朱雀(2)
レジで会計を済ませて食材を買い物袋に移してカートに乗せて屋上駐車場に行くと葵が待っていた。
「着替えてこい」
ダミーの制服に着替えて車に乗り先程の出来事を話すと2人とも渋い顔をした。
この渋い顔を見ると、朱雀でも一般生徒でも変わらずに接しようと思った私の考えは甘すぎるのだろうかと不安になってしまう。
「表の通りに朱雀の車がいるんだよ」
葵が面白くなさそうに言うと
「オレと葵が乗っているのを知っていると思う」
愁君が面倒臭そうに言った
「学校で葵の事噂されてたよ?迎えに来ている女がいるとかなんとか」
「ああ‥気を付けてたんだけど朱雀のシマに出入りしたのが見られたみたいなんだ。特に何かあるわけじゃないんだけど、警戒するために朱雀の幹部も張っているんだろうな」
不良もいろいろ大変だね、普通にしていればそんなこと考えなくていいのに。わざわざ面倒事に首を突っ込むなんて‥・
そんなことを考えていると愁君が真面目な顔をして言った。
「梨桜ちゃん、オレがいいって言うまで顔が見えないように葵にもたれててくれる?」
葵の腕が私の肩にまわり、引き寄せた。
そこまでする必要があるのだろうか‥
「この体制で背中つらくないか?」
「うん、大丈夫だよ」
スーパーの駐車場から出て表通りを通った時に
「朱雀の車が前にいますね‥」
運転手の人が言った
「トップからナンバー3まで揃ってるんだろうな‥」
愁君はおかしそうに言い葵は黙っていた
「後をつけてきました」
「無視しろ。こっちからは何もするな」
葵の冷たい声になんだか私までどきどきしてきた
「梨桜、絶対に顔をあげるなよ。あっちはフルスモークだけどこっちは普通車だ」
こくん、と頷いて葵の胸に顔をうずめていたけど‥背中が辛くなってきて少しだけ身じろぎすると、葵が背中をさすってくれた。
「きついか?」
「うん、ちょっと」
斜めになっている体制が苦しくなってきた
「身体を持ち上げるから顔上げるなよ」
「ん」
膝の下に腕をかけられると強い力で身体が持ち上げられ葵の膝の上に乗せられると、身体がまっすぐになり少し体が楽になった
「これでいいか?」
「うん。ありがと」
背中をさすってくれたから葵の首筋に顔をうずめた
「梨桜ちゃん、左側を並走してるから絶対に顔あげないで」
愁君が言うと葵の手が私の頭にまわり自分にぐっと引き寄せた
「桜庭、そこ右に曲がれ」
愁君が低い声で言い運転手の人、桜庭さんていう名前なの初めて知った
「はい」
と返事をした桜庭さんの声は強張っていて、そんなに不良とは恐ろしいのかと思って少しだけ顔を上げたかったけれど葵の手がそれを許してくれなかった。
「離れました」
桜庭さんの声がすると愁君がクスリと笑った。
「梨桜ちゃん、いいよ」
その声で葵の手の力が緩んだので、ふわあっと顔を上げてぷるぷると顔を振ると葵が呆れたような顔をして見ていた。
「葵がぎゅーってするんだもん、苦しかったよ」
「女を膝に抱いていてそうしなかったら変だろうが」
なるほど‥小さいころの膝抱っことは違うんだね
それからマンションまで送ってもらい夕飯を作って食べた。
葵は『戸締りして寝てろよ』と言って出かけてしまった。夕飯は一緒に食べるけれど、食べた後は愁君たちのところ、青龍のチームハウスへ出かけてしまう。
帰ってくるのは夜中頃で、どうやったら学校で成績を落とさずにいらるのかが不思議だ
私には理解できない世界。その世界に葵が入ってしまい取り残されたような気持になってしまう