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秋桜  作者: 七地
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進路相談と大好きな人 (5)side:悠

朝、学校に来るために乗ってきたバイクを校舎裏に停めていると、裏門の前に黒い車が停まった。

遠目でハッキリしないけれど、欧州車に見える。


近くに寄って見ると、黒いアウディだった。


朱雀の車じゃないことは確かだ。

この学校に外車で送ってもらうなんていい度胸だな。そう思いながら、一体誰が降りてくるのかと見ていると、助手席のドアが開き、スラリとした足が見えた。


え‥?


「梨桜ちゃん?」


声をかけると梨桜ちゃんは振り返ってオレに手を振った。


「悠君、おはよう!」


そう言うと、運転席に向かって声をかけ扉を閉めた。

走り去った車に手を振ると、オレに向き直ってニッコリと笑った。


「叔父さんに送ってもらったの?」


「うん」


「叔父さんて、若いよね」


叔父っていうともっと年上でオジサンを思い浮かべるけど、あの人はせいぜい30代前半にしか見えない。


「15歳年上なの。…パパの弟なんだ」


梨桜ちゃんの話を聞くと、本当に叔父と姪の関係らしい。

やっぱり美形の遺伝子があるんだ。


「昨日の帰りといい、梨桜ちゃんの事お姫様扱いだね」


オレが言うと、少しだけ目を伏せた。


「そうだね‥甘やかされてるね。怪我をしたから余計なのかもしれない」


そう言うと、顔を上げて少し悲しそうに笑った。

その顔を見て、後悔した。そんな顔をさせたいわけじゃなかったんだ。





お昼休み、梨桜ちゃんは笠原や隣のクラスの女子生徒に誘われて弁当を食べていた。

今まで、彼女と親しく話すのはオレくらいだったのに、いつの間にか学年の女子生徒は梨桜ちゃんと仲良くなりたがっていた。

休み時間も女達の輪の中にいることが多くなった。


「梨桜ちゃん、行くぞ?」


オレが声をかけると、梨桜ちゃんは女達に手を振って席を立った。


「梨桜ちゃん、生徒会大変だね」


「うん、まぁ…」


曖昧に言って笑う梨桜ちゃんを横目に見ながら教室を出た。

昼寝をしに生徒会室に行くことは話していないらしい。


梨桜ちゃんと並んで廊下を歩く。

今まで当たり前だったことが、自分の中で違う意味を持ち始めているような気がする。


「悠君、今日は学校が終わったら出かける約束をしたから生徒会に行けないの。ごめんね」


梨桜ちゃんは歩きながら言った。


「叔父さん?」


「うん。慧君と弟と出かけるの」


梨桜ちゃんは嬉しそうに笑っている。

その笑顔を見て胸の奥にモヤモヤとしたものが浮かんだような気がする。


「そっか‥久しぶりなんだろ?生徒会の仕事は気にしなくていいよ。オレも手伝うし、楽しんでくればいいよ」


スラスラと口をついて出てきた言葉に自分でも驚いた。

オレ、最低だ。今、正反対の事を思ったくせに‥




生徒会室で梨桜ちゃんがいつものように寝ていると携帯が鳴り響いていた。


「はい…慧君?ん‥起きるよ。――――うん、わかった。ママの好きだったお花買っていこうね」


梨桜ちゃんのお母さんは亡くなったと言っていたのを思い出した。

叔父さんが言っていた“大変な時に傍にいれなくて”ってそういう意味だったのか?


「慧君、ママが好きなのはそれじゃないよ。いつも誕生日にあげてたじゃない。忘れちゃったの?ママ怒ってるよ」


そう言いながら柔らかい笑みを浮かべている。


「―――うん、待ってるから。じゃあね」



その笑みをオレにも向けて欲しい。

そう言ったらキミはどんな顔をする?

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