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TAS(ツール・悪役令嬢・スピードラン)シリーズ

TAS (ツール・悪役令嬢・スピードラン)

作者:momoyama
 カサカサカサカサと、音が聞こえる。
「あ、アシテッド令嬢が来たぞーっ! 皆逃げろー!」
 そんな声が聞こえた後、廊下に出ていた学内の人間が一斉に教室へと避難する。

 無理もない。何故ならチーター並の速さでアシテッド家のご令嬢が廊下を走っているのだ。1フレーム間に左右に向きを変えながらと言う、到底人間ではできない技術を使って。

 彼女曰くこの走り方は「1/F走法」と言い、左右のスティックを1フレーム間に交互に入れる事によって移動速度を大幅に上げているのだ。スティックとかフレームとかよく分からない単語が飛び出てるが、まぁ触れないでおこう。

 彼女がそんな人間離れした技術を使う目的は、ただ一つ。
 僕の隣にいるこの国の王子、ドランとのイベントをこなす為だ。

「ドラン王子、少しよろしいですか?」
 さっきまで高速で走っていたとは思えない落ち着いた表情でアシテッド令嬢はドランに話しかける。
「うわっ!? いつの間にいたんだ、貴様は!」
 ドランは今の今まで僕との会話に夢中で、高速で走るアシテッド令嬢に気が付かなかったようだ。さっきの声も聞き逃していたらしい。
「申し訳ございません。『なんだあの走法は!?』ルートよりも『いつの間にいたんだ、貴様は』ルートの方がわずかに会話の省略ができるので、王子をびっくりさせてしまいました」
「か、かい……省略? 貴様、最近なんか変だぞ。前触れもなく窓から飛び降りたり、飛び跳ねながら勉学に励んだり。周囲の皆が『婚約破棄されて頭がおかしくなった』と噂してるせいで、私の評判にも傷がついているんだ。やめてくれないか」
「それよりもルッツさんがどちらにいるのか存じませんか? クッキーを焼いてきたので彼女に渡したいのですが」
「『それよりも』で片づけるな。それにしても貴様がルッツにクッキーだと? 1か月前まで彼女をいじめていた貴様が、なぜ突然クッキーなど……」

  ルッツとは、ドランの恋人の令嬢だ。1か月前までアシテッドは彼女をいじめていたため、ドランに婚約破棄されたと言う経緯がある。

「好感度上げのためですわ。ケーキだと上がりにくいんです」
「そ、そうか」
「では知らないようなので、私はこれで失礼いたしますわ」
「い、いや待て。話は終わってないぞ!?」
 そう言ってアシテッド令嬢はその場を立ち去……るかと思いきや、近くの壁に背中で何度も体当たりを始めた。

「……何をしているのだ?」
 ドランが疑問を口にする。
「話しかけないでください。腰ワープの最中です」
「こ、腰ワープ? いったいなんの事……「「ヤッフー!」」って、ええっ!?」
 ドランは驚愕した。壁に体当たりしたアシテッド令嬢が壁をすり抜けてどこかへと消えてしまったのだ。ヤッフー!と言う掛け声とともに。

「お、おいラタ! あいつは何なんだ!? 魔女か? 魔術師か? それとも魔王か!?」
「落ち着こう、ドラン。あれはこの世界のバグを利用して位置座標をずらしただけです。僕も彼女に教えてもらったからできます」
 ドランに話しかけられた僕は、慌てふためく彼をなだめようとする。
「お前もあんなんできるの!? あれ結構自然界の法則打ち破ってると思うんだけど!」
「大丈夫。エンディング呼び寄せと王子増殖バグに比べたら比較的まともです」
「エンディングってなんだよ! 私が増えるってどういう状況だよ! と言うかお前あいつと仲良すぎだろう、さっさと縁切れ!」
「無理ですよ。王子が1か月前に彼女に婚約破棄した後、私も一度彼女と縁を切りました。ですが、逃げても逃げても壁をすり抜けてやってくるんですよ彼女」
「怖っ!? 何そのホラー体験! 何があいつをそこまで駆り立ててんの!?」
「彼女曰く僕の好感度上げるのが目的だそうですよ。ようするに僕を惚れさせるのが目的って訳です」
「そんな恐ろしい事をして惚れられる訳ないだろうに……」
「残念ながら本当です。その証拠に私は今や彼女無しでは生きられない体になってしまいました」
「チョロすぎだろうお前は!? もっと普通の人間に恋しろっ!」
「いずれ僕の気持ちも分かるようになりますよ……。何故なら今、彼女は貴方とルッツさんの好感度上げに奔走していますからね」
「な、なんだと……!?」
「もう既にこの学院の教師1名と彼女の弟と武闘派の生徒が好感度MAXになったそうです。残っているメインキャラクターはあなたとルッツさんだけです」
「メ、メイン? よく分からないが私は彼女に狙われているのか!?」
「えぇ。さっきあなたに話しかけてきたのだって、良い印象を与える為の口実ですよ、多分」
「くっ。だが私は屈しないぞ! この国の王子として、心の強さと言う物を見せてやる!」
「そうですか……いつまでその気持ちが持つか、楽しみです」

 そのようにドランと会話していると、時計台が鳴る音が聞こえた。
「おっと、もうこんな時間ですか。そろそろ僕も出かけなくては」
「出かける? どこに出かけると言うんだ、ラタ」
「えぇ。あと1時間後に魔王が復活するので、それの退治に行く予定があるのです。まぁその直前に雑魚モンスターでレベリングする必要があるので、まずはそこに行きますがね」
「へ、まおう……へっ!?」
「さーて、今回は何分で倒せるかなぁ。運よく『令嬢高速ルート』になってたから、普段より時間短縮が望めるぞー!」
「え、ちょ、ま! おい待てって!」
 ドランの言う叫びを無視し、僕は……近くの壁に背中で何度も体当たりを始めた。

「おい、腰ワープしようとすんな!話を聞け!」
「話しかけないでください。腰ワープ習得ができる『令嬢高速ルート』は1000分の1の確率なんです。今回を逃せば記録更新は難しくなる」
「ルートってなんだよ!? 記録更新ってなんだよ!?「「ヤッフー!」」……つーかなんで腰ワープの時「ヤッフー!」って言うんだよおおおおおおおっ!!!」

 ドランのその叫びを聞きながら、僕はレベリングする場所へと腰ワープした。

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