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8話 気のせいでやんす

4/16:色々修正。

ミスですか? 気のせいじゃないですかね?

 現地にて。


「ゲコッゲコッ」


 そこにいたのは、端的に言えばでかい蛙だった。

 一応ウォータムを先頭たてに進んできたのだが、声が聞こえるほど近付いても、なんの反応もない。


「よし、ウォータム行く?」

「なんで俺?」

「いや、なんかこの後出番少なそうな気がしたから」

「何故に!?」


 なんとなくだ、なんとなく。

 ほら、行け。


「わかったよ……ほいっと」


 お、流石速いな、陸上部ってのもあるが、Agiが高いのが主な理由か?

 まるで1つの弾丸のように突っ込むウォータムには流石の蛙も気付き、攻撃をしかけてきた。

 舌を伸ばし、ウォータムを絡めとろうとするが。


「……遅いな」


 その一瞬後には、その舌はバラバラになって吹き飛んでいた。

 その手にはいつの間にか、刃渡り1メートルほどの光が、虚空を貫きそして切り裂くように煌めいていた。


 彼が持つのは、光剣。

 手の触れ合うような超近接戦闘において、絶対的優位を持つ武器。

 1~2メートル先程度の射程しか持たない代わりに、位置にもよるが殆どのプレイヤーを一撃二撃で沈める、化け物武器。

 勿論これは初期武器で性能は最底辺……の、はずなのだが。


 彼の手に握られるそれは、並みの銃火器を凌駕するほどの瞬間火力を有しているという。


 ……とりあえず、あれかっこいいな!?

 俺もどうしよう、今度使いたいもんだな、光剣。


 ウォータムは加速し、ついに蛙に肉薄。

 光剣はぬめぬめとした皮膚をなんの抵抗もなく穿ち、その先にあった心臓すら余裕で刺し貫いた。

 体勢を維持する力を失ったそれは、水音をたてて、その浅い沼に顔をうずめた。


 どうやら事切れたらしいが、ポリゴン体にはならない。



 ……あれ、ポリゴン体になって消滅し、弾が残るって感じだったような気がしたが……。

 あ、そうか、剥ぎ取りか。

 てっきり持ってるだけでドロップに追加されるのかと思ったが、違ったか。


「……よし、終わったぞ」

「流石、やるなぁ」

「は、当たり前だろ、お前よりかはやるぞ俺は」

「どうだか。それはともかく、今度あの舌ぶった斬ったやつ教えてくれよ」

「いいけど、光剣使えないだろお前?」

「このナイフでなんとか……ならないかな」

「ならねぇよ」


 そんなことを言いつつ、俺は蛙に近づき、お腹を切り開くように一閃。

 瞬間、蛙の死体はポリゴン体になって消えた。

 俺はすかさず、アイテム欄を確認する。


「お、弾と素材手に入ってるな。2人はどう?」

「私は、何も手に入ってないっぽいですね」

「……どうやら、ナイフで解体した奴のみアイテムを回収できるっぽいな」

「……うーん、それだとナイフがセットに入ってない意味がわからんから、普通は死体が残らないんじゃないか?」

「成る程、それなら多分ナイフを持っている人が倒した場合に死体が残って、ナイフで捌けば捌いた人がアイテムを得れる、ってことですかね。ナイフなしで倒したらそのままポリゴンになって、その場に誰でも回収可能な弾のみ落ちてる感じで」

