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10話 本当に、NonSenseだな

4/16:スナイパー側の具体的な金稼ぎの方策を追加。

あとついでに、少々書き足しを行いました。

4/20:ちょっとだけ修正(笑)

4/23:ドラグノフについて、わかりやすく記述しなおし。

そしてついでにかっこいいシーンも追加☆

「ちッ、まさかあれをかわすたァな」

「なんだ、かわされたのかよ」

「いや、ヘタクソなだけなんじゃねぇのか?」

「ちげえねえ、ぎゃはははは」


 ちッ、うるせえ奴等だ。


 ……これでも隙をついたつもりだったんだが、あの黒髪の男、あなどれねェな。

 この濃い霧の中で、隙をついたはずの俺の銃撃をかわした……それも味方を庇いつつ、だ。

 どンだけ気を張ってればンなことができンだ、何者なにもンだよあいつ。

 イラつくなァ。


 オレはドラグノフを抱え、一人頭を回した。



 ――――



 オレはナルヴァス、ゲームでは全てそう名乗ることに決めている。

 高校生の中頃までは、少ォしヤンチャしていた俺だが、とあるMMOに巡り会ってその考えは変わった。

 ここでは、殴るどころか殺しすら許される。

 ……なンて、そんな危険思想を掲げていた訳でもないが、オレはそこでPKをしていた。

 別に、特に理由はなかった。

 ただ、絶望的な表情が見たかったンだと思う。

 暴力とは無縁の世界で生きてきた彼等が、初めて受けた暴力に屈する。

 その瞬間を、オレは見たかったのかもしれない。


 そして、CWOが届いた時に、オレは考えたのだ。

 ここで、殺しまくってやろう、と。

 ……それも、荒野にいるような有象無象ではなく、他の場所に来るような、自称頭脳派どもを。

 その鼻っ柱を叩き折るため、オレは立ち上がった。


 4人の同士と共に。


 武器を選ばなければ、初期資金が増えるだろう。

 そう予測した俺達は全員選ばず、また初心者セット全てを売り払った。


 射手は、じゃんけんで決まった。

 オレは神に愛されているのだと、本気で思った。


 そうして入ったガンショップで、オレは運命の出会いを果たした。

 それがこの、セミオートマチックスナイパーライフル、ドラグノフだ。


 ボルトアクションライフルと比べ、セミオートマチックライフルはその性質上、連射機能が高い。

 その代わり機構が複雑になりやすく、重量も重くなりやすい。

 そして値段も少し高め、というのが世の常だ。

 逆にボルトアクションライフルはその逆で、単純故に弾詰まりし(ジャムり)にくく、耐久性も比較的高い。

 そして精度も、ボルトアクションライフルの方が基本的に高いのだ。


 そしてオレはそれを知ったうえで、このセミオート狙撃銃、ドラグノフを選んだ。



 ドラグノフ狙撃銃。

 AK-47を原型とするそれは、いくらか細身で、軽量化のためか木製の銃床に大きな穴があけられており、どこかスタイリッシュな印象を受ける。

 スコープは標準装備、そのバリエーションも多彩だ。

 使用弾薬は、ロシアで主に使われていた『7.62x54mmR弾』であり、装弾数は10発の箱型弾倉。

 一発の精度を犠牲にした代わりに、AK-47譲りの頑丈さと信頼性の高さを受け継いでおり、セミオートの速射性も相まって市街地戦における中近距離狙撃に適した造りとなっている。


