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秋桜  作者: 七地
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青龍と朱雀 (2)

「ねぇ、私、扉の鍵を締めてたんだけど。どうして寛貴がココにいるの?」


背中の痛みをやり過ごした私は、半ば強制的に寛貴の膝を枕にして体を横にさせられていた。


「マスターキーがあるから」


当然だ。

そんな風に言いながら、私の目の前に一本の鍵をゆらゆらと揺らして見せた。

何をそんなに偉そうに言っているの?普通じゃないでしょ。


「生徒がマスターキーを持ってるなんておかしいでしょ」


そう言ってから、もう一つの疑問が頭に浮かんだ。

どうして慧君がココの屋上に通じる鍵を持っていたんだろう?

まさか、生徒会長の権限。そんなことを言って鍵を独占してたりして…?返し忘れていて、私に渡したとか…まさか、ね?


「生徒会の権限だ」


その答えに頭が痛くなった。

生徒会がマスターキーを持っても良いなんて、どんな権限よ?屋上に通じる扉の鍵を持っていた慧君がとても可愛く見えてしまう。


「女子更衣室は別なマスターキーが必要だから安心しろ」


私の沈黙に何か勘違いしたらしい寛貴が言ったけれど、私は女子更衣室を使わないから。…って、そういう問題じゃないでしょ。


「梨桜こそ、こんなところで何をしていた?どうやってここに入った?」


『叔父に鍵をもらった』なんて言ったらマズイよね?寛貴の言葉から想像すると、慧君も『生徒会の権限』でここのカギを持っていたことになるもの。


「鍵が開いてたの。天気が良くて、ボーッとしてたら寝ちゃった」


「寝ちゃった。じゃねぇだろ?」


そんなこと言ったって…『一般の生徒は入ってこない』そう聞いたんだもん。そんなに不機嫌そうに言うことないじゃない?

ここに来るのはマスターキーを持っている生徒会のメンバー。それなら問題ないでしょう?


「ねぇ、ここにベンチがあればいいのに‥‥そう思わない?」


ベンチを置いてくれたらここでのんびりできる。「生徒会の権限」とやらで置いてくれないかな?


「ここで昼寝するつもりだろ」


思っていたことを言い当てられて頷いた。顔を寛貴に向けると呆れた顔で私を見下ろしている。


「入院してた時によく日光浴してたの。うたた寝するの気持ち良かったなぁ」


そう言ったら、ジロリと睨まれた。

何か不味いことを言ったのだろうか?不安になっていると不機嫌そうに眉を顰めて言った。


「隣の校舎から見ようと思えば見れるんだぞ。その寝顔をやたらに晒すな」


その口調に思わず両手で頬を覆った。


「私の寝顔ってそんなに酷い?人様に見せられない?」


まさか!と思いながら聞くと、寛貴は渋い顔をしながら頷いた。

迷いもなく頷かれると傷つくんですケド…


「…あぁ、見せられないな」


私、葵が迎えに来てくれる車の中でいつも寝てるよ?いつも愁君と桜庭さんに、見るに耐えないモノを晒してたの!?

どうしよう!?


「何を考えてる?」


葵ってば、どうして言ってくれないの?

葵の寝顔は綺麗なのに私の寝顔は見るに堪えないって、双子なのに酷いよ!不公平だよ。


「今度からどこで昼寝しよう?」


家庭科室の鍵を貸してくれるかな、その前に愁君に謝らなきゃ!

手で頬を覆ったまま言ったら


「今まで通り生徒会室でいいだろ」


その言葉に寛貴に背中を向けた。

生徒会室には行きづらくなっちゃったんだよ。

当たり前のように寛貴は言うけれど、私はあの場所にいていいのだろうか?



嘘をつき続けるというのはこんなに苦しいものだったんだ。


「梨桜?」


黙っていると、顔だけを寛貴の方に向けさせられた。


「…」


それでも黙っていると、寛貴は視線をピタリとあてた。その眼に見つめられると、逸らせなくなってしまう。


「言いたい事があるなら言え」


言えたらどんなに楽だろう?顔を近づけると私を見据えた。


睫毛長いなぁ。あ、目尻に小さなほくろがある。

整った顔を見ていたら低い声で凄まれた。


「返事位しろ」


「はい」


素直に返事をしたら、ボソリと「埒が明かねぇな」と言い、私の脇に手をかけて身体を起こした。


「悠と何があった?」


至近距離でいきなり問われて、思わず視線を逸らしてしまった。



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