「多分それだな。後安心しろ、トレード機能があるから後で山分けにするからな」

「勿論、そうじゃなかったらぶっとばしてるわ」

「言ってろ」


 つまり纏めると、剥ぎ取りナイフを持っている場合、それで敵の死体を掻っ捌かないとアイテムが手に入らないってこと。

 そして死体を出すには、剥ぎ取りナイフを持ったプレイヤーが倒す必要がある、ということだ。

 持ってない状態で倒すと、ただポリゴン体になって消滅、その場に弾だけ残される、といった仕様らしい。


 ちなみに、このゲームには普通はチーム機能がない。

 だからこんなややこしいシステムになっているんだと思う。

 ちなみにフレンド機能はあり、既に2人とも登録を終えている。

 今のところ恩恵は、ログインしてるかがわかったり、メッセージを送れたりするだけらしい。

 それも街の外じゃ送れないって……まぁ、それじゃ便利すぎるもんな。



 ────



 今後の方針としては、魔物狩りをしつつPKにも十分注意する、ということになった。

 Senの高いましろに索敵を任せれば、3人で固まっていても手榴弾投げ込まれたりショットガンぶっ放されたりする可能性は低い。

 ……俺みたいな異色なやつが他にもいれば別だが。

 と言っても、流石にましろだけに気を張らせる訳にもいかないので、俺らも周りに気を付けながら進む。

 進んでいた、のだが……。


「このままのペースで行けば、約1分後に前方にいる魔物と接敵します!」


「あっ、あちら側に数人、恐らく4~5人のプレイヤーさんがいます。こちらには気付いてはいないようなのでスルーしますね」


「あっちに魔物が……マッドフロッグですね、ここから仕留めちゃいましょう」


 どうやらましろは、何かしらの方法で大体100メートル先にいる魔物やプレイヤーを察知できるらしい。

 情報の正確性もありながら、それを伝える能力も凄まじい。

 何より、自分で考えて行動している。

 ……これは、呼び名を訂正しなきゃいけないかな。


「ましろさん、わっしは次に何をすればいいでやんすか?」

「ちょ、トナカイさん!? え、なんでそんな口調に!?」

「……いや、俺もその気持ちわかるわ、俺がましろの兄貴じゃなかったら確実にそうなってる」

「お兄ちゃんまでなんで!?」


 兄は、妹の前ではカッコつけたい生き物だもんな、わかるぞそれは。

 だがな、今までのお前の行動を思い出してみろよ。

 俺に手榴弾口に入れられ爆破されたり、股間に手榴弾思いっきり当てられて悶絶したり。

 ……何がとは言わないが、もう遅いんじゃないか?


「なんでトナカイは俺を同情するような目で見てるんだ……」

「気のせいでやんす」



 ────



 そんなこんなで、街の近辺を1時間くらい探索した。

 俺とウォータムはましろのお陰で全く消耗していないが、ましろは別だ。

 肉体的疲労(厳密にはないけど)もさることながら、常に周りに意識を向けていたため精神的疲労が溜まっているだろう。

 更にこれは、初陣だ。

 慣れないことをする、ということはそれだけエネルギーを使うし、そこまで無茶をするべき時じゃない。


「そろそろ、帰るとするか」

「ああ、そうだな。……俺も剥ぎ取りで何故かマスタリが上がったし」

「……ぶふっ」

「トナカイ、お前は笑うんじゃねえよ! ……自分でもこれはあれだと思ったけどさぁ」


 ……ウォータム、お前外さないな、凄いな。

 賞賛に値します。

 後最後、指示語が多くて何が何だかわからないな。


「…………いえ、私はまだ行けます」


 ましろは少し、不満そうだ。

 もしかしたら俺達がましろを気遣っていることがバレたのかもしれない。

 うーん、ましろのいう通り、まだ続けるべきか?

 ……安全を期すなら、やはりここで止めとくべきだろう。

 だが、ここまで頑張ってきたましろの言葉だ、無下にはできない。


「……ウォータム、どうする?」

「……難しいな、こうなったましろは頑固だぞ」


 小声でウォータムと話し合ってみたが、うーん。

 少し考えて、俺は口を開いた。


「……ましろ」

「……はい」

「行こう、だけど後30分だけ、な。すまないが、俺は疲れてそれくらいが限界だ」

「……! はい!」


 ましろは輝くような笑顔を見せてくれた。

 それだけで、許可した甲斐があったものだ。

 ……だが、気をつけなければ。

 この30分間、例え街の近くで魔物が弱くとも、何が起こるかなんてわからないのだから。

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