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13話 変態3人組

「それで、どこでできるんだ?」

「そこの受付でできるはずだぞ」


 中に入った俺達は、真っ直ぐ受付へと向かった。

 受付は、なんというか普通のオフィスといった感じだった。

 但し少し違うのが、受付嬢1人1人の間に仕切りがあること。

 そして受付嬢の人数が多め、10人程度いる。

 恐らくプレイヤーを待たせないための措置だろう。

 今も何人かがスキルを確認しているが、まだ俺達3人が入っても余裕だ。

 普通はそれぞれ別の仕事をしている場合が多いのだが、ここでは一律スキル関連らしいな。


 ……常時10人も人材を用意するなんて、このゲームの運営はよほど金持ちなんだろうな。

 勿論、リアルマネートレードが公認されている時点で理解はできるがな。


「じゃあ、行ってくるな!」


 そう言ってウォータムは、右から2番目の受付嬢に駆け込んで行った。

 わざわざ遠いそっちに向かうってことは……まぁ、詮索しないでやるよ。

 ……推定E、目鼻立ちがはっきりした美人だ。

 特に他意はないが。


「……あれ、トナカイさんは行かないんですか?」


 俺がウォータムの受付嬢を見ていると、ましろが笑顔で聞いてきた。

 ましろこそ行かないのか? と問おうと思ったのだが、何故か言うのを躊躇ってしまった。

 うーん、ましろは満面の笑みなのにな……なんでだ?

 仕方ない、本音を言うか。


「ん、俺は少し試したいことがあってな」


 俺はアイテム欄から双眼鏡を取り出し、ウォータムの方を覗いた。

 まずは受付嬢。

 ウォータムの無駄にでかい背中に隠れがちだが、ちゃんと顔は見えるな。

 だが違和感があるな、口の動きは反映されてないのか?

 次にウォータム自身だが、あれだな、普通に動きがわかる。

 美人の受付嬢の笑顔にノックアウトされてる様子が丸見えだ。

 ただ指先の動きはモザイクがかかったように見えない。

 そして最後、受付嬢とウォータムの間に存在しているであろう、スキル一覧だ。

 どうやらそれは、例えフレンドだとしても他人には見えない様だ。

 つまり今のウォータムは、


「……受付嬢の顔を凝視しつつ指を空に這わせている、正に変態だな」

「……お兄ちゃんがすみません」


 素の感想を思わず零してしまったのだが、ましろに謝られてしまった。

 ……まぁ、あんなのが兄だと、妹は苦労するよな。


 それはそれとして、どうやら情報セキュリティはしっかりしているらしい。

 音もどうやら完全防音みたいだし、双眼鏡を使っても情報を得られそうな物はモザイクがかかっていたり、そもそも見えなかったりしている。

 ……唯一、プレイヤーの口の動きは情報になるかもしれないが、普通受付嬢の方を向いているため余程迂闊じゃない限りスキルはばれないだろう。

 というかそれを確認するくらいなら、普段の街での会話を聞いている方がよっぽど情報になりそうな気がするし。


「……変態度なら、トナカイさんもどっこいどっこいな気がしますが」

「……確かに」

「い、言っちゃってましたか!? すみません!」


 確かに、役所で双眼鏡を持って真後ろから覗き込む男性。

 ……うん、関わりたくないな。


「……こんな男性陣で、ごめん」

「あ、いえ、すみません、気にしないでください!」


 少しどんよりとしつつも、俺は双眼鏡をしまって近くの受付嬢の方へと向かおうとした。


「……あ、トナカイさん、私にも双眼鏡を貸して頂けませんか?」

「ああ、いいぞ」


 俺は快諾し、戻ってましろに双眼鏡を手渡した。

 そしてさっきと同じ受付嬢の仕切りの中に入った。



 ────



「いらっしゃいませ」


 受付嬢が、頭を下げつつ挨拶してくる。


「本日は、取得スキルの確認ですか? それともメインスキルの変更ですか?」

「確認の方をしたいのだが、その前に少し質問いいか?」

「はい、なんでしょう?」


 首を傾げつつそう問う動作は、率直に言って似合っていた。


「ここ、役所では、それら以外にできることはないのか?」

「……それは、どういった意味で?」


 何故か彼女の雰囲気が少し怖くなった気がするな……何故?

