第2章 determination or failure
太陽の光が俺の頬を刺すように照らす。
俺は自宅のリビングのソファーで目覚めた。
隣を見るとヒメが静かに寝息を立てていた。
何故こんな状況になっているかというと、昨夜俺はもう一つ重要な事を聞かされていたのだ。
それは、元の世界にはゲームをクリアーするまで戻れないという事だった。
俺は、半天世界に閉じ込められたのだ。
不幸中の幸いとでも言うべきであろうか、水や食料といった最低限の日用品は揃っていたのだ。
現状を再び実感させられ、俺は大きなため息をつき顔を洗うために洗面所に向かった。
俺が手で水を救い上げ顔を洗っていると後ろからヒメの声がした。
「おはよう」というお決まりの挨拶を交わし俺は洗面所を出た。
そうして俺は、お湯を沸かしカップ麺を2個用意しお湯を注ごうとした時に、ヒメが洗面所から出てきた。
ヒメは「カップ麺かぁ」と少し不満そうだが、俺は構わずお湯を注いだ。
食べている最中もヒメは文句を言っていたがそれを適当にあしらい、俺たちが食事を終え自室に戻った頃には午前十時を回ろうとしていた。
そうして俺はまた一人無言で考えた。
ヒメ曰わく、元の世界時間軸と、半天世界の時間軸は一致しているらしいのだ。
つまり半天世界が十時なら向こうの世界も十時なのだ。
この話を聞いて、初めに俺は「向こうで行方不明になっているのではないか?」とヒメに聞いたところ、今向こうの世界では『山崎明瑠』とうい存在が抹消されてしまっているそうだ。
そして何より俺はこの先どうしたらいいのだろうか?
戦って相手を傷つけもいいのだろうか?
そうしてなによりも
―昨日の戦闘の感覚―
―鮮血の色に染まった世界―
―鉄臭さー
―恐怖―
ー正義感―
いろいろな思考が頭の中を駆け巡っていき余計に俺を混乱させていくのだ。
その時、ヒメが沈黙を破った。
「急にいろいろあって混乱するのも当たり前だけど、でも殺らなきゃ殺られる世界なんだよ」
ヒメのこの一言は俺に重くのしかかった。
とても深く、悲しい響きを持っていた。
ヒメは続けた。
「そんな顔しちゃダメだよ。私は明瑠君が助けてくれるし平気だよ」
「そう・・・だよな。俺がしっかりしなきゃヒメに申し訳ないしな」
「そうだよ。一緒に元の世界に帰ろうよ」
「それに俺にはもう一つやらなければならない事があるんだ。生きる意味を取り戻さなければ・・・」
「そっか」
ヒメはそれだけ言ってそれ以上は追求しようとしなかった。
そしてそれが今の俺にはとても有難かった。
俺はヒメとやり取りをしている間に一つの決心をした。
「俺は決めた。このゲームを終わらし、ヒメもこのゲームの参加者も俺の大切な人も助ける。そうしてこの半天世界に終止符を打つ」
ヒメは驚いていたが、どこかやはりという表情もうかがえた。
そうしてヒメは確認する様に聞いた。
「それはこの世界を壊すということなのかな?」
「そうだ。俺はこの理不尽なゲームをぶっ壊す」
「私は明瑠君と一緒にいると決めたんだよ。」
「そう言ってくれると有難い」
「でもこの世界を壊すということはどういう弾みがあるかは、誰にも分からないんだよ」
「あぁ。それは分かっている。だけど俺はそんな事では止まれない。助けなければいけない人もいる。そうだろヒメ?」
「それもそうだね、私は君のパートナーだよ。私は君に付いて行く」
俺にとってこのヒメの言葉はとても励みになり背中を優しく押してくれたような気がした。
「ありがとう、ヒメ・・・」