 要するに、敵が一発で狙い撃ちするよりも先に、何発か撃って競り勝つ。

 中距離(300~400メートルくらい)で戦闘になりやすい市街地戦において、精度よりは速射性が重視されたのだ。

 それがこの戦闘において、どのような結果をもたらすのか。

 オレ達はまだ、知らなかった。



 その細身なフォルム、セミオートという速射性、何よりその、かっこいい名前。

 オレは一瞬で、この銃にすると決めた。


 少し高めのその銃を買ったせいで、沼でも見えるような双眼鏡を買うには金が足りなくなってしまった。

 仕方なく荒野でプレイヤーをテキトーにぶっ殺し、金を手に入れた。

 そして漸くオレ達は、開始2時間で高性能な双眼鏡と、かっこよすぎる最高の銃を揃えることに成功したのだ。



 オレは今、無敵だ。

 霧に囲まれ、お互いの姿はオレにしか見えない。

 こっちから撃ち放題だ。

 例え外そうとも、弾はいくらでもある。

 相手の攻撃が当たりそう、もしくは見えそうな所に来れば、移動すればいい。

 こちらの位置がバレる要素など、微塵もないのだから。



 オレが潜伏し始めた数分後に、とあるチームが索敵範囲に入ったのだ。

 彼等は3人で、1人はSenが高いみたいだが、流石にこのデジタル双眼鏡には敵わない。

 オレはその方向に銃口を向け、タイミングを見計らった。

 狙うは、あの白い髪の小娘。

 あいつがSenが一番高いようだし、更に女1人と男2人のチームだ。

 確実にどちらかは、あいつの恋人だろう。

 よしんば違ったとしても、チームの目玉を失った状態ならば、霧の先の正体不明の敵を相手に、勝利できる可能性が万に一つもなく、ちゃンと逃げ切れるかも怪しいだろう。


 そう考えて、オレは銃弾を撃ち込ンだ。

 ……だが、はずした。

 相手が異常、だということに薄々気がつき始めていたが、それよりもオレはままならないことにイラついていた。


「……まァいい、これでジエンドだ」


 オレは今度こそと思い、引き金に手をかけた。

 だがその瞬間。


「……あ?」


 突然、視界が黒に染まった。

 いや正確には、スコープの先の景色が、というべきだろうか。

 スモークグレネード、か。

 ……確かに、それなら一時的にオレの視界から外れることは可能だろう。

 だが、あくまで一時的で、範囲も狭い。

 恐らくあいつらは、オレに恐れをなして、逃げているはずだ。

 大体の方向さえ掴めていれば、双眼鏡で探して撃てばいい。


 そう考えていたオレだが、次の瞬間、目を見開いた。


 なッ!? あいつら、向かってきてやがる!


 そう、あいつらはあろうことか、スモークグレネードを突っ切り、まっすぐこちらに向かってきたのだ。

 背の高い茶髪の男が、白娘を抱き抱えて走ってくる。

 その後ろから少し遅れて、あの黒髪の男が着いてきていた。

 あいつらは一体、何を考えているンだ。

 まだ距離はあるが、オレは謎の悪寒に襲われた。


 ――早く、撃たなければ――


 すぐさま銃口のズレを修正し、撃つ。

 狙いは変わらず、背の高い男の背中にいる、白い娘。

 ドラグノフの速射性が、いかんなく発揮される。

 今度こそ貫いた。


 そう、思ったのだが。


 一瞬何が起こったのか、わからなかった。


 娘の頭を正確に貫くと思われた、ライフル用の先の尖った銃弾は、なぜか茶髪の男の頬を裂いていた。

 意味が、わからない。

 その手には、明るく光る青色の刃。

 それが光剣だと気づく前に、黒煙が彼等を包んだ。



 ……糞が、また使いやがッたな!

