーバーは2つのみ買おうと思う。1つは引き離されやすいウォータムに、もう1つは俺が。ましろは引き続き、近くにいる俺から指示を貰うか、自分で考えて行動してくれ」

「……3つじゃない理由は?」

「……手榴弾買いたい」

「おい」

「冗談だっての、保険だよ」



 ────



「……やっぱりかぁ……」

「「…………」」


 ウォータムの提案で、また荒野の中層にやって来た俺たちだったが。

 そこは既に、ある程度人が集まって来ていた。

 ……ち、既にボーナスタイムは終わったか。

 もうこれじゃ、魔物の入れ食い状態を堪能することはできなさそうだ。

 ……儚かったな。


「……あのさ、トナカイ」

「……なんだ?」

「…………昨日はありがとな」

「今更そんな空虚な笑みで言われてもねぇ!」


 ウォータムはようやく、ボーナスタイムの希少性に気づいたらしい。

 ……この誘惑には誰も抗えなかったろうし、昨日のミスは仕方ないよね? よね?

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