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12話 ……疲れてるのかな

5/7:建物描写を追加してみました(遅すぎた感が否めない)

「……もう、夕方か」


 頭に填められたギアを外し、目覚まし時計を確認しつつそう呟く俺。

 針が指しているのは5と4、つまり5時20分。

 窓から射す赤色の光が、現在が午前なのか午後なのかを明確に表していた。


 んー、と伸びをして体の凝りを簡単に解す。

 ……と言っても先程昼食に起きたから、そこまで凝ってはいないのだが。


「……なんか、濃密な1日だったな」


 初めてのVRMMO、クルーエル・ワールド・オンライン。

 そこで今日1日を過ごしてみて、俺の心は、深い充足感、と呼べるものが満たしていた。

 今まで感動したことなんて数えるほどしかなく、泣いたことなんて赤ちゃんの頃を除けば一度しかない、この俺が。

 まるで童心に返ったような、全てが新鮮に感じられた、あの頃に戻ったような。


「……ああ、そういうことか」


 つまりは原理はその時と同じ、ということか。

 今までしたことのない体験、初めては例えどんな思い出であっても記憶に残る、その程度の言葉で表せることなのだろう。

 ……だが。


「……この思い出がずっと残るのならば、それは」


 ――とても、素晴らしいことなんじゃないか。

 そう思える心が残っていたことに、また驚く俺。

 そして、同時に思ってしまった。


 これはあくまで一時的な夢で、いつか覚めてしまうのでは。

 それは比喩だが、比喩ではない。

 新しい体験というのは、いずれそうではなくなる。

 毎回初めてだというのは、ただの幻想だ。

 初めては1回目で散るものだし、その後は決して、初めてなんかではない。

 俺は、それが怖い。


 ……矛盾しているというのは、わかっている。

 本来共存するはずのない相反する感情が、俺の中に渦巻いているのがわかった。

 もっと、このゲームで遊びたいという感情と、やるべきではないと思う、この感情。

 思い出を大切にしようという感情と、どうせそんなこと無理だから楽しい記憶のまま止めろ、という理性。


 ──そう、失うのが怖いのだ。

 せっかく人の心を、楽しみを手に入れたのに、それを失うのが。

 人間は、いつか飽きる生き物だ。

 その未来は、どう頑張っても訪れる。


 俺はその時、一体どうなっているのだろうか。

 果たして、過去にすがるだけで、生きていると言えるのだろうか。


 それはつまり、死んでいるのと同義──


「……この考えは止めよう」


 そうだな、そんな未来のことを考えても仕方がない。

 ……仕方が、ないのだ。

 例えその未来が、明日来るかもしれなくても。


 今は、これが楽しい。

 それで、良いじゃないか。

 うん。


「……また、カップラーメンでいいかな」



 ────



 夜8時。

 別に見たいテレビもないし、まだ眠くもないと、テキトーにつけた番組を惰性で見ていた。

 そんな時、


 ピンポーン、とインターホンが鳴った。

 心当たりの無かった俺は、玄関まで見に行った。


「……秋人か」

「よぉ、夜も一緒にインしないか?」


 夜。

 ……そう言えば、1日はまだ終わってなかったな。

 勝手に終わったような気がしていたが、別にそんなことはなかったな。

 ……やることもないし、やるか。

 ……あくまで、誘われたから、仕方なく、だ。


「……じゃあ、するか。どうせ明日も休みだし」

「そう来なくっちゃ! 勿論ましろもいるぞ!」

「了解。今からでいいか?」

「おう、そう言うと思って、ましろはもうインしてるぞ」

「……気が早いな」



 ――――



「こんばんは、トナカイさん!」


 インすると、すぐにましろが話しかけてきた。

 ……うーん。

 なんか……?


