転移と企み
「あった、宝箱だ」
先頭集団の中から声が上がる。
「うそ、どこどこ」
「あそこだよ。あの部屋の一番奥にある物がそうじゃない」
「あ、そうだわ。あれは絶対宝箱だ」
とても広い部屋の一番奥に本当にゲームの中に出てくるような宝箱がおいてあった。
「おい、どけそれは俺のだ」
「何言ってんだよ。俺が一番先に見つけたんだ俺の物だろ」
「おまえこそ何言ってんだよ。俺がいたからここまでこれたんだ。だから俺の物だろ」
「いやおまえ何もやってないじゃん」
女子視点
「男の子は本当に宝箱が好きね」
あきれ顔の冬
「そうだね何がいいんだか」
同じくあきれ顔の夏
「ハア、ハア、あれを集君にあげれば集君は私に・・・」
目が血走っている美雪
「美雪怖いよ。そしてよだれをふきなよ」
そんな美雪に引いている優香
「・・・」
「どうしたの澪姉さん」
「何かおかしくない」
「なにがですか」
「だって昨日宝箱の出るような階層には行かないとあいつ言ってなかったよね」
「ああ確かにあいつは言ってなかったわね」
「でも宝箱はランダムに出るはずですから奇跡てきにこの階層に出てきたんじゃないんですか」
「それだけではないの・・・さっきのステフィーさんの言葉もおかしくなかった。まるで宝箱を自分が設置したみたい」
「そう言われればそんな感じはするけど・・・考えすぎじゃない」
「ならいいのだけど・・・」
『姫様をあいつ呼ばわりする女子たち(笑)』
その時後ろのほうから
「その宝箱を開けるな!!」
と集の声が聞こえてくる。
「え、集の声!?」
いち早く反応する優香
元の視点に戻る
「その宝箱を開けるな」
といいながら集はやっと先頭集団まで追いついた。
そこにはまだ宝箱をだれが開けるか話し合い(?)でもめていた
(よし、とりあえずまだ宝箱は開けてないようだな)
「おい、おまえら宝箱は絶対にあけるなよ」
集はもめていた集団にいった。それがまずかった。
「はぁ、何言ってんだよお前・・・さてはお前宝を独り占めするきだな」
モブ1が言った。それに便乗して
「そうだそうだ。後から来たくせに何言ってんだ」
「役立たずがしゃべりかけてくんじゃねえ」
どんどん集に近づいてののしってくる。
そうしている間に宝箱に近づく人に気づかずに・・・
「おい、どういうことだ!宝箱の中に何もないぞ」
そうずっと静かだった聡だ
それを見て
「何やってんだ!」
そう集が言った瞬間地面に魔法陣が現れた。
「ちぃ、みんなこの部屋から全速力で出ろ」
そう言うとみんな入り口に向かって走り出した。
「おいどけ!おれが先にいく」
「邪魔だ!俺はこんなとこで死ねないんだよ」
「さっさといけブス!後ろがつかえてるんだよ」
「きゃあ、ちょっと触らないでよ」
「うるせえ。さっさと行け」
パニックを起こしながら
「みんな遅いぞこのままだと死ぬぞ」
一番早く入り口についたのは案の定聡だった
(いや、お前のせいでこうなったんだけど)
「いた」
誰かがこけた。
(お約束だな)
集は振り返って見るとそれは夏だった。
「はぁ~」
集は一回ため息をついて夏のところに駆け寄った。
そして恐怖心を消すため笑顔で肩をたたいて
「このままだと間に合わない。だから投げるから歯を食いしばれ」
「え・・・エ~~~~」
返事を聞かずにもうみんながいる入り口に向かって投げ飛ばした
「仁受け止めろ!」
「ちょ、お前何やってんだ!」
そう言いつつちゃんと受け止める仁
うん、ナイスキャッチ
そしていよいよ魔法陣の光が強くなった。
「もう時間か。はあ~しょうがない。おい、仁。後は頼んだぜ」
そう言って笑った。
それを待っていたかのように魔法陣が発動した。
そして光が収まるとそこにはもう集はいなかった。
ステフィ視点
(ふふふ、少し予定は変わりましたが、まあ一人はいなくなったので大丈夫でしょう。あとは・・・)
「まさか・・・こんなことをしてくるとは」
その言葉を拾ったのは澪だった。
「どういうことですか」
「これは隣国のエデルリート帝国のしわざでしょう。エデルリートはこういう罠を使って私たちの国を滅ぼそうとしているのです。証拠にあの魔法陣の陣は隣国の旗の紋章でした」
「どうしてこんなことを」
「それは・・・たぶん私たちの国の国土が欲しいのでしょう。今はそんなことをしている場合ではないのに」
「そんなことのために集を・・・」
そう言って澪は倒れ込んだ。
(これでエデルリート帝国は勇者の敵となったな)
そんな澪をみて誰にも分からないようにほくそ笑んだ。
ただそれを見抜いている人がいるとは思わずに
その頃の集は
「ここどこだ」
森の中をさまよっていた。
そしてさっきのことを考えていた。
(たぶんあの宝箱を用意したのは国王とステフィだな。おおかた理由は勇者の敵としてどこかの国を侵略するためだろう。)
「まああっちは仁がいるから大丈夫だろう。それよりもおれはどうしようかな~。せっかく一人になったし自分の好きなことをやろう」
(まずはあれを手に入れて、そして・・・ぐふふふ)
一人を謳歌していた