必ず一番下にならないのは
マズイな……
頑張って入ったこの学校、やはり勉強に着いていくのが厳しい。
今はまだなんとか間に合ってるが、それもいつまで持つか……
だが一番恐ろしいのは、高確率で実施される様々な教科のテストだ。
それだけならまだいい、問題は……点数と共に名前を順位付けされた物が廊下に貼り出される事。
それでビリ……つまり一番下に名前が書かれた日には、学年全員に知られるという恐ろしい罰ゲームがある……何としてもそれは避けたいのだが、授業は日に日に難しさを増して追い付けなくなる日付を日に日に減らしている。
「どうすりゃいいんだよ……」
一人席について呟いた。
その時、
「だったら私に任せてみない?」
席の前に一人の女子生徒がいた。
「任せる?」
「だから、一番下になりたくないんでしょ? だから私が手伝ってあげるよ」
「どうやってだよ」
勉強を教えてくれるとかか?
「私が毎回一番下になるんだよ」
毎回一番下になる?
「そうすれば、アナタが一番下になる事は無いでしょ?」
確かにそういうことだが、そう簡単に行くわけないだろう。
「とりあえず次のテストからだね。あ、私メイコって名前だから、それじゃ♪」
彼女は自分の名前を言い残して去っていった。
……いったい何だったんだろう?
そんな出来事があった後の授業、抜き打ちのテストがあった。日常茶飯事にあるから最早抜き打ちとはあまり呼べないが。
内容は少し前に習ったところから数題。そこまで難しいものではなかった。
次の日、昨日のテストの得点が順位と共に張り出された。自分の名前を上の方に見つけて一安心した。
ふと、昨日の会話を思い出してメイコという名前を探した。
見つけた。多分コレをメイコと読むのだろう。
その名前は、ビリに、一番下に書かれていた。
本当に彼女が一番下になっていた。
いや、まさかな。今回たまたまなっただけだろう。
0点もなく一番下になり続けるなんて偶然がそうそう起こる訳がない。
しかし、それは偶然ではなかったのかもしれないと揺らぎ始めた。
次のテスト、受けた100人の内俺は上位。彼女は一番下に名前があった。
また次のテスト、98人の一番下にまた彼女の名前。
その次のテスト、今回は以外に難しかったが、81人の中でギリギリ上位に名前を残す。彼女はまた一番下にいた。
更に次も、
その次も、
そのまた次も、
彼女は一番下に名前を残し続けた。
本当に、あの言葉は実行されている。
これなら、一番下になる事は絶対に無いじゃないか。
勉強が疎かになっても、彼女がその下に居てくれるのだから。
そう思ってから数日経ったある日、前日のテスト順位が張り出されていた。
今までに比べてかなり難しかった。だが、彼女の事を思うと別に苦しくはなかった。
どうせまた、彼女が一番下に居てくれるのだから。
最早日課になった彼女の名前を一番下に見てから、自分の名前を探す。
……あれ?
……おかしい
……何故だろうか、
……何故、名前が無い。
一番上からUターンして再び名前を探す。
しかし、一番下、57位に彼女の名前があるが、自分の名前が見つからなかった。
何故だ、確かにテストは受けた筈だ。なのに何故名前が無い?
まさか、点数が酷すぎたのか? いや、それでも一番下に書かれてる。でも一番下には彼女の名前。
一本道迷子という名前がある。
そしてふと、気付いた。
彼女の名前は一番下、57位に書かれている。
あのテストを受けたのはそんな人数じゃなかった筈だ。
もう少しいたと思う。その場でテストを受けていたのだからそう言い切れる。
……もしかして
「分かっちゃったかな♪」
後ろに彼女、一本道迷子がいた。
「ね? 私はいつも一番下でしょ?」
それは確かだった。けど今回は、自分の名前が無い。そして、同じくテストを受けた数人の名前も。
「あは♪それはそうだよ。私の下の人にはちょっと別の場所で迷ってもらってるから」
迷って……もらってる?
「私が一番下になるには、私より点数の低い人には消えてもらってるってこと♪これなら確実でしょ♪」
そ、そんな事が出来る訳がない。でも、日に日に人数が減っているのはそういうこと。
そして、今回の中に名前が無いということは……
「という訳だから、アナタも行ってね、マスターの所へ♪」
パチン
そんな音が聞こえた。
それと同時に、視界が真っ暗にな――――――
勉強し続けてればビリにはならなかったのに♪
でも、いくら勉強したからって、一番下にならないとは限らないんだよ♪
順位が全て張られた、ということはなかったですが。仮にあったとしたら、その中の一番下は……いやなもの。
しかし、もしもこんなことがあったら、アナタならどうしますか?
かと言って、勉強をおろそかにしたら――――――
いくら勉強しても、上には上がいて、一番下になる可能性があるのです。