17話 悲報:ウォータムの黄金期到来
初めての評価あざぁぁああああすっ!!!
これからもがんばりまぁぁああああすっ!!!
4/13:状況がわかりやすいように追記。
その後は、ましろが喜びで俺の行動を阻害し『はうぅ……』と言うこともなく、順調に進んでいった。
ウォータムも適度に魔物をこちらに通すようになったし、ましろも安定して一撃必殺できるようになった。
戦局も2度目の安定期を迎え、魔物の屍が順調に積み上がりつつある。
ちなみに徐々に場所をずらしつつ戦っているため、実際にはそこまで積み上がってないです、はい。
……物事は変革の際が肝心、とは正にこのことだ。
……だが。
例えある程度負担は減ったとはいえ、ウォータムは今まで休みなしで戦い抜いている。
よく頑張った……と言いたい所だが、魔物は15匹程度残っている。
まだ気を抜ける段階じゃない。
そして、更に言えば──ここにきて、ウォータムの殲滅速度がガクンと落ちた。
確実に、スタミナ切れだ。
このゲームには、疲労という要素は存在しないらしい。
それでも、彼の動きが鈍り始めている理由。
魔物のデバフ?
いやほぼ被弾していないのに、それはあり得ないだろう。
精神疲労?
いや、ウォータムがこの程度で疲れるはずもない。
……だが、あいつの様子は、やはり疲れているように見える。
ここは、精神疲労と考えるべきだろう。
あいつはそんな状態になりつつも、一応回避は続けているが……攻撃に転じることが、できていない。
勿論普通なら、それでも良いのだろう。
俺も手榴弾という火力があるのだから。
……普通、なら。
そもそも破片手榴弾というのは、硬度の低い敵、つまり柔らかい相手を対象として作られたものだ。
つまり、人の殺傷には向いているが、大抵が硬い装甲を持つ魔物には、そこまでの力を発揮しない。
例えば破片手榴弾の破片は、ライフルによる1発より全然弱い。
現実の殺傷距離が15メートルというだけで、その威力の弱さが伝わるだろう。
その破片の数で圧倒するものであり、その破片がそもそも通らなければ当然、ダメージは少ない。
戦車に手榴弾投げ込んで、効くわけねーだろ、ってことだ。
勿論衝撃手榴弾なら、魔物にもそこそこのダメージを与えられる。
爆風の熱と衝撃で内臓を焼いたり傷つけたりしてダメージを与えるものだから、ある程度は通る。
範囲も狭目だから、気をつければウォータムにもあまり当たらない。
だが、ここは完全に俺のミスなのだが……。
効きやすい衝撃手榴弾を、もう使い切ってしまった。
破片手榴弾と比べ、ダメージが通りやすいのだ。
更に破片手榴弾は、ウォータムに当たる可能性もあったから。
それはウォータムを巻き込む可能性がある上に、もし巻き込んだ場合のダメージが不味い。
近距離で巻き込むと、多分即死する。
……何より、ウォータムが万全ならば、もっとすぐに終わると思っていたのだ。
……いや、言い訳にすらならないな。
……これは、俺のミスだ。
リスクを回避すると言いつつも、彼らにギリギリの勝負を求めてしまった、俺の。
……普通に、森にでも行って、堅実に稼いでれば良かったのだろうか。
いや、今はそれを考えるべきじゃない。
この状況の打開方法を考えろ。
後悔なら、後でいくらでもできるだろうが。
このまま長引くと、ウォータムがHPよりも先に疲労で力尽きて倒れ、魔物による死に戻り。
敗走、剥ぎ取りできずに俺達は完全に大損だ。
俺はウォータムの様子を見て、もう残り時間が少ないことを悟る。
俺はそんなウォータムの限界を、あいつにもわかりやすいように口にしてやる。
「ウォータム」
「……ッ……!」
「後5分だけ、本気で頑張れ」
……5分。
それが、ウォータムが1対多の状況下で戦い続けられる、限界。
それが、俺達に残された時間。
今まで最速でも1分に1匹のペースだったウォータムに、果たして5分で15匹を倒せるのだろうか。
……これだけは、言える。
このままでは、絶対に無理だ。
だが、俺が一工夫加えれば、いけるはずだ。
……恐ろしく、乱暴な方法ではあるが。
こんな俺に思いつくのは、これしかない。
「……ましろ、少しやってもらいたいことがあるんだが……」
「……はいっ! 何ですか?」
「実は、────」
「……………………えええええ!?」
あいつは、もう殆ど気合いで立っているようなものだ。
一応回避だけは続けており、その速さと回避に専念しているからか、被弾は殆どしていない。
つまり、HP切れよりも、スタミナ切れの方が先。
そして、それを打開する唯一の手札の存在すら、忘れているのだろう。
ただ、回避のみに専念している点で、それは確実だ。
そして俺は、そんな妄言を真っ向から否定してやる。
お前、それは間違っているんだぞ、と伝えてやる。
守りに重きを置いたら、何かが変わるのか?
