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秋桜  作者: 七地
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物憂い (3)side:コジ

「拗ねんなよ」


愁さんが煙草を銜えながら葵さんを宥めているが、葵さんは愁さんを見て渋い顔をしている。


「葵、おまえってホント可愛いよな」


この青龍の中で誰も頭が上がらない、敵わない人に向かって“可愛い”ある意味暴言のような言葉を投げかけるなんて…傍にいる方が怖い。

オレが固まっていると、梨桜さんが『王子様みたい』という笑顔で葵さんをからかった。

案の定、愁さんに向かって足が飛んできた。


「あっぶねーな」


笑いながら避ける愁さん。この人に怖いものはないのだろうか?


「避けてんじゃねぇよ」


この人の蹴りをまともに食らったら、無事じゃすまない。それを分かっていて無茶なことを言う葵さん。


「梨桜ちゃんだって息抜きしたいだろ?髪を切るくらい自由にさせてやれよ」


「だからってなんでオレじゃなくて愁に許可を取るんだよ?普通はオレだろ」


梨桜さんが愁さんに電話を掛けてきて『美容室に行っていい?』そう聞いたのを根に持っている。


「一人で出歩かせたら危ないだろ」


「朱雀のシマは藤島がいるから大丈夫だろ」


オレには、藤島は梨桜さんを大切にしているように見える。きっと愁さんにもそう見えているからの発言なんだろうけれど、愁さんの言葉にムッとしている葵さん。

ホントに朱雀とは仲が悪いというか…どうしても認めたくないらしい。



「それに、梨桜ちゃんが狙われる羽目になったのは誰のせいかわかって言ってるのか?」


その言葉に聞こえないフリをしてそっぽを向く葵さん。確かにこういうところは可愛いのかもしれない。


梨桜さんが注目されて狙われる原因を作ったのは葵さんと藤島だと思う。

北陵の生徒から売られたケンカを買った梨桜さん。

偵察していた奴から聞いた話では、友達の為に、むさ苦しい北陵の男を相手に言い負かしたらしい。“男前な性格に惚れたっす”奴はそう言っていた。

キレて絡んできた男から梨桜さんを助けようとして、葵さんと藤島は鉢合わせて…

あろうことか、敵チームの前で互いに『梨桜はオレのものだ』とぶちまけた。


とりあえずその場にいたのは雑魚だったので総長2人で軽く掃除してきたらしいが、大変だったのはその後で…

梨桜さんの存在が広まり、朱雀と青龍の総長が取り合う女として梨桜さんは敵チームから狙われる事になった。

梨桜さんにはその事実は伏せられているけれど、彼女には見張りがつけられて護られている。


常に傍にいて、周囲に目を光らせることができればいいけど、梨桜さんの通う学校は朱雀の幹部がいる学校。

葵さんがピリピリする気持ちも分からなくはないけれど…梨桜さんが気分転換をしたくなる気持ちも分からないでもない。


「そうだ。コジ、今日の勉強はオレがみてやるよ」


「へっ?」


急に話を振られ、間抜けな声を出してしまった。

愁さんがオレの試験勉強をみるのか!?


「いえ、…大丈夫です」


この人に教えられたら、体がいくつあっても足りない。オレは優しい梨桜さんから教わりたい!!


「オレじゃ不満か?」


煙草を銜えながら目を細めて聞く愁さんは、梨桜さんが好きな王子様から、腹が真っ黒な冷たい王子に豹変している。


「いえっ」


ここで不満そうな顔をしたら、どんな報復が待っているか分からない。この人は危険すぎる。

葵さんも危険な人だけど、タイプが違う。


「だよな?毎日梨桜ちゃんに教えてもらってるんだ。今回の成績は相当上がるはずだよな」


梨桜さんはつきっきりでオレに勉強を教えてくれていたからそれを言われると何も言えない。


「梨桜のカオを立ててやるよな?」


葵さんにまで言われて、顔が青ざめるような気がした。


「もちろん、平均点以上は大丈夫だよな」


成績が上がらなかったら、夏休みにチームに出入り禁止になるだけじゃなく、この二人に沈められるんじゃないだろうか…

怖い、怖すぎる。


恐怖で言葉が出ないオレに、葵さんはオレを見てニヤリと笑った。


「コジ、模擬試験をやってみろよ。できなかったところを教えてやる」


梨桜さん!早く帰ってきて下さいっ!!

オレ、体がもちません!!


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