「……ましろって……」

「と、待たせたな!」


 俺がましろに聞こうとしたとき、ウォータムがインしてきた。


「? 何ですか?」

「……んや、忘れてくれ」


 ……別に、火急の要件って訳でもないしな。



「よしじゃあ、狩りに行くか……どっせい!?」

「待ってくれ、先に少し寄っときたい所があるんだ」


 無思慮に狩りに行こうとするウォータムを足を掛けて転ばせ、俺はましろに向き直った。


「寄っておきたい所……ショップじゃないですよね?」

「ああ、これ以上所持金減らすことはしたくないしな」


 ショップの地下で何かしら試す、と言ったことはできるだろうが、試したい物は今はない。

 そう、俺の行きたい場所はそこではない。


「役所に、行こうと思ってる」



 ────



 ……ここで、今更ながら街中でできることについて説明しようと思う。

 街で、プレイヤーが利用できる施設は主に7つある。

 ショップ、役所、病院、コロシアム、兵糧通り、アイテム掲示板、倉庫。


 ショップは言わずもがな、弾や銃の売買を行える他、買った物を試すことのできる試射場も併設している。


 役所は今まで得たスキルの確認、メインスキルの変更が可能。


 病院は薬だけでは治らない部位欠損を治せる。


 コロシアムはルールを定めた戦闘をすることができ、観戦も可能。


 兵糧通りは食事が可能な飲食店の集まる通りで、食事ができる他弁当などの携帯食料を買うこともできる。


 アイテム掲示板では、武器も含めたアイテム類を、その場にいなくても売ることが可能。


 最後に倉庫は、アイテムを預けることができ、ショップに売っている金庫を預けることにより、その分のお金も預けることができるようになる。


 ……今まであまり触れて来なかった理由は、役所以外有料だからだ。

 ショップ、兵糧通り、アイテム掲示板は元々お金が関係する物であり、病院も多少割安だが、普通に有料。

 コロシアムは使用料がかかる上武器やアイテムは消耗しっぱなしだし、倉庫は預けられる数を増やす時に、更に1回開く毎にお金がかかる。

 ……唯一役所だけが、無料で使用可能なのだ。

 金欠である俺達に利用できるのは、最早ここしかない、という訳だ。

 早く狩りで稼いで来い、ということなのだろう。


 俺は現地に着き、見えたそれに、目を見開くことしかできなかった。

 街の四方を囲む壁より高いそれは、他の建物と比べてどこか異彩を放っていた。



 曇天を反射し、黒く輝く窓ガラスは他と同様だが、その量が圧倒的に違った。

 全体がガラスで覆われており、無機質ではあるのだが、他の建造物に比べると、そこには生気が宿っていた。

 まるで漆黒の鱗に覆われた眠れる竜を見ているかのように、俺は一瞬息を呑んだ。


 何より、それは直立していた。

 真っ直ぐと、天を貫くように。

 その、立てた直方体を思わせるデザインを見て、俺は直感的に思った。



「……普通の、ビルだ」



 無機質な鈍色のなんかよくわからん素材達が主であり、また近未来チックな歪な外観をしている建造物が多いこの世界において。

 それは今現在も使われている、真っ当なビルだった。



 ……いや、全面ガラス張りなのが真っ当かと言われると、そうでもないのだが。

 直立してる高層建築物がこれ以外に見えない、といえばその王道さが伝わるだろうか。

 ……大体曲がったり枝分かれしたり、ぐるぐる回ったりしてんのよ、あれ。

 効率性どこ行ったのかと。


 まぁなんだかんだ言って、今までのSFな感じも好きっちゃ好きだけど、この効率性重視のスタイリッシュなかっこよさも嫌いじゃないんだよな。

 ……と言っても、恐らくこれの原型であろうビルは生では見たことないんだが。

 というかそこまでビルに興味があったわけでもないのだが、この世界で初めて普通のビルを見たからか、少し心が動いた。


 ……まぁ、全面ガラス張りである理由は相変わらず不明なまんまだがな。

 他の素材よりも強度は落ちるだろうし。


 俺の発言に、すかさずウォータムが突っ込む。


「……いや、さっきも見ただろうが」

「いや……正直金配りの衝撃がでかすぎてあんまり見てなかった」

「そこまでですか……本当に申し訳ないです」

「うん、気にしないで? 一生忘れないとは思うが、気にしないで?」

「余計気にしますよっ!?」


 冗談だから、本当に気にしなくてもいいからな?


 さて、本題に戻ろう。

 あの忌々しい事件が起きた泉(売却金ばら撒き事件でお馴染み)の前にあるのが役所だ。

 先程も説明したが、ここでは無料で、そう無料でスキルの確認やメインスキルを入れ替えが可能となる。

 勿論メインスキルに設定できるのは、今まで得たサブスキルの内どれかだ。

 サブスキルは日頃の行動で得ることが可能で、初期スキルも大体が手に入るらしいのだが、一部手に入らない物もあるらしい。

 その逆もあるらしいが、詳しくは不明である。


「ここって確か、自分の持っているスキルの確認ができるんだっけ?」

「それと、メインスキルの変更ができるんですよ」

「……遅いわお前ら」

「「何がっ!?」」


 もう俺が先にモノローグで説明したじゃないか。

 更にその部分は2度も説明してんだよ。

 折角ここまで読んでくれた奇特な読者を、「しつこい」とかいう理由でみすみす逃したいのか?

 全く……あれ、俺が1番しつこくて粘着質だって?

 そんなこと言う奴は……手榴弾で爆破しちゃうぞっ☆

 ……疲れてるのかな。

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