時間を稼いだら、何かが変わるのか?
誰かが、助けてくれると思っているのか?
……そんなおとぎ話のようなヒーローが、本当にいると思っているのか?
お前のその目を覚まさせてやるよ。
俺が……いや、ましろが、な。
「やれ」
「……はい」
ましろが構えた、レーザーライフルが光を放つ。
その光芒が貫いたのは……ウォータムの背中だった。
────
がくり……とウォータムが膝からくずおれる。
その隙を見逃さんとばかりに、数匹の魔物がウォータムに殺到し……
「させるかよッ」
俺が投げた手榴弾が炸裂し、突っ込んで来た魔物を吹き飛ばし、その内1匹の生命が消えた。
その暴威は、普通ならウォータムを巻き込み、そのHPを全損させていただろう。
……普通、ならな。
「知ってるか? 破片手榴弾の破片ってのは伏せているとそこまで当たらないんだよ!」
破片手榴弾の範囲というのは、あくまで直立していた場合にダメージを受ける範囲。
地面に置かれて爆発する以上、そのエネルギー、破片は上方向に行きやすい。
つまり伏せていれば、そこまでダメージを食らわないのだ。
……勿論多少は食らうが、ウォータムのVitと今のHPならば耐え切れるだろうと踏んだ。
そしてそれは、実際に証明された。
ウォータムは危険域ながらも見事に、減衰なしレーザーライフルの直撃と破片手榴弾の爆発を至近距離で耐え切ってみせた。
……さぁ、ここからはお前の時間だ。
しっかり、後4分50秒、自分の責務を全うしてくれ。
俺達を救う唯一のヒーローは、お前自身なんだよウォータム!
ゆらりと立ち上がったウォータムの、太陽のような明るい橙の瞳は、血の色である緋に染まっていた。
纏うオーラが爆発的に濃くなり、それはさながら、緋色の業火を身に纏ったように見えた。
────
『生存本能』。
それはCWOにおいて、まさに異端と呼ばれるスキルである。
HPが一定以下となった場合に、ステータスを5分間だけ異常なまでに上昇させるスキル。
即死や長時間の戦闘が起きやすいこのゲームにおいて、長期的な要素と短期的な要素を併せ持つスキルはこれのみである。
ステータス上昇は素直に嬉しいが、ダメージを受けて危険域になることはそうない上に、仮にそうなったとしても5分で決着がつくようなことはほぼない。
更に言えば、銃の連射速度(フルオートの場合)や威力には殆ど関係がないため、そして『バトルドラッグ』という、副作用を伴う代わりに生存本能よりも少し弱い効果が10分続くアイテムもあり、あまり人気はない。
取るとしても前衛がスキル余っていたら取るくらいのものだ。
……だが、今この場においては、その高い強化効果が絶大な効果を発揮していた。
「うぉあああああああああ!!」
ウォータムは最後の力を振り絞り、5分間全力で暴れ倒した。
魔物を次々と蹴り飛ばし、斬り裂き、貫く。
それはさながら、鬼神のような戦いぶりだった。
あっという間にその5分が経過し、ウォータムの体から血色のオーラが消える。
その途端まるで全身の力が抜けたかのように、その場に倒れ伏した。
その場には彼と、駆け寄って来る彼の仲間達。
そして積み上げられた、無数の魔物の死体のみだった。
追記。
読んでてわかりづらいかも、と思ったので補足説明。
魔物は基本、人間よりオーバースペックです。
なので浅層では気にならなかった点が中層では気になり始めます。
あくまで目安ですが、プレイヤーに換算したステータスを載せるとこうなります。
浅層のモブ魔物
────────────────────
HP:100
Str:15
Vit:10
Dex:10
Agi:10
Luk:10
Sen:10
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中層のモブ魔物
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HP:600
Str:20
Vit:60
Dex:15
Agi:15
Luk:10
Sen:10
────────────────────
※あくまで目安というか平均みたいなものなので、信用しすぎないでください。
ちゃんと魔物ごとにある程度、個性はあります。
そう、浅層に比べて中層では、Vitが大きく上昇しているんですね。
Vitには実は、皮膚の表面硬度を高めるといった効果もあり、破片手榴弾がそれだけ効きづらくなるのです。
この傾向はどのフィールドでも大体同じであり、また次の層、深層に行くとVit値はそこまで変更ありませんが、他の項目がより上がり、個性が更に強まってきます。
まぁ要するに、Vit20のウォータムには破片手榴弾めっちゃ効くけど、Vit60台になるとそこまで効かないよー、ってお話でした。