 ……だが、まだ大丈夫だ。

 ここまではまだ距離があるし、黒煙の中では相手も攻撃できないはずだ。

 更に言えば、オレらは5人いる。

 例え1人が撃たれて死んでも、他の4人がドロップしたものを回収する。

 更に言えば、オレが撃たれて死ぬ確率が5分の1であることをも意味している。

 完璧に、オレの勝ちだ。

 そして煙から出てきた瞬間が、お前らの最後だ。


 そう思っていたの、だが。


 ……パァン。


 急に目の前が、暗くなった。



 ――――



 俺が考えたのは、実に単純なことだ。


 相手がましろを超えるSenを持っている可能性は、早々に否定できた。

 ましろの30という数字は、スナイパーにとって最大限ともいえる。

 これ以上削ると、そもそも狙撃手として危うくなるからだ。

 そしてその場合だと、あんな正確な狙撃はできるはずがないのだ。



 そこで思い立ったのだ。

 相手が双眼鏡やスコープでこちらを視認している可能性に。

 デジタル双眼鏡の中には、画像補正をしてくれるものもある。

 そんな双眼鏡やスコープを使えば、この狙撃も可能である、と。



 相手がそういったものでで此方を目視している、と仮定した場合、感覚の中で最も頼りにしているのは視覚だといえる。

 元々視覚は聴覚の100倍もの情報のやり取りがされている、という言葉もあるのだ。

 つまりその視覚を潰せば、大体の人間は狼狽え、その場所を見失ってしまう、というわけだ。


 そこで俺が使ったのは、スモークグレネード。

 双眼鏡やスコープからも逃れられると思ったのだ。


 そしてそれは、結果的に上手くいった。

 相手はやはり、目視に頼っていた。

 煙の中では相手は確かに、此方に銃を撃ってこなかった。

 霧で元から、視界が殆ど制限されているにも関わらず。

 ……すなわちグレネード時の視界阻害が、相手の許容量を超えたのだ。


 それを1個目で確認した俺は、ゴーの合図と共にましろを背負ったウォータムを突っ込ませ、俺もそれに続いた。

 煙の中から飛び出し、俺はすぐに2個目を使うか迷った。

 だがましろが俺の方を向き、


「多分もうすぐなので、私が合図したら使ってください」


 と言い放ったのだ。



「……ウォータム、絶対に死なすなよ」

「わかってるっての」



 俺は左手にスモークグレネードを、右手に破片手榴弾を持ち、全力で走った。


 少し前方を走るウォータムがいきなり光剣を取り出し、虚空に振り切った。

 ぎぃん、という音とともに、何か小さなもの、恐らく銃弾がウォータムの頬を掠める。

 その口元は、やってやった、とでも言いたいのか、獰猛な三日月を描いていた。


 ……流石だな、惚れるわ。


 ウォータムが銃弾を弾きやがった、その直後。

 ましろは、叫んだ。



「…………いたっっ!」



 彼女がそう言った瞬間、俺はスモークグレネードを投擲。

 3人の中間で広がった黒煙は、見る見る間に俺達を覆い隠した。

 その色は漆黒で、俺達は隣の相手すら目視することは叶わなかった。

 だが、俺達には。


「方向はそのままで、数は5、距離およそ125メートル」


 極限状態で繋がれた、絆があった。

 信頼関係があった。

 ……彼女は俺に、いけますか、とは問わなかった。

 そして俺も、何も答えなかった。

 それが、答えだ。



「いっっっけぇぇぇええええ!!」



 俺は一寸先も見えない暗黒の中、それを思いっきり投擲した。

 漆黒の闇を貫き、光の筋を作ったそれは、放物曲線を描きつつ飛んで行く。

 そして、狙撃銃を持った男の目の前に着弾、爆発。

 その衝撃と飛び散る鋭利な破片は、『M67』の名に相応しい威力と範囲を持ち……瞬く間に5人のHPを全損させた。



 ――――



 現場に辿り着いてみると、そこには5人分のドロップ品が落ちていた。

 そしてそれは正に、俺達の勝利を示していた。


「……まさか初探索が、こんなにハードになるとはな」

「本当に疲れた。あー、もう2度とこんな経験はしたくねーな」

「ふふふっ、そうですね」

「……ああ、流石の俺ももう懲りた、対人戦なんてわざわざやるものじゃないな」


 魔物と違って、人間は純粋な悪意、害意を向けてくる。

 そんな相手と戦うくらいなら、確かに魔物相手の方が気が楽だろう。

 そのことを俺も、今回の件で痛感した。

 ウォータム、お前は正しかったんだな。


「ましろ、ウォータム、ありがとうな。俺達が勝てたのは、2人のお陰だ」

「何言ってんだ、ほぼお前の手柄だろうが」

「そうですよ、あそこであの案がなければ、私たちは死に戻っていた訳ですし」


 ウォータムは、その足でましろを運び、いち早く敵を察知させるために尽力してくれた。

 ましろは敵を感知し、その情報を正確に俺に伝えてくれた。

 ……2人とも、本当によく頑張ってくれたと思う。


「というか、トナカイさんの最後の投擲、凄かったですね!」

「ああ、まさか5人纏めて吹っ飛ばすとはな」

「……いや、お前ら煙幕で見えてなかっただろ?」

「声でわかりますよ、どれだけ気合いを入れて投げたかは。実際、丁度真ん中に着弾してますし」


 そうか、叫んでたか……無我夢中で気づかなかったが、恥ずかしいな。


「ま、まあ、とりあえずドロップの確認しようぜ」

「誤魔化したな」

「誤魔化しましたね」

「はいはい、そういうのはいいから」


 まず、金は合計で1000Gか。

 ……半分しか落としてないにしても、あんまり持ってないなあいつら。

 やはり、双眼鏡とあの狙撃銃が結構高かったのだろうか。


 そして肝心のドロップ品目に関してだが、結構良い物を落としてくれた。

 それは、双眼鏡とあの狙撃銃だ。

 どちらもショップではある程度高値が付いており、金欠な俺たちにとっては凄く嬉しい。

 双眼鏡は、さらなる索敵の方法として有効だし、狙撃銃はましろが使える。

 筋力値を高めに設定したましろならば、使いこなせる。

 ……そう、思ったのだが。


「すみません、ただの我が儘ですが……この銃は使いたくないです」

「……そうか、それはまぁ仕方ないな」

「……なので、この銃を売ったお金は」


 そこで彼女は、一旦言葉を区切った。

 大きく息を吸って、彼女は言った。


「……PKを受けた人達に、少しでも多く渡したいと思っています!」

「…………」

「……だめ、ですか?」


 俺とウォータムは、顔を見合わせた

 そして同時に、口を開いた。


「「ぷっ、ははははははは」」

「……!?」


 それは、ただの偽善だ。

 少し前の俺なら、こう言って切り捨てていただろう。

 ……だけど、それは彼女なりの不器用な優しさでもある。

 不思議とそう思えたのは、やっぱりましろのお陰で。


 俺はましろの頭を撫でつつ、笑顔でこう言ったのだ。


「良いに決まってるだろ。……俺も少しは出すよ」

ここからは1日1〜2話投稿でいきたいと思います。

これからもよろしくお願いしゃす!

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