 まぁいいや、それよりもどういう意味かを聞かれたか……。

 うーん。


「例えば……何かの手続き、とか?」

「……手解き……残念ながら、ここではそういったサービスは行っておりません」

「そうなのか……」


 最初の方があまり聞き取れなかったんだが、まぁ少なくとも残念ってことはないな。


 ……あ、そうだ。


「あ、今お金を持っていないんだが、もしかして有料のサービスとかがあるのか?」


 瞬間、柔らかな微笑を湛えていた彼女の表情が、ビキリと凍った。


「……どこまでお金を払って頂いた所で、ここではそのようなサービスは承っておりません」


 うん?

 何か妙な言い回しだが……思い当たる節はないな。

 というかここでここで、と言っているが、もしかしたら別の場所で何かしらの手続きができる場所があるのかもしれない。

 ……うん、そういう風に聞こえるな。


「……じゃあ、ここではないどこかならできるのか?」

「──!?」


 俺の質問を聞いた彼女は驚愕したような表情を浮かべ、固まる。

 ……ん?

 何か変なことを言っただろうか……?


 彼女はたっぷり10秒の間を取り、深呼吸して俺に向き直った。


「……お答え、でき兼ねます」

「……そうか……まぁ、その辺の情報は自分で調べろってことか」

「……それを本人の眼の前で言うのは、どうかと思いますよ……?」

「……本人?」


 ……え、本人?

 ……ってことは、この人が別の場所でも使われてる……否、働いているのだろうか。

 そうか、ここ以外にいる彼女は、役所では話せない何かしらの情報を話せる立場でいる、ということか?

 役所ではできないような、サービスを。

 それもどうやら、有料らしいそれを。


 ……成る程、それなら今までの彼女の言動にも、ある程度納得がいく。

 ここでは話せないから、必死にそれを察してくれと訴えかけていたのか。

 ……できれば明言を避けて察したい所だが、これ以上の質問は危険かもしれないな。


「……そうか、あんたも色々大変なんだな」

「え、ええ、まぁ」


 彼女は、何か腑に落ちないような顔をしていた。

 まるで何故、今このタイミングで労われたのかわからないみたいな。

 ……うーん、まぁいいか。


「よし、そろそろスキル確認させてくれないか?」

「……わかりました」


 彼女は透明なウィンドウを、横からスライドするように眼の前に持って行った。


 ────────────────────

 メインスキル

『遠投』Lv2

『投擲』Lv2

『所持制限解除』Lv∞


 サブスキル

『銃マスタリ』Lv1

『筋力上昇』Lv1

『器用上昇』Lv1

『速度上昇』Lv1

『運気上昇』Lv1

『感覚上昇』Lv1

 ────────────────────


 ……ふむ。

 増えているのは武器系統のスキルと、上昇系のスキルのみか。

 銃マスタリは確か、ドラグノフライフルを売却した時に一旦手に持ったからか?

 ……随分楽な取得条件だな、おい。

 上昇系は取得条件は良く分からないが……それに関する行動をした時、とか?

 ……それだと俺、ダメージ食らってないことになるんだが……あ、食らってないな、そういえば。


「……なんだか、あまりパッとしないな」

「何を求めてるんですか」


 つい漏らした呟きに、ばっさりとツッコミが入った。

 何を……って、強いて言うならば刺激、かな。


「……変態」

「なんでっ!?」


 唐突過ぎて、全く意味が分からない。

 分からないが、俺の考えに対してツッコんだような気がしたな。

 ……それでも、変態と罵られそうなことは何一つ考えていないのだが。


「まぁいいや、そろそろ行くわ」

「……またのご利用をお待ちしております」


 俺が席を立つと、彼女も事務的な礼を返してくれた。


「……あ、そうだ」


 出ようとした時、俺はふと言い忘れたことを思い出して振り向いた。


「ここじゃない所で出会ったら、またよろしくな」

「──!?!?」


 また驚愕したような表情を浮かべられたのだが、なんでなのだろうか?



 ────



「遅くなってごめん、ただいま」

「……と、トナカイさんの観察、楽しいなぁー」

「……ましろ、双眼鏡持って何してるんだ?」

「あー、私もトナカイさんのこと双眼鏡で見てたのでー、変態さんの仲間入リですねー。これでみんな変態さんなのでー、気にしないでくださいねー」(メモ帳チラッチラッ)

「…………優しいかよ」


 ちなみにウォータムは、まだ話し込んでいた。

 ……置いてくか。

最後のましろの言葉、読みやすく変更いたしました